「オール・オア・ナッシング」はビジネスマン必見の番組、新シリーズ「トッテナム・ホットスパー」も配信開始

スポーツドキュメンタリー番組の「ALL OR NOTHING(オール・オア・ナッシング)」をご存知だろうか。オール・オア・ナッシングは、Amazon prime videoで配信されているアマゾンオリジナル番組だ。既に9シリーズが放送されており、人気番組となっている。

オール・オア・ナッシングは、アメリカンフットボールやサッカー、ラグビーなどの競技で世界トップリーグに所属するチームや、ナショナルチームにシーズンを通して密着、チーム経営やミーティング、トレーニング風景、ロッカールーム、選手の私生活に至るまで密着し、スポーツビジネスの裏側を深く見ていくことができる。

当初オール・オア・ナッシングは、アマゾンとNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)が提供するスポーツドキュメンタリーとして提供されていたが、5シリーズ目でラグビーニュージーランド代表「オールブラックス」に密着、6シリーズ目にはイングランド サッカープレミアリーグ所属の「マンチェスター・シティ」に密着し、徐々にジャンルを展開している。

ただの「スポーツドキュメンタリー」ではない、オール・オア・ナッシングの魅力

最近はプロスポーツチームのソーシャルメディア戦略も強化されており、チーム公式アカウントでもロッカールームの様子や契約時など試合以外の部分を垣間見ることが容易になっている。

しかし、サッカーで言えばチャンピオンズリーグなどの重要な試合、リードされて折り返したハーフタイムで監督が選手に何を言い、戦術の修正を解説するシーンなど、核心に迫るシーンが収録されることは滅多に無い。

リヴァプール公式アカウントの動画シリーズ「Inside Anfield」
Anfield(アンフィールド)はリヴァプールホームスタジアムの名称

オール・オア・ナッシングは、その全てに密着しており、それこそホームグラウンドで働くスタッフの経歴や、スタッフと選手の関係性にまでフォーカスして番組が制作されている。知られざるトップチームの実態が明らかになる。

世界有数のトップチームがどのように経営され、それを支える現場スタッフがどう動き、選手はプレッシャーにどのように立ち向かうのか、クラブのトレーニング施設の様子、監督のマネジメント力と選手起用、そして移籍の裏側など、単純なスポーツドキュメンタリーではなく、一流の監督やクラブチーム経営から学べることが多く、読者が日頃直面している事業やマネジメントにおいても示唆に富む内容となっている。

例えば、監督を補佐する分析官が次の対戦相手に警笛を鳴らすデータを上げてきた、そして選手は故障者が続出し万全の状況ではない、さらには試合中に故障者が更に出てしまう。故障者を埋める移籍も見込めない。そのような状況において選手をモチベートし意思決定し結果を出さなければならない。ヒト・モノ・カネをどうコントロールし結果を出すのか、まさに経営/マネジメントそのものだ。

フィットネス業界的な視点でいえば、オール・オア・ナッシングはスポーツを題材にしているため、トレーニングや食事、メディカルシーンが豊富で、世界一流の選手たちを支えるフィジカルサポートでの学びは当然多い。また、選手を顧客と見立てれば、選手が試合でパフォーマンスを発揮するためにスタッフが行う仕事や設備は、店舗経営にも学びが多いはずだ。

2020年8月31日、待望の新シリーズ「トッテナム・ホットスパー」編スタート

そして2020年8月31日、オール・オア・ナッシング待望の新シリーズが配信される。6シリーズ目にフォーカスされたマンチェスター・シティと同じプレミアリーグに所属する「トッテナム・ホットスパー」編だ。

サッカー界ではオール・オア・ナッシング「マンチェスター・シティ」編の人気を受け、次のチームはどこか議論が巻き起こった。2018年時点での報道によると、プレミアリーグ所属の強豪リヴァプールがオール・オア・ナッシングの密着を断り、ドイツ ブンデスリーガ所属の強豪バイエルン・ミュンヘンにアプローチしていると見られていたが、決まったのは「トッテナム・ホットスパー」だった。

トッテナム・ホットスパーはロンドン北部をホームとし、イングランド代表FWハリー・ケインや、韓国代表FWソン・フンミンを要する名門チームだ。オール・オア・ナッシングの「トッテナム・ホットスパー」編は、同チームの2019/20シリーズに密着している。

2019/20はトッテナム・ホットスパーにとって良いシーズンではなかったかもしれない。新型コロナウイルスの影響もあったし、プレミアリーグは6位でシーズン終了、チャンピオンズリーグはベスト16で敗退した。

では今シリーズの見どころはどこにあるのだろうか。

悩める指揮官(経営者)と、問題を抱えたエース(社員)

オール・オア・ナッシングで最もフォーカスされるのは「監督」だ。企業でいう経営者であり、チームを司る指揮官の苦悩や葛藤、チームや競技に対する哲学がこのシリーズの中心であり醍醐味でもある。

トッテナム・ホットスパー編が期待されている理由にこの「監督」がある。同クラブは2019年末にそれまで監督だったマウリシオ・ポチェッティーノをシーズン半ばに解任、ジョゼ・モウリーニョを後任監督とした。

モウリーニョはインテル、チェルシー、レアル・マドリード、マンチェスター・ユナイテッドなどのビッグクラブ監督を歴任し結果を出してきた名将だ。反面「バスを停める」と評される極端に守備的な戦術や、記者会見での発言が物議を醸すことも多く、選手との確執が取り沙汰されることも少なくなかった。そのため、モウリーニョのトッテナム・ホットスパー監督就任は大きな話題となった。

また、シーズンを通してこれまで物議を醸す人物像だったモウリーニョ監督が、穏やかになった、自信を喪失しているのではないか、といった報道も相次ぎ、実像に興味が集まっているのも一因としてある。

もう1つ注目を集める要因は、トッテナム・ホットスパーのFW、韓国代表FWでもあるソン・フンミンだ。ソン・フンミンはこのシーズンでアジア人として初のプレミアリーグで10ゴール10アシストを記録、プレミアリーグ通算ゴール記録でもアジア人記録を樹立している。バロンドール候補30人にノミネートされ、アジアでは最も時価総額が高い選手とされている同選手、2019/20シーズンはヨーロッパサッカー界でも話題になり続けた選手だった。今回のオール・オア・ナッシングでも中心的に描かれる選手ではないかと噂されている。

しかしソン・フンミンはプレーの素晴らしさに注目が集まる一方で、試合中のラフプレーや、相手に深刻な怪我を与えるプレーなどで議論が巻き起こり、ソン・フンミン自身がそれをどう捉えているのかも含め注目が集まっている。該当のプレーに関してオール・オア・ナッシングの予告編で本人が「あれのどこがレッドなんだ!教えてくれ!」と叫んでいることから、議論が再燃していることもある。

さらに、ソン・フンミンやハリー・ケインなどチームのエースである主力選手の怪我など、戦力的にもチームの状態が不十分になってしまったことも挙げられる。こうした状況を受け2019/20シーズン前の移籍市場でトッテナム・ホットスパーが放出した選手について疑問視(放出しなければと)する声も上がったシーズンとだったことも注目の要因として大きい。

これはトッテナム・ホットスパーに限らない話ではあるが、新型コロナウイルス感染拡大によるリーグの中断や無観客試合、ソン・フンミンが韓国とイギリスを往来する中での自主隔離といった特殊なイベントなど、否が応でも注目が集まる。

監督を経営者、選手を社員と見立てれば、一般的な会社でもこうしたことは多々あるだろう。ヒト・モノ・カネが十分ではないにも限らず、目の前の市場では競合と熾烈な戦いをしなければならない。このような状況において、一流と呼ばれる経営者(監督)が何を考え、伝え、社員(選手)をモチベートするのか。そして社員(選手)は何を思い、どう事態に立ち向かい克服していくのか、私達に示唆を与えてくれるのではと期待せざるを得ない。

もっとも、ヨーロッパのサッカービジネスは巨大市場であり、トッテナム・ホットスパーの売上高は2017/18シーズンの売上高は約550億円、2018/19シーズンの純利益は150億円とも言われている。このシーズンの純利益はサッカークラブが記録した純利益では世界1位となっている。数年前にメルカリが買収した鹿島アントラーズの売上高67億円と比べると、いかに巨大か分かる。オール・オア・ナッシングによって世界有数のスポーツビジネスのダイナミズムを感じることができるのも魅力の1つだ。

トッテナム・ホットスパー編のエピソード9話要約(追記2020/10/9)

2020年8月31日からAmazon USなどでは配信が開始されていたが、日本での配信は行われず見られない状態が続いていた。これは字幕付けのスケジュールによるもので、元々2020年11月から日本では配信される予定だったようだが、前倒しされ10月初旬から既に日本語字幕での配信が開始されている。

筆者の配信を見た感想にはなるが、今作のトッテナム・ホットスパー編、もしかするとマンチェスター・シティ編よりも見応えがあるかもしれない。不調の中から再興しようとするチームのアップダウンや、移籍問題での緊張感、選手と監督の激しいやりとりなど、順風満帆とはいかないチームでの生々しいシーンが満載だった。特にモウリーニョの仕事への姿勢や哲学は彼のこれまでの印象を一変させる側面も多々垣間見られる。是非ご覧頂きたい。

エピソード1「新しい契約

Amazon.co.jp

スパーズは色々な意味で転機を迎えていた。昨シーズンはマウリシオ・ポチェッティーノ監督のチーム改革によってチャンピオンズリーグ決勝に進出、スパーズ会長ダニエル・リーヴィが主導した新スタジアムの建て替えが終わり新しいシーズンも順調にスタートするかと思われていた。しかしチャンピオンズリーグ決勝で敗退したことで、会長をはじめとする経営陣・監督・チーム・選手全ての関係に少しずつ溝ができていた。

新シーズン開幕から不調な出だしのスパーズ、シーズン序盤に行われたチャンピオンズリーグ グループステージでのバイエルン・ミュンヘン戦でスパーズは7失点の大敗をしてしまう。そこから中々勝ち星を挙げられないスパーズ、リヴァプールにも敗退、エヴァートンともドローとプレミアリーグでの順位は11位に低下。チャンピオンズリーグ グループステージのレッドスター戦で勝利を収めるも、次節プレミアリーグに昇格したばかりのシェフィールド戦ではドローという結果に。

この結果を受けポチェッティーノは突如解任される。そして後任に数々のビッグクラブを率いてきたジョゼ・モウリーニョが新監督として就任する。異例とも言えるシーズン途中での電撃的な監督解任、そして大物モウリーニョ就任の裏側、スパーズ選手たちが口にする不安や期待…ジョゼ・モウリーニョによるスパーズの再興が始まる。

エピソード2「新たな始まり

新生スパーズが本格始動する。初戦のウエストハム戦、スパーズは3ゴールを決めモウリーニョのデビュー戦は勝利でスタートする。モウリーニョ2戦目、勝てばチャンピオンズリーグベスト16が決定するグループステージのオリンピアコス戦、2点を先制される展開となる。スパーズは1点を返すもリードされハーフタイムに突入する。モウリーニョは選手に「落ち着け、何があっても自信を失うな」と伝える。後半、選手たちは奮起し3ゴールを奪って逆転勝利を収める。

エピソード2では、モウリーニョが選手との関係を作りつつ、勝てるチームに作り上げる中で各選手に対するケアやモチベーティングする様子が具体的に描かれ始める。そしてオール・オア・ナッシング トッテナム・ホットスパーズ編で象徴的とも言われるシーンの1つが登場する。期待されつつも昨シーズン乱調で練習嫌い、ムラッ気のある若手のエース「デレ・アリ」にモウリーニョは個人ミーティングで優しくも厳しい言葉をかける。そしてデレ・アリは調子を取り戻し始める。

エピソード3「人の良さは捨てろ

スパーズはモウリーニョ就任後、マンチェスター・ユナイテッド戦で初の敗戦を喫してしまう。敗戦の理由としてモウリーニョはスパーズの選手たちの「人の良さ」にあると指摘する。就任直後からジョゼ・モウリーニョは「このチームの選手は人が良すぎる」とチームの課題を指摘。次の試合、バーンリー戦でソン・フンミンはキャリア最高のゴールを決める。しかしそのソン・フンミンはモウリーニョの古巣であるチェルシー戦、ラフプレーでレッドカードを受け感情をあらわにする。

チームの経営陣とモウリーニョは移籍問題にも取り組み始める。最も大きな課題は、退団の意思を表明しつつも移籍が実現せずチームに残っているクリスティアン・エリクセン。他の移籍候補選手も自身のキャリアや家族のことについて口にする。

エピソード4「クリスマス

スパーズは年末年始の過密日程に向き合うが、怪我人が続出し、ソン・フンミンはレッドカードで3試合出場停止でスパーズは選手が枯渇してしまう。そこでU-23チームから3人の若手選手をトップチームに招集する。選手の負担が増加する年末年始の過密日程についてモウリーニョは記者会見でスケジュールに苦言を呈する。その嫌な予感は的中し過密日程の3試合目サウサンプトン戦、エースストライカーのハリー・ケインが筋肉を断裂し長期離脱が確定、ムサ・シソコもこの試合で怪我をしてしまう。

そんな状況で迎えたリヴァプール戦、強豪相手に敗退するも起用された若手選手が躍動、未来への望みがつながる。そしてスパーズはサッカー界で最も古いカップ戦「FAカップ」に挑む。FAカップでスパーズは過去8度優勝、是が非でも獲得したいタイトルの1つだ。初戦勝利しチームはFAカップ4回戦に進出、この試合で若手DFジャフェット・タンガンガが躍動しMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選ばれる。

エピソード5「新入り

年末年始の過密日程が終わり、移籍期間が始まる。しかしチームの状況は芳しく無く、若手の活躍はあるも主力選手の穴は大きく、スパーズは1ヶ月に渡り勝星から遠ざかっていた。一方でクラブに12年在籍しチーム最古参のLSBダニー・ローズは出場機会が減ってることの不満をモウリーニョに直接ぶつけ緊張感が高まる。これをキッカケに会長のダニエル・リーヴィはローズの長期レンタル移籍に動く。

そして問題が長期化していたクリスティアン・エリクセンにインテルからオファーが届く。移籍を望むエリクセンに会長のリーヴィとモウリーニョは直接残留を打診し、インテルと移籍条件で折り合わない場合は交渉を打ち切る可能性もあると進言する。しかし最終的には移籍を認めることをエリクセンに伝える。

結果的にスパーズはこの移籍市場でPSVからFWステーフェン・ベルフワイン、ベンフィカから若手MFジェドソン・フェルナンデスを獲得する。逆にエリクセンを2000万ユーロでインテルに放出、ダニー・ローズをニューカッスルにローンで放出した。その頃、4ヶ月離脱していた主将のウーゴ・ロリスが怪我から復帰したことでチームは士気を取り戻しつつあった。移籍が一段落した初戦のマンチェスター・シティ戦でベルフワインは得点を決めチームの勝利に貢献、移籍後のデビュー戦でMOMを獲得、チームに前向きな風が吹き始める。

エピソード6「戦力不足

FAカップ4回戦サウサンプトン戦を控えるが、ベルフワインはこの試合出場資格がなく、未だ主力選手の離脱も多くチームは戦力が限られた状態でこの試合を戦うことになった。苦戦しつつもソン・フンミンの決勝点でスパーズは勝利を収める。次節のアストン・ヴィラ戦も苦戦の末ソン・フンミンの決勝点で連勝するも、ソン・フンミンがこの試合で腕を骨折したことが判明、長期離脱が確定する。戦力不足が決定的となった状況で、チャンピオンズリーグ ベスト16レグ1/2のRBライプツィヒ戦が迫っていた。

エピソード7「後悔はない

チャンピオンズリーグ ベスト16レグ1/2のRBライプツィヒ戦、スパーズは押される状態でハーフタイムを折り返す。後半、動きを取り戻し再三チャンスを作るもスパーズは敗北。次節のプレミアリーグでもチェルシーに敗北。連敗が続く中、モウリーニョとコーチ陣はこれまでと違う方法で選手をモチベートする。次節ウルブス戦、スパーズは先制、その後追いつかれるも再度ゴールを決めハーフタイムを迎える。後半に入りウルブスに同点弾を決められると、その後更にゴールを許し逆転され試合はそのまま終了、スパーズは3連敗してしまう。

試合後のロッカールームでデレ・アリとダイアーは口論になる。それを見たモウリーニョは「こうした口論は嬉しい」と言い「プレーが良いのに負けた理由は、人が良すぎる、ずる賢さが足りない」と当初からの指摘を再度口にする。

チームはそのままFAカップ5次ラウンドノリッジ戦に挑む。1-1で試合終了し勝敗はPK戦に、3-2で敗北しスパーズはFAカップ敗退となった。この試合後、ダイアーが観戦に来ていた親族に絡むファンに激怒し観客席に入り揉める事件が起きる。モウリーニョは「状況を考えれば誰でもやりかねない」とし処罰は求めないと会見で発言し一定の理解を示す。

エピソード8「中断

新型コロナウイルスの感染拡大が伝わり始めた中、チームの疲労感は高まっていた。それでも連敗から抜け出そうとするモウリーニョと選手たち。翌週にチャンピオンズリーグ ベスト16レグ2/2のRBライプツィヒ戦を控えたバーンリー戦、前半リードされるも後半で追いつき1-1のドローでなんとか5連敗を免れるが、この試合でベルフワインが怪我をし主力選手を更に失うスパーズ。

その頃、新型コロナウイルス感染拡大の影響で役員陣は決算が減収になる可能性、パンデミックによる無観客試合や休業が保険の適用外になることなど経営上の課題にも直面していた。迎えたRBライプツィヒ戦でスパーズは敗北する。その直後、新型コロナウイルスのパンデミックが本格化し、サッカーだけでなく全世界のスポーツが止まり始め、スパーズのクラブ経営にも影を落とし始める。モウリーニョはプレミアリーグの中断やファーストチームの練習停止、ロックダウンの影響で選手が自宅待機を強いられる期間のパフォーマンス低下を懸念する。

そして時は過ぎ、ファーストチームの練習が再開される。怪我をしていた主力選手たちがロックダウン期間に復帰、残り9試合となったプレミアリーグの熾烈な順位争いに向けてスパーズは、再開後の初戦マンチェスター・ユナイテッド戦に挑む。

エピソード9「追い込み」(最終回)

残り8試合となったスパーズは、ウエストハム戦に挑む。残りの試合数を考えると負けられない1戦、集中力を欠く選手たちにモウリーニョはハーフタイムに厳しい指摘をし選手は奮起する。その一方で、タンギ・エンドンベレはトッテナムに移籍後、環境に慣れることができず、且つ試合にも出られないことを不満に思い、会長のダニエル・リーヴィと話し合いの場を設ける。記者からもエンドンベレを高額で獲得したにも関わらず出場機会が少ないことの質問が増えていた。次節のシェフィールド戦、エンドンベレは出場するもののスパーズは敗北してしまいチャンピオンズリーグ出場の可能性が消えかかる。

その3日後、モウリーニョは11人ずつで練習試合をさせる。その練習試合、ダイアーのタックルを受けてソンが倒れダイアーに怒りをあらわにする。その横ではチームメイトが口論を始めチームに緊張感が漂う。

次節エヴァートン戦、ソン・フンミンは試合に出場する。しかし事件が起きる。前半終了間際のソン・フンミンの守備の姿勢に対してGKのウーゴ・ロリスは怒りをあらわにし掴みかかる。ロッカールームでも2人は激しい口論となるが、モウリーニョは「そうしたチームメイト間の口論や厳しい指摘を向けることについて成長の証だ、就任直後の状態からは考えられない、良いことだ」と選手を鼓舞する。次第にスパーズの選手は闘争心を取り戻しエヴァートン戦では勝ち点を手にする。

しかし次節ボーンマス戦は無得点のドロー。プレミアリーグ順位は9位となりチャンピオンズリーグ出場の可能性は極めて低くなったが、ヨーロッパリーグ出場の可能性にかけることになる。次節はアーセナル。アーセナルは100年以上続くライバル関係にあり、両者の試合はロンドンダービーと呼ばれている。スパーズはこの試合に勝利、ヨーロッパリーグ出場の可能性を残す。

この時点でスパーズは8位、残り3試合で6位に浮上する必要があった。残り3試合スパーズはこれまでのフラストレーションを払拭するように好調をキープし2勝1分、上位のウルブスが最終節で負けたためスパーズはヨーロッパリーグ出場が決まり、選手たちと監督は喜びを爆発させるのだった。

オール・オア・ナッシングのシリーズ一覧

#タイトル(以下Amazonページリンク)
1アリゾナ・カーディナルスの挑戦
2ロサンゼルス・ラムズの軌跡
3ミシガン・ウルヴァリンズの試練
4ダラス・カウボーイズの葛藤
5ニュージーランド オールブラックスの変革
6マンチェスター・シティの進化
7カロライナ・パンサーズの野望
8サッカー ブラジル代表の復活
9フィラデルフィア・イーグルスの逆襲
NEWトッテナム・ホットスパーの再興

フィットネス上場各社の4-6月業績出揃う、新型コロナの影響大きく業界総赤字の様相

3月期決算のフィットネス上場企業各社の第1四半期(2020年4月〜6月)の決算が出揃った。新型コロナウイルス感染拡大に端を発する環境変化によって3月通期の時点で今期は各社厳しい決算が予想されていたが、改めて出てきた数値について見ていきたい。

今回とりまとめたのは9社、解説に入る前に断っておきたいのはカーブス、24/7Workoutは3月期決算ではないため除外した。コナミはフィットネス該当セグメント数値、RIZAPグループについても連結のフィットネスセグメントの数値(RIZAP関連、RIZAP事業以外の数値も含まれる)、SDエンターテイメントはRIZAPグループ傘下企業となる。またRIZAPグループは2021年3月期からセグメントの対象事業を変更しており、RIZAPグループのフィットネス関連セグメントに前期まで含まれていたSDエンターテイメントは今期から外れている。

売上高は休業が大きく響き、各社前期比で約60%-70%減少

新型コロナの影響が最もわかりやすいのが売上高の減収比だろう。

フィットネス業界の3月決算上場各社 第1四半期の売上高の比較
各社IR資料よりBtF編集部が作成

図の通りではあるが、各社60%前後、コナミスポーツに至っては70%に近い水準、ティップネスを傘下に持つ日テレHD、メガロスを傘下に持つ野村不動産HDの該当セグメントの売上高減収比は70%を超えた。

また減収後の1Q決算では売上高でセントラルスポーツが首位(RIZAPは純粋なRIZAP関連売上高が分からないため一旦保留)水準となり、業界順位に変動が起きる結果となった。またアクトスもメガロスの売上を超える着地となっている。

各社細かい差はあるが、4月〜5月末までの約1.5ヶ月〜2ヶ月の休業が響いた結果となり、個社解説の記事でも触れているが会員減も各社起きているため、第2四半期以降にも暗い影が落ちる結果となっている。

ほぼ全社が赤字決算、フィットネス事業のビジネスモデル見直しが迫られる

損益に目を向けると更に厳しい状況となっている。

フィットネス業界の3月決算上場各社 第1四半期の利益の比較
各社IR資料よりBtF編集部が作成

休業によって、固定費や人件費等のコストが吸収できず、損益計算書上では売上総利益時点で赤字転落している企業も出てきた。また営業利益、最終利益ベースで見ると、二桁億円単位で赤字を計上する企業も多く、コロナ対策コストや固定資産の評価見直しで特別損失を計上する企業も目立った。

フィットネス事業のビジネスモデル上、このレベルの売上減が起きれば必然的な結果ではあるが、いわゆるブラックスワン的な環境変化に業界全体が著しく弱いことが改めて浮き彫りになった形だ。

緊急事態宣言発令後に各社こぞって初めた「オンラインフィットネス」だが、それが著しく貢献している様子はなく、第1四半期の決算短信にオンラインフィットネスの業績貢献についてポジティブに記載している企業は皆無に近かった。

フィットネス各社は、根本的なビジネスモデルの変化を改めて考えざるを得ない状況を突きつけられている。

なお、筆者はカーブスは直近の歴史において既存のフィットネス事業のビジネスモデルを再定義した企業だと考えているが、そのカーブスも第3四半期(2020年3月-5月)では約12億円の営業赤字となっている。ただし、カーブスについては決算説明会において「根本的にビジネスモデルを考え直す」旨を明確に示しており、同社の改革に対する意欲と今後の取り組みはフィットネス業界において新たなベンチマークに成り得るのではと期待している。

クラシル運営のdelyオンラインフィットネスに本格参入か、2020年5月には既に事業検証を実施?

レシピ動画アプリ「kurashiru(クラシル)」、女性向けメディア「TRILL(トリル)」を運営するdely株式会社(東京都品川区、代表 堀江裕介氏)が、オンラインフィットネスサービス「ONECLASS(ワンクラス)」をリリースしている。ONECLASSの「特定商取引法に基づく表記」ページの事業者名には「dely株式会社」と記載されている。

kurashiruのウェブサイト
同社が運営する人気レシピ動画アプリ「クラシル」
https://www.kurashiru.com/

本稿執筆時点の8月11日現在、同社コーポレートサイトにはONECLASSは掲載されておらず、ニュースリリースにも同サービスの記載は無い。オンラインフィットネス市場は、オンラインサービスプラットフォーム「MOSH」や、オンラインヨガ・フィットネスの「SOELU」、フィットネス音声ガイドアプリ「BeatFit」などベンチャー企業がしのぎを削っており、既に群雄割拠の様相だ。

delyが運営するONECLASSとは

ONECLASSはサイト上で受けたいレッスンを予約し、Zoomにて参加するオンラインフィットネスプラットフォーム。価格は1レッスン2,000円で販売されているが、月額4,980円を払うと全てのレッスンが受け放題となる。Zoomが利用できる端末であればスマートフォンでも利用が可能。

現在、月に60本を超えるレッスンが開催されており、ヨガやピラティス、自重トレーニングなどが提供されている。

同サービスのサイトに掲載されている開催予定のレッスンを見ると、基本は60分のレッスンがベースで「疲れリセット」「ヒップアップ・脚痩せ」「顔のむくみ解消」など目的別のレッスン名がついている。どれも「女性」のニーズが強く反映された内容に見える。

ONECLASS開催予定のレッスン例
ONECLASS開催予定のレッスン例
https://oneclass.jp/

しかし先述した通り、オンラインフィットネス市場は既に群雄割拠の様相で、同社は後発での参入となる。価格やレッスン内容にもそれほど差別化要素が大きくあるようにも見えないが、ONECLASSの勝ち筋はどこにあるのだろうか。

TRILLの女性ユーザーとのシナジーを確信か

ONECLASSはまだ同社ウェブサイトに掲載されていないプロダクトのため、現時点では「ステルス」で運営されているサービスという位置づけと推測され、未だ「事業検証・市場検証」の段階である可能性も高い。しかし同社は「ONECLASS」をクラシル、TRILLに続く第3の柱に育てる意向があるのではと推測している。

オンラインヨガレッスンを販売するTRILLの記事のキャプチャ
TRILL上で募集されているオンラインレッスンの記事
https://trilltrill.jp/articles/1429589

BtF編集部の調査によると、同社が運営する女性向けメディア「TRILL」上にて2020年5月頃から上記のようなオンラインレッスンの募集記事が増えているのが分かった。

TRILLで募集したユーザーは、同社が用意したSTORESの販売ページへ遷移しレッスンを購入する導線になっている。このSTORESアカウントの店舗名は同サービスと同じ「ONECLASS」で、掲載されているレッスンは今回紹介しているONECLASSのサービスサイトに掲載されているレッスンとほとんど同様のものとなる。

ONECLASSのSTORESアカウントのキャプチャ
申し込みボタン遷移先のSTORESアカウント
https://dely-online.stores.jp/

つまり、2020年5月には既にTRILL上で募集しレッスンがどの程度販売できるか、ユーザーがどの程度リピートするかといった「事業検証」が始まっており、一定の手応えを感じた可能性がある。

そこから月額4,980円のプランや、1レッスン2,000円といった価格設定をもってサービスサイトのリリースにつながっていると見られる。つまり一定の事業検証が終わり、ここから本格的にサービスを伸ばしていくフェーズと推測される。

クラシルは2,000万DL超、TRILLは月間利用者数2,000万を突破

2019年12月時点の同社プレスリリースによれば、レシピ動画アプリ「クラシル」は2,000万ダウンロードを突破、インスタグラムのフォロワー数は300万人超、女性比率は90%を超えている。女性向けメディア「TRILL」も好調で、2019年11月のプレスリリースによると月間利用者数(web・アプリ合算)が2,000万を突破している。

dely社が運営する女性向けメディア「TRILL」
dely社が運営する女性向けメディア「TRILL」
https://www.dely.jp/product

少し話は戻るがONECLASSで提供されているレッスンのほとんどが「女性」のニーズを強く反映したように見えると書いた整合性がここにある。

つまりオンラインフィットネス市場に後発で参入している「ONECLASS」だが、同社が運営している2大メディア(クラシルとTRILL)の巨大なトラフィックと会員数、そしてクラシル/TRILL共に高い「女性比率」、TRILLからの送客販売とのシナジー(事業検証)を踏まえた本サービスのローンチ、こうした要素を考えれば後発ながら十分勝ち筋があるように思える。

群雄割拠のオンラインフィットネス市場、これから更に熾烈な競争が起きそうだ。

ジェイエスエス1Q決算:売上56%減、スイミングクラブ休業で会員も9%減

ジャスダック上場でスイミングスクール大手の株式会社ジェイエスエスは2021年3月期 第1四半期(2020年4月〜6月)決算を発表した。

株式会社ジェイエスエスの2021年3月期 第1四半期決算短信の概要
株式会社ジェイエスエス 2021年3月期 第1四半期決算短信

売上高は前期比56.4%減の9.4億円(前期21.5億円)、以降の損益は赤字転落、売上総利益▲4.1億円(前期3.2億円の黒字)、営業利益▲6.5億円(前期0.6億円)、経常利益▲6.5億円(前期0.6億円)、当期純利益▲4.7億円(前期700万円)となった。

同社にとっても新型コロナウイルス感染拡大の影響は大きく、特に小学生向けのスイミングスクールが主力であるため、緊急事態宣言を受けた休業要請や小学校の休校などが響いた。6月には全事業所(店舗)が営業再開しているものの、新学期で会員増加を見込む時期ではあるが新規の会員獲得も上手く進捗せず、会員は前期比8.9%減の90,354人となった。

財務では新型コロナ対策資金として、当該四半期に5億円の短期借入を実施している。

なお、同社は前期末の2020年3月に日本テレビHDがジェイエスエスの旧筆頭株主であるニチイ学館から同社株式を買い取り、新たな筆頭株主となっている。日本テレビHDは傘下にティップネスを保有しており、同社との連携も期待されたが、パンデミックで出鼻をくじかれた形だ。

https://bthefit.com/post-882/

財務体質に大きな毀損は見られない同社、アフターコロナ時代の巻き返し、日テレHDグループとしてティップネスとの連携など、今後も注目していきたい。

セントラルスポーツ1Q決算:売上60%減少、新型コロナ対応で特損31億円

フィットネス業界売上高2位のセントラルスポーツ株式会社は2021年3月期の第1四半期(2020年4月〜6月)決算を発表した。

セントラルスポーツ株式会社 2021年3月期 第1四半期決算短信
セントラルスポーツ株式会社 2021年3月期 第1四半期決算短信

売上高は前期比60.5%減の53億円(前期134億円)、売上総利益は前期比70.5%減の6億円(前期20億円)と新型コロナウイルス感染拡大による店舗休業の影響を強く受けた形となった。利益ベースでは赤字となり、営業利益は▲1.6億円(前期は9.9億円の黒字)、経常利益▲2.5億円(前期8.6億円の黒字)、当期純利益▲21.8億円(前期5.6億円の黒字)となっている。

同社は4月7日の緊急事態宣言後、5月末まではフィットネスクラブ・スクールの休業を実施、6月から感染症対策を講じつつ営業を再開している。しかし会員の退会/休会への動きは強く、フィットネス会員は前年比約80%、スクール会員は前年比約90%と厳しい状況が続いている。

同社決算の特別利益、特別損失に目を向けると、雇用調整助成金収入(特別利益)は2.4億円に対し、新型感染症対応による損失(特別損失)は▲31億円となっている。

財務体質については当該四半期で約50億円の借り入れを実施、現預金と建物及び構築物が合計20億円資産増加している。自己資本比率は前四半期比マイナス7.2%減の48.1%と減少するも、それでもまだ高水準を維持しており同社財務の強さが伺える結果となった。

フィットネス業界全体が新型コロナウイルス感染拡大の影響を強く受け、数日前に決算を開示した業界3位のルネサンスも同様に厳しい内容で、財務戦略的な動きが激しい印象があった。当然セントラルスポーツも同様に厳しい状況ではあるが、一方で同社の重厚なバランスシートの動きを見るとある種の「貫禄」を感じる内容でもあった。

https://bthefit.com/post-2031/

hacomono1億円調達、Coubicがheyグループ入り、フィットネスのDX企業が躍進

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が声高に叫ばれ、事実これからの経済においてはDXは更に進んでいくと見られている。フィットネス業界もベンチャー企業によってDXが推進されており、それらの企業の躍進が続いている。

hacomono運営のまちいろ1億円を調達

hacomono運営の株式会社まちいろは、ALL STAR SAAS FUNDを引受先とする第三者割当増資を行い1億円を調達した。

hacomoのインターフェース
hacomoのインターフェース
https://www.hacomono.jp/

hacomonoは、フィットネスクラブ向けの顧客管理・予約・決済システム。体験予約や入会、レッスン予約だけでなく、QRコード会員証やセルフチェックイン、入退館、物販などフィットネスの店舗運営に必要な機能が一通り揃っている。初期費用20万円、月額3万5000円/店舗から利用が可能。2019年7月のサービス開始から利用企業を増やしており、現在80店舗が利用している。

利用企業はClub Pilates Japanや東急ゴルフスクール、JUST FIT 24、b-monster、アンダーアーマーなど有名企業も目立つ。足元の導入も順調に進んでいるようで、今回調達した資金を元に今後さらなる拡大を行っていく予定だ。

Coubic(クービック)はheyグループ入り

店舗・サービスの予約システムを提供しているCoubic(クービック)は、8月4日heyグループに入ることを発表した。

クービックは予約システムを核として、美容室やフィットネスジム、リラクゼーションサロン、貸しスペース、イベントなど様々な業種にサービスを提供しているが、フィットネスクラブの利用企業が多いサービスだ。毎月1,000社以上が導入し、これまでの導入実績は80,000社を超える。

クービックの利用企業例
クービックの利用企業例
https://coubic.com/biz

利用企業には、ルネサンス、セントラルスポーツ、ゴールドジムなど大手のフィットネス事業者が並ぶ。予約システムの「Coubic for BUSINESS」は無料から利用でき、機能や規模によって月額4,980円〜月額50,000円の価格が用意されている。

機能としては、他業種向けに提供していることもあり汎用性の高い機能となっているが、予約以外にもネット決済や顧客管理、会員向けアプリ、Zoom連携、予約カレンダーのHPに埋め込みなど、フィットネス業界にとっては便利な機能が多い。

Coubicを買収したheyグループは70億円の資金調達を実施

hey社は、ファストECプラットフォーム「STORES(ストアーズ)」と決済サービスを提供する「コイニー(現STORESターミナル)」が経営統合して誕生した企業だ。

heyはクービックの全株式買収と同時に、シリーズEラウンドとして米投資会社の Bain Capital、香港投資会社の Anatole、Goldman Sachs、 PayPal、YJ キャピタル、既存株主のWiL等を引受先とする第三者割当増資を実施した。報道によると引き受けたBain Capitalだけで70億円規模の引受となるようで、総額は100億円近い調達と推測される。

クービックはheyグループ入することで、グループ全体のあらゆるリソースを活用することができ、さらなる成長を模索できる。一方でhey社は物販に加え予約管理システムという商品を顧客に提案できる。また物販だけでは獲得できなかった業種(それこそフィットネス業種等)をグループの顧客とすることができるため、相互のシナジーが見込めそうだ。

ルネサンス1Q決算:売上65%減、純利▲27億円、4〜6月店舗休業で特損を計上

フィットネスクラブ大手のルネサンスは2021年3月期の第1四半期(2020年4月〜6月)決算を発表した。

売上高は前期比65.6%減の38億円、営業利益は赤字転落の▲19億円、経常利益▲20億円、当期純利益は▲27億円となった。新型コロナウイルス感染拡大を受けて政府から発出された緊急事態宣言による店舗の休業が大きく響いた。

株式会社ルネサンス 2021年3月期 第1四半期決算短信

当該期間中に発生した設備費及び人件費約19億円を店舗休止損失として特別損失に計上した。「粗利」を示す売上総利益時点でも赤字となり、新型コロナウイルスのフィットネス業界に与えた影響の大きさを見せつけられる結果となった。

単位:百万円2020年3月期1Q2021年3月期1Q
売上高11,0883,814
売上原価9,8765,229
売上総利益1,211▲1,414
販管費668555
営業利益543▲1,970
経常利益459▲2,041
当期純利益280▲2,780

なお、同社は新型コロナウイルス感染拡大が本格化してきた5月に40億円を銀行融資で調達しており1Q時点では現預金残高が前期比+56億円の118億円となっているため、当面の運転資金に問題は無い。

一方で財務状況は一時的に悪化しており、財務健全性を示す指標の1つである自己資本比率はマイナス12.4ポイントの28.1%、有利子負債残高も前期比+115億円の189億円となっている。7月28日に発表した自己株式の処分によって約27億円(払込は8月13日)を調達、これは全て借入金の返済に当てるとしており財務体質の回復にも着手している。

https://bthefit.com/post-511/

メガロスが新業態、女性専用ダイエットスクール「Dieto(ディエート)」

スポーツクラブ大手のメガロス(運営:野村不動産ライフ&スポーツ株式会社)は新業態として、女性専用ダイエットスクール「Dieto(ディエート)」を9月1日にオープンする。

Dietoは、週1回60分のスクール制で、1レッスン8名の生徒で行われる。マイトレーナーと呼ばれるトレーナーが管理し、トレーニングは脂肪燃焼効果が高いと言われる「HIITトレーニング」をメインに行う予定。

1号店は京都の「メガロスルフレ河原町三条」に併設され、同店舗で人気のハンモックプログラムやサーフエクササイズ、ホットヨガ、トレーニングマシンを利用したプランも用意される。

メガロスルフレは女性にフォーカスしたサービスを提供している
https://www.megalos.co.jp/kawaramachisanjo_reflet/effort/

ダイエットを目的にフィットネスクラブを利用する会員が多い中、1人で続けることで継続できなかったり、ダイエットに最適なプログラムを実施することができず効果が実感できないなど、消費者の課題は長年解決されていない部分が多い。

この課題について、既存施設のメガロスに併設することによって継続的に同施設を利用、ダイエットの効果を確実に出してもらトレーニング方法、複数人によるコミュニティの形成、「ダイエットスクール」という打ち出しなど、かなり踏み込んで開発された業態とも言える。

採用された「HIITトレーニング」は、40秒全力で動き、20秒休憩を6セット繰り返すトレーニングで、ジョギングなどに比べ約6倍の脂肪燃焼効果があり、ワークアウト後の脂肪燃焼効果も期待できるという。

京都府にオープンする1号店は、8月20日から体験会を開催、9月1日オープン予定。価格は入会金10,000円、週1回のレッスン受講で月会費9,800円(税別)レッスン以外の日は施設6階マシンジム、地下1階のフリー利用可となる。

人気の美容サブスクアプリ「Salt.(ソルト)」フィットネスサービスも提供

美容サロン通い放題アプリ「Salt.(ソルト)」が人気

2020年6月にサービスをスタートした美容サロン通い放題アプリ「Salt.(ソルト)」が人気だ。同サービスのTwitterアカウントを見ると、フォロワーはサービス開始約2ヶ月で既に4,000人弱も存在し、タイムラインはSalt.会員の声で溢れている。

Salt.は、毎月定額の利用料を支払うことで、Salt.提携の美容サロンに通い放題になるサービスだ。料金は平日プラン、週末プランなどコースによって別れ、月額50,000円〜140,000円まで複数コースが用意されている。

提携の美容サロンはエステ、リラクゼーションサロン、フィットネスジムなど「美容」のための施設となっており、既に200以上のサロンを掲載中だ。

Salt.定額料金の一例
https://salt.byk.tokyo/plan/

ホットペッパービューティーアカデミーが実施した調査によれば、20代〜60代女性が使う1ヶ月の美容代の平均は約7,000円とのことだが、美容医療の領域になると単価は跳ね上がる。例えば、医療脱毛の施術トータル費用は約17万円、アンチエイジングや、容姿(顔・体)を整える施術では約15万円〜18万円というデータがでている。

Salt.の月額料金は一見高額とも思えるが、これまで女性がかけてきた高額な「美容代」を考えれば、毎月定額で支払うことで遠慮せず美容サロンに通うことができるメリットの方が大きいということだろう。

更に、毎月の美容にかける予算を考えると「気になっているけど、安くない金額だし、イメージと違うと嫌だから行けていないお店」「気になっているけど、一回行くと複数回コースの契約をさせられそうなお店」がSalt.の提携店だった場合は気にせず利用ができるなど、会員は精神的なメリットや美容の選択肢を広げるといった様々なメリットを享受できる。

Salt.と提携する店にもメリット有り

Salt.の会員が「行ったことの無いお店」に通ったり、Salt.の会員になったことでこれまで以上に美容に積極的になることで、提携店は新規の会員を獲得することができる。

美容サロンに限らず、パーソナルトレーニングジムなど高単価のサービスを提供している業態にとっては、競合が続々と現れる現在の市場において、新規会員獲得のための広告宣伝費は高まる一方だ。

株式会社トゥエンティーフォーセブン
成長可能性に関する説明資料

大手フィットネスジムの広告宣伝費比率を見ると平均20〜30%水準の企業も多く、収益性は広告の効率に依存しているといっても過言ではない。24/7Workoutを運営する株式会社トゥエンティーフォーセブンが開示した上場時の資料を見ても、広告宣伝費比率のコントロールに重きを置いているのが分かる。

月額でサービスを提供しているフィットネスクラブ・ジムにとっては、会員の継続期間が短いと、広告宣伝費を吸収できないといったことも起きるためトレーニングサービスとは別に会員とのコミュニケーションや関係性構築を行い「継続してもらう」ことに重きを置いているジムも多い。

Salt.の会員の場合、Salt.側で継続して月額会費を支払っているため、通ったサロンやジムのサービスが気に入った場合は継続してくれる可能性は高い。もちろん「通い放題」といった特性上、利用する施設のスイッチコストが低いという側面も否めないが、Salt.経由での新規会員の獲得数の母数が大きくなれば事業者側もメリットを享受できる可能性は高いと筆者は見ている。

Salt.に女性専用キックボクシングジム「ミットネス」が参加

女性専用キックボクシングジム「ミットネス」は全国5店舗を展開、b-monsterと共に女性に人気の暗闇フィットネス業態だ。これまでもフィットネスジム、パーソナルトレーニングジムの掲載はあったが、全国に店舗を有しているフィットネスチェーンがSalt.に掲載されるのは初となる。

8月5日時点で、ミットネスを含めフィットネスカテゴリの掲載件数は10件とまだ少ないが、美容というカテゴリにフィットネスは欠かせない一部だ。

BEHIND THE FITNESS編集部作成

女性専用のパーソナルトレーニングジムチェーンも増えており、その中にはエステを併設しているジムも少なくない。Salt.のように男性の目線では気付きにくい「女性」の強いニーズを受けたサービスは、新たなパートナーの候補となるだろう。

最近は様々なジムを横断して利用できるサービスも複数ローンチされており市場は盛り上がっているが、ビジネスモデル成立に対しては懐疑的な目が向けられていることも事実だ。提携するジムの中で低価格のフィットネスクラブと、高価格帯のパーソナルジムの提供単価の差が埋められない、横断サービスの単価が低いがゆえにジム側へのコミッションが低い、サービス提供側の収益性が悪いといったポイントがある。

Salt.はその点「美容」という元々高単価のサービスを対象としており、カテゴリも「パーソナルトレーニング」と表記してあるとおり高単価のフィットネスサービスにフォーカスしていることが分かる。プロダクトマーケットフィットの観点でも期待の持てるサービスだ。

エニタイムフィットネスが国内800店舗を達成

24時間営業のフィットネスクラブ「ANYTIME FITNESS(エニタイムフィットネス)」は国内出店数が800店舗を達成したと8月1日に発表した。

同社の発表によると、8月1日に5店舗を同時にオープンすることで、出店店舗数が802店舗となった。8月1日にオープンした店舗は、高知神田店(高知県)、倉敷笹沖店(岡山県)、春日井庄名店(愛知県)、大府店(愛知県)、新宿6丁目店(東京都)。

株式会社Fast Fitness Japan プレスリリース

日本でのエニタイムフィットネスFC本部である株式会社Fast Fitness Japanは、2019年2月に東証マザーズより上場承認を受けたが、新型コロナウイルス感染拡大を受け3月には新規上場を取り下げていた。その後、店舗の閉店などの情報が続いたため同社の苦戦が予想されていたが、実態はその後も出店を続けており今回800店舗達成となった。

年月トピック
2019年12月国内693店舗(直営119店舗、FC574店舗)
2020年1月国内700店舗達成(会員55万人突破)
2020年2月東証マザーズより新規上場承認
2020年3月新規上場を取り下げ
2020年4月47都道府県での出店達成(737店舗目高知本町店)
2020年8月国内800店舗達成
BEHIND THE FITNESS編集部集計

同社は2010年10月に1号店をオープンして以降、直営・フランチャイズを織り交ぜ出店を重ねている。700店舗から800店舗までは約8ヶ月で達成しており、そのスピードは加速している。

なお、アメリカ発祥のエニタイムフィットネスは、世界28カ国、4,500店舗のグローバルチェーンとなっている。

フィットネス業界にも新型コロナ「第2波」の影、7月に入り臨時休館が急増

新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言の解除から約2ヶ月が経過した。新型コロナ罹患者数が日々の報道で流れる中、フィットネス各社は感染拡大防止策・安全対策をとった上で営業を再開している。

罹患者が増加している背景にはPCR検査数の増加が有る。感染率は低減していることもあり、現時点では緊急事態宣言の再宣言について政府も否定的な姿勢をとっていると見られるが、第1波の際にフィットネス事業者がクラスターの1つに含まれたことで、フィットネス業界には神経質な空気が流れている。

実際、RIZAPカーブスの決算を目の当たりにし、新型コロナウイルスが与えたインパクトの大きさ、そして「第2波」に各社戦々恐々としているというのが実情だろう。

https://bthefit.com/post-1231/

しかし、現実は厳しい。7月に入り罹患者の増加に伴ってフィットネス大手各社から臨時休館の通知が増えてきた。

現在の臨時休館に至る流れは概ねどこも同じで、店舗の会員が「陽性」だった場合、店舗を管轄する保健所より当該店舗をいつ利用したか、陽性患者の施設利用実態により店舗の消毒を指示される場合がある。(現時点では各社の自主的な判断によって店舗を消毒していることが多い)また店舗に勤務する従業員やスタッフ、その家族に「陽性」反応がでた場合も同様となる。

以下、フィットネス大手から7月に入って発表された新型コロナに関する臨時休館等のお知らせを時系列で記載する。

7月8日発表、コナミスポーツクラブ グランサイズ青山

  • 7月5日に利用した会員がPCR検査で陽性反応
  • 7月8日に全館に除菌・消毒作業を実施
  • 7月9日から通常営業

7月10日発表、JOYFIT24 立川店

  • 7月7日に利用した会員がPCR検査で陽性反応
  • 7月10日18時~7月11日12時までを臨時休業し店内を消毒
  • 7月11日12時より通常営業

7月11日発表、LAVA大塚店

  • 7月2日に利用した会員がPCR検査で陽性反応
  • 7月11日を臨時休業し店内を消毒
  • 7月12日より通常営業

7月17日発表、メガロス町田店

  • 7月8日に勤務したゴルフスクールの業務委託インストラクターがPCR検査で陽性反応
  • 7月17日に店内を消毒

7月17日発表、メガロス上永谷店

  • 7月9日に勤務したゴルフスクールの業務委託インストラクターがPCR検査で陽性反応
  • 7月17日に店内を消毒

7月19日発表、コ・ス・パ豊中少路店

  • 従業員の同居家族がPCR検査で陽性反応、当該従業員が発熱したため7月15日から臨時休業
  • 当該従業員がPCR検査の結果「陰性」を確認
  • 7月20日9時より通常営業

7月21日発表、JOYFIT24 名古屋黒川店

  • 7月14日に利用した会員がPCR検査で陽性反応
  • 7月21日13時~7月21日22時までを臨時休業し店内を消毒
  • 7月21日22時より通常営業

7月21日発表、メガロス田端店

  • 7月14日に利用した会員がPCR検査で陽性反応
  • 7月21日21時~7月22日9時30分までを臨時休業し店内を消毒
  • 7月22日9時30分より通常営業

7月23日発表、LAVA向ヶ丘遊園店

  • 7月13日に利用した会員がPCR検査で陽性反応
  • 7月23日を臨時休業し店内を消毒
  • 7月24日より通常営業

7月26日発表、LAVA神戸三宮店

  • 7月20日に利用した会員がPCR検査で陽性反応
  • 7月27日14時まで臨時休業し店内を消毒
  • 7月27日14時30分より通常営業

7月26日発表、コ・ス・パ八尾店

  • 7月8日~7月20日までに9回同施設を利用した会員がPCR検査で陽性反応
  • 7月27日を臨時休業し店内を消毒
  • 7月28日より順次営業再開

フィットネス業界各社は、感染拡大防止策・安全対策を講じながら営業している。まだしばらく新型コロナウイルスの蔓延は続く見込みで、まさにWITHコロナ時代に、一時的な臨時休業や消毒、継続的な安全対策がニューノーマルとなりつつある。フィットネス業界のみならず「第2波」を本格化させないために各社個々の努力を続けていくしかない。

7月21日放送「ガイアの夜明け」で在宅フィットネス、MOSHが登場予定

テレビ東京の経済ドキュメンタリー番組「日経スペシャル ガイアの夜明け」が7月21日放送で、新型コロナウイルス感染拡大による新しい働き方を特集する。

働き方改革が叫ばれる最中、新型コロナウイルス感染拡大によって半ば強制的に在宅勤務などへ働き方が変化、それによってこれまでのビジネスモデルを見直したり、新しく「稼ぐ」方法を見出した人たちの選択と決断に迫る。

在宅で新しく稼ぐ手段としての「オンラインビジネス」の一貫で在宅フィットネスの取り組みが紹介される。この中では、昨今フリーランスのヨガ講師やフィトネスインストラクターの利用が増加している「MOSH」が登場する予定だ。

MOSHでは現在1万人以上の個人がオンラインフィットネスやヨガなどのレッスンを販売しており、個人やスモールビジネス販売のオンラインプラットフォームとして人気を博している。特に新型コロナウイルス感染拡大を受け、サービス利用者は更に急成長を続けているフィットネス業界注目のサービスだ。

本稿紹介の回は、2020年7月21日、夜10時〜10時54分、テレビ東京系で放送予定。

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テレビ東京「日経スペシャル ガイアの夜明け」
私が選ぶ!新しい働き方コロナで激変 働く現場の行方2
毎週火曜日 22:00-22:54
https://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/

最新研究が示すワークアウトのパフォーマンスを上げる「音楽の選び方」 運動におけるハイテンポ音楽の効用

音楽を聞きながらランニングすると不思議と楽に走ることができ、パフォーマンスが上がりやすい。普段ランニングをしている大半の人がこのような体験をしているはず。このような体験から、ランニング以外のワークアウトでも音楽を聴くことが常だという人も多いだろう。

これまでの研究では、音楽が運動パフォーマンスに何らかの影響を与えることが示されたきたが、どの音楽がどの運動に最適に作用するのかということまでは分からない状況だった。

しかし、このほど音楽の異なるテンポやムードが特定のワークアウトに最適作用することを示唆する研究が発表され、よりスマートにワークアウト時の音楽選びができる道筋が見えてきた。

170BPM以上のハイテンポ音楽で有酸素運動のパフォーマンス向上?

学術誌Frontiers of Psychologyで2020年2月に発表された論文では、有酸素運動におけるハイテンポ音楽の効用が示唆された。

クロアチア・スプリト大学、イタリア・ミラノ大学などの研究者らが、日頃から運動している24〜31歳の女性19人を対象に実施した同研究。被験者らに、10分間の有酸素運動とレッグプレスによる高負荷運動の2種類のワークアウトをさせ、それぞれのセッションで異なるテンポの音楽を聴かせ、どのような効果があるのかを分析した。

同研究においては、まず音楽の効果は、高負荷運動よりも有酸素運動においてパフォーマンス向上の効果が大きいことが判明。音楽を聴くことで、疲れの感覚が軽減し、それが有酸素運動のパフォーマンスにポジティブに作用する可能性があるという。一方、高負荷トレーニングは短時間かつ、意思決定プロセスも少なくなるため、音楽の効果は有酸素運動に比べ低くなるとのこと。

(画像)音楽を聴きながら走るアスリート
Photo by Quino Al on Unsplash

また、テンポの違いがパフォーマンスに影響する可能性も示唆された。同研究では、音楽なし、ローテンポ(90〜110BPM)、ミドルテンポ(130〜150BPM)、ハイテンポ(170〜190BPM)の音楽を聴く4つの状態で被験者に運動をさせた。この中で、心拍数が最大となり、かつ疲れの感覚が最も低くなったのが、ハイテンポ音楽を聴いたときだったのだ。BPMとはbeat per minitesの略、任意の曲が1分間で何回ビートを刻んでいるのかを示す指標。ハイテンポの曲に心拍数や身体が連動し、身体の意思決定にかかる負荷が軽減したことなどが考えられる。

この研究では、170~190BPMのハイテンポな曲の効果が示されているが、音楽の影響は主観によるところも大きい。National Center of Health Researchのジェニー・マーケル氏は、ワークアウトのペースや負荷は個人によって異なるため、最適な曲やテンポの発見には試行錯誤が必要になるだろうと述べている。

過去にもサイクリング・トレーニングにおいて最適なテンポは125〜140BPMとする研究やトレッドミルでのジョギングでは123〜131BPMが最適だとする研究も発表されている。テンポが運動パフォーマンスに影響することは間違いないが、マーケル氏の指摘する通り、ペースや負荷、さらには個人の好みによって、ワークアウトに最適な音楽は異なるのかもしれない。

高強度インターバルトレーニングにはモチベーション音楽が効果的

上記の研究のほかにも、音楽のワークアウトにおける効果を示す興味深い研究はいくつかある。

2019年11月に学術誌Psychology of Sport and Exerciseで発表された論文では、HIIT(高強度インターバルトレーニング)における「モチベーションアップ音楽」の効果が示された。

カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究らが実施したこの研究では、24人の男女に、エアロバイクによる20秒スプリントと2分間の低負荷ペダリングのセットを10分間させ、これを3セット繰り返した。セットごとに条件を変え、セット1では120BPM以上の「モチベーション音楽」を、セット2ではポッドキャストを聴かせ、そしてセット3では何も聴かせずに被験者にワークアウトをさせた。

結果、モチベーション音楽を聴いたときの心拍数と最大出力数が他のセットに比べ高まったことが判明。また、ワークアウトを楽しめたとの感覚も、音楽を聴いたときが最大だったという。

同論文の研究者の1人、マシュー・ストーク氏は、音楽を聴いたときの被験者の最大出力と心拍数が高まった理由として「Entrainment」と呼ばれる同調現象が起こった可能性を指摘。Entrainmentとは、脳が音楽に対してシンクロする傾向のこと。これによって心拍数が高まったことが考えられるという。心拍数が最大のとき、身体は完全集中するフロー状態になる傾向もある。これが出力数を高めた要因とも考えられる。

(画像)エアロバイクによる高強度トレーニング(写真はイメージ)
Photo by Erlend Ekseth on Unsplash

ストーク氏によると、長距離ランニングなどの低・中負荷ワークアウトと同研究が行った高強度ワークアウトにおける音楽の作用の仕方は異なるという。長距離ランニングなどでは、音楽は苦しいという感覚を軽減する効果がある。

一方、高強度ワークアウトでは音楽は目の前のタスクに集中するモチベーションを高めてくれる効果あるとのこと。ただし、マーケル氏同様にストーク氏も、ワークアウトのペースや音楽の好みなど個人の要素は排除できないとし、120BPM以下の曲でもモチベーション効果を感じるは人はいるだろうと述べている。

音楽の好み、ワークアウトの種類、テンポなどを考慮した自分だけのパフォーマンス最大化プレイリストをつくってみるものよいのではないだろうか。

【決算解説】RIZAPグループ 2020年3月期決算|構造改革が大きく進捗

業界注目のRIZAPグループの2020年3月期決算が発表された。2019年3月期に計上した200億円を超える赤字によって、同社のガバナンスやM&Aで取得した企業の再生手腕に対して市場から疑問の声が上がった。それを受けて同社は「構造改革」を宣言、瀬戸社長が自身の進退をかけて推進するとインタビューに答えるなど一時は物々しい雰囲気が流れた。

一方、新型コロナウイルス感染拡大による店舗休業、外出自粛、インバウンド需要の急減と同社に関わらず苦難の市場環境ではあるが、パーソナルジムの覇者はこの事態にどう立ち向かうのか、足元の状況はどうなっているのか、詳細を見ていきたい。本稿ではポイントとなるスライドをピックアップ、トピック毎に順番を入れ替え解説する。

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RIZAPグループ全体の決算内容:構造改革が順調に進捗しQ3までは黒字推移

RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

まず決算ハイライトだが、2020年3月期の決算は、売上収益2,029億円、営業利益▲7億円となった。2020年3月期は元々32億円の営業利益を計画していたが、新型コロナ感染拡大の影響等によって赤字着地となった。

RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

同社は国際会計基準(IFRS)による会計処理を行っているため、IFRSの営業利益は日本会計基準(J-GAAP)の「税引前当期純利益」に近い(イメージ)という認識を持ってご覧頂きたい。

RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

PLの詳細だが、売上は前期比3.7%減の2,029億円、売上原価 前期比2.4%減の1,118億円、販管費 前期比10.1%減の870億円となっている。特筆すべき点としては「販管費」98億円の削減。構造改革の進捗をかなり感じられる水準と見ることができるだろう。

RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

売上に関しては、構造改革の一貫である不採算店舗閉店による減収に加え、Q3Q4で発生した外部要因による部分が大きく減収決算となっているが、新型コロナウイルス感染拡大がもし無かったとすれば増収の可能性は十分にあった内容だ。

RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

営業利益については、販管費の削減や赤字子会社の売却などコスト削減を進めるも、新型コロナによる店舗や在庫等の固定資産評価を見直した結果 59億円の減損が発生し赤字決算となっているが、前期比では76億円の増収効果を生み出しており、これも同様に新型コロナが無ければ、前期比で増収増益(黒字化)が達成できていたと推測される。

RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

2020年3月期の各四半期の計画対比のスライドを見ると一目瞭然で、第3四半期までは当初計画を大幅に上回る営業利益の推移を辿っていた。

RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

グループ企業の内、上場子会社の営業利益は前期比で64.4億円改善し、合計でも19.5億円の黒字となった。非上場子会社の営業利益合計は1.2億円の赤字となっているが、前期比では6.9億円の増収を達成しており、赤字子会社や事業の売却戦略の効果が表れていると見ることができる。

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RIZAPグループ財務内容:IFRS第16号「リース債務」の取り扱いに注意

ここからはグループの財務内容のパートとなるが、少し数字の認識に注意が必要だ。同社は先述した通り国際会計基準(IFRS)による会計処理を行っているが、IFRS 第16号と呼ばれる「リース」の取り扱いがここでのポイントとなる。

RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

詳細な説明は割愛するが、ポイントとしては「賃借料」といったテナントのリースに関して「使用権資産」とその対価として「リース負債」という支払い義務がバランスシートに計上されることになる。また支払いの一部は「支払利息」として計上されこれは「金融費用」となるため、営業利益(営業CF)が増加する効果が発生する。

つまり販管費における「賃借料」のかなりの部分が「リース負債」の返済としてBS上の処理となるため、日本会計基準に比べ、営業利益・営業CFが大幅に改善(大きく計上)されることになる。RIZAPやワンダーコーポレーションなどのようにテナントを賃借し小売やサービス提供する業態にとっては、PLと営業CFの見え方にかなり恩恵を受ける内容であるため注意頂きたい。

RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

RIZAPグループの連結財務諸表だが、現金同等物は270億円有しているが、前期比で約152億円の減少、純資産は336億円と前期比211億円の減少、IFRS16号の影響を除いても78億円の減少となっている。有利子負債の期末残高はIFRS16号の影響を除くと130億円の減少(返済)し498億円となった。

RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

キャッシュ・フローの状況は、営業CFが前期▲104億円から今期139億円のプラスとなっている。但し、ここでIFRS16号の影響が出てくる。瀬戸社長は説明として「IFRS16号の影響を除いても130億円の改善が見られている」と述べているため日本会計基準ベースでは30億円程度の黒字と認識してよいだろう。逆に財務CFはIFRS16号の影響を考えると150億円程度圧縮されるため、借入金と社債返済分の130億円が日本会計基準ベースでは財務CFのマイナスとなる。

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中核のボディメイク事業「RIZAP」は新型コロナの影響を大きく受けるも回復基調

RIZAPグループは、RIZAPをはじめとしてジーンズメイト、イデアインターナショナル、ワンダーコーポレーションなど店舗型の事業が多く、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けている。

5月6日時点でグループ全体の7割が休業し、RIZAPに関しては100%の休業率となっている。

RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

こうした環境下においてRIZAP関連事業の売上高は前期比3%減の401億円となった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で入会数は4月は昨対11%、5月は昨対6%にまで落ち込んでいる。累計会員数は前期1.7万人増の14.7万人と増加ペースに大きくブレーキがかかった。

RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

しかし、緊急事態宣言解除後からは緩やかな「V字」を描いている。カウンセリング予約の後に入会するためセッション開始までは1週間〜2週間を要するため、新規入会の昨対比の回復はこのタイムラグがあるものの、カウンセリング予約件数は2月の水準まで戻ってきており、全体としては70%程度回復している。

RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

良いトピックとしては、スタッフの取り組みにより、退会数は例年並みに留まり、顧客紹介数は前年超という結果になった。RIZAPは「いつでも全額返金」できるプログラムを実施しているため、解約リスクが有事に発生する可能性をはらんでいるが、スタッフ/トレーナーが現場で必死に会員サポートを行ったことで防ぐことができた。

出店に関してはRIZAPは増減無く、EXPAをメインに出店し期末では198店舗となった。RIZAPについては、不採算店舗の退店や新規出店による純増0なのか否かについては、瀬戸社長のコメントは無かった。

RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

RIZAPのオンラインセッションは会員の4割が利用。またスポーツジムでは初めてとなる全ての会員も対象とした抗体検査を実施。対象会員はRIZAP以外のエクスパ等の他業態も対象。法人向けにもEラーニングを実施。これはコロナ後にも転用できる取り組みとして見ることができる。

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RIZAP以外の事業セグメント状況:非対面事業と高収益業態が改革を牽引

  • 美容・ヘルスケアセグメント:RIZAP、MRKホールディングス、ジャパンギャルズ、健康コーポレーション、湘南ベルマーレ、一新時計等
  • ライフスタイルセグメント:夢展望、イデア、ジーンズメイト、堀田丸正、シカタ等
  • プラットフォームセグメント:ワンダーコーポレーション、サンケイリビング新聞社、RIZAPイベントスメント等
RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

セグメントを見ると、RIZAP含む美容・ヘルスケアセグメントは損益マイナスではあるが、プラットフォームが大幅に改善しグループ全社の回復の原動力となっている。各社の中でも際立ったトピックのある2社をピックアップする。

RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

まず1社目はアンティローザだ。コロナ禍において売上を2倍に伸ばした。EC比率は80%超と、RIZAPグループにおける非対面事業の代表格となりつつある。詳細は不明だが、夢展望再建のノウハウなどが活きているのではと推測される。

RIZAPグループ株式会社 2020年3月期 決算説明会資料

2社目はワンダーコーポレーション。前期の店舗減損による収益の押上効果が表れているとはいえ、大幅な増収を達成している。報道でも目にする機会の増えたトレーディングカード専門店や、LIVE型事業の推進によって収益率が大幅に改善している。新型コロナウイルス感染拡大の影響を強く受けた1社ではあるが、素晴らしい業績と言えるだろう。

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瀬戸社長:コロナ危機を更に強い企業になる糧とする

第3四半期までは計画を上回る水準で業績が推移し、構造改革を進めてきた同社だが、第4四半期の外部環境によって赤字決算となってしまった。並々ならぬ意欲で取り組んできた瀬戸社長が最も悔しく感じていることと思う。

YouTube:RIZAPグループ 2020年3月期 通期 決算説明会

「私自身、創業者として、トップとして、こういった時期だからこそ覚悟を決めてここを乗り越え、そしてコロナがどこまで続くか見通せないが、明けたときには強い強い会社として生まれ変わって成長していくと。必ず実現するために今回多くの反省も踏まえながら必ず飛躍できるように、覚悟をもって向き合って乗り越えていきたい」という瀬戸社長の力強い所信表明でオンライン説明会は締めくくられた。

RIZAPグループに限らず厳しい市場環境ではあるが、同社の構造改革と会員への対応など今後の期待が持てる内容だったと言えるだろう。

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RIZAPグループ決算説明会資料
YouTube:2020年3月期 通期 決算説明会

RIZAPグループ20年3月期は赤字予想、業績予想を下方修正

決算説明会のオンデマンド配信を明日に控えたRIZAP(ライザップ)にフィットネス業界の注目も集まっているだろう。本日6月9日 18時40分、RIZAPグループ株式会社は2020年3月期の業績予想と、瀬戸社長の役員報酬全額返納継続について開示をおこなった。

決算発表は明日6月10日を予定しており、これは元々6月1日に予定していた決算発表の延期を経ているため、前日の発表ではあるが業績予想の修正という開示になっている。

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2020年3月期は7.5億円の赤字に下方修正するも構造改革の進捗が感じられる内容

RIZAPグループ株式会社 開示資料

2020年3月期の業績予想を営業利益32億円、当期純利益7億円の黒字転換予想から、売上高は前期比▲3.7%減の2,029億円、営業利益▲7.5億円、当期純利益▲54.9億円と赤字着地(業績予想の下方修正)となる模様だ。但し、営業利益は前期から76億円改善、当期純利益も133.7億円改善しており、グループの構造改革は着実に進んでいると見られる。

開示によると、不採算店舗の閉鎖、在庫圧縮、販管費の抑制、業績の悪化している子会社の売却など「膿出し」部分と「コストカット」の施策に加え、LIVE型事業等の高収益業態開発や、小売ビジネスでのPB強化など「利益率改善」施策も実施してきた。そのため、第3四半期(2019年4月〜12月)までの9ヶ月累計においては営業利益は期初計画を上回る進捗となっていた。

しかし、第4四半期において消費増税や大型台風、暖冬等の天候不順が重なり、高単価商品や季節性商品を取り扱うグループ企業(RIZAP、MRKホールディングス、HAPiNS、ジーンズメイト)が業績予想を下回ったとしている。

また新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛の影響も大きく、インバウンド比率の高いジーンズメイトや、LIVE型事業を推進していたワンダーコーポレーション、RIZAPの店舗休業などが追い打ちをかけた形だ。また新型コロナウイルス感染拡大の収束時期や消費回復が見通しづらいため、店舗休業による店舗(固定資産)の評価見直し、在庫評価の見直しを行った結果、一過性の損失約59億円の計上を見越すとしている。

2020年3月期は結果的に赤字決算とはなったが、RIZAPグループの構造改革はかなり進捗していると見られる。特に営業利益が急回復していることは良いトピックではないだろうか。グループ企業の売却が進捗する中、売上高の減少幅も3.7%減と限定的で、高収益業態の開発等によって粗利率の改善が開示内容通り進んでいると思われる。また固定資産、在庫評価の見直しによる59億円の特別損失の計上を考えれば、連結業績は黒字着地も見通せていたと推測される。

グループ構造改革の詳細は10日の決算説明会で明らかになるとして、現時点では一定の評価があっても良い決算内容であると本誌は考察する。

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配当は無配予想、瀬戸社長は役員報酬の全額返納を継続

RIZAPグループ株式会社 開示資料

2020年3月期の業績予想下方修正を受け、配当予想は1円から無配としている。財務内容における流動性を確保し、新たな収益源創出として店舗ではなく非対面事業への投資資金、保守的な財務運営のためとしている。

RIZAPグループ株式会社 開示資料

また瀬戸社長は2018年11月に発表した役員報酬の全額返納を営業利益230億円を超えるまで継続するとしている。瀬戸社長は2019年3月期の業績を受け、2020年3月期の黒字を自身の進退をかけて達成するとインタビューに応じていた。今期においては第3四半期まで業績を上回る進捗だっただけに悔いが残る内容となったと思う。

構造改革の進捗と前期からの改善の幅を考えれば黒字化は既に確実とも見える。前期決算を受けた構造改革に加え、新型コロナウイルス感染拡大によって生じた事業改革の必要性によって、RIZAPグループは更に筋肉質になっていくと見られる。今後の同社には更に注目が集まるだろう。まずは10日の決算説明会を注視したい。

フィットネス各社は営業再開後のコロナ対策で進化できるか

6月に入り緊急事態宣言に伴う各都道府県での休業要請解除を受け、フィットネス各社が営業を再開している。新型コロナウイルス感染拡大の第二波を懸念する声も多い中、各社独自のソーシャルディスタンスを保つ対策を打ち出している。

フィットネスクラブ、パーソナルトレーニング、ヨガなど業態によって打ち出す対策は異なり、更にはソーシャルディスタンスを保つ施策によって店舗収益に影響がでることも想定されるが、それを受け入れた上で店舗営業の「ニューノーマル」を見出す必要がある。

ホットヨガ「loIve(ロイブ)」は定員数を70%制限、間接接触も徹底的に対策

株式会社LIFE CREATE公式サイト

全国73店舗を展開するホットヨガスタジオ「loIve(ロイブ)」、サーフエクササイズ「Surf Fit Studio」、マシンピラティス専門スタジオ「pilates K」を運営する株式会社LIFE CREATEも6月2日に営業を再開した1社だ。同社は女性専用の多岐に渡る業態を展開しているリーディングカンパニーの1社、2020年3月時点での会員数は15万人を超える。

株式会社LIFE CREATE プレスリリース

同社はプレスリリースにて主力のホットヨガスタジオ「loIve(ロイブ)」はソーシャルディスタンスを保つため、会員同士が1.5〜2メートルの距離を保つ配置にすることで、スタジオ定員数を従来の70%に制限し営業を行うとしている。

株式会社LIFE CREATE プレスリリース
株式会社LIFE CREATE プレスリリース

サーフエクササイズ「Surf Fit Studio」、マシンピラティス専門スタジオ「pilates K」も同様に器具の中心より半径1〜2メートルを保つ配置にしスタジオ定員数を制限する。また、レッスン時のアシスト・アジャストの中止や定期的な換気、レッスン中のマスク着用可など、レッスンのオペレーションに関わる対策にも踏み込んでいる。

更に出勤前の検温の徹底や、手洗い・手指アルコール消毒の徹底などスタッフの感染予防策の実施に加え、ロッカー鍵の受け渡しの廃止(鍵のついているロッカーを会員自らが選んで利用)、マットや器具・ロッカーなどの仕様後の除菌清掃、清掃回数増加、手拭き用タオルの廃止といった間接的な接触についても徹底的に対策している。

東急スポーツオアシスは施設利用状況をオンラインで確認可能にする

株式会社東急スポーツオアシス プレスリリース

マスクの着用、検温、消毒といった内容に加え、ユニークな対策を打ち出しているのが「東急スポーツオアシス」だ。同社はロッカー稼働率を基準として、施設の利用状況を「少ない」「普通」「やや多い」「多い」の4段階と「ロッカー利用率」を15分毎に更新しHP上で確認できるようにする。このロッカー稼働率は、通常利用可能なロッカー数を約半分に制限した上で算出している。

この施設利用状況の表示は、新型コロナウイルス感染拡大が収束した後も会員にメリットのある施策とも言え、また東急スポーツオアシスのような大手がITをフル活用した施策を打ち出していることは特筆に値するだろう。

コロナ対策を新たな店舗運営の「ニューノーマル」として確立できるか

2社の事例からも分かる通り新型コロナ対策によって、清掃回数の増加、検温作業などコストの増加、更にソーシャルディスタンスを保つための稼働制限などによって売上効率の低下は免れず、業績に対するプレッシャーは明確だ。

反面、直接的な鍵の受け渡しの廃止などオペレーションの見直しによる業務コストの削減、館内の共有物の廃止等(会員サービスの低下という側面も否めないが)増加したコストの反面、削減し効率化できる部分があるのも事実だ。

東急スポーツオアシスが実施している施設稼働利用状況の「見える化」施策は、テレワーク推進によって在宅時間が伸びた会員の施設利用によって施設稼働時間の「平準化」も期待できる。これは時間帯による稼働状況の波が激しいフィットネス業態の「営業効率」問題に一石を投じる可能性もある。

新規出店時にソーシャルディスタンスを意識したマシンの配置による初期投資の削減効果も考えられる。逆に施設利用会員数を低く見積もった事業計画書も必要となる。常時換気を前提とした物件選びや内装工事など出店における条件や費用も変わりそうだ。

新型コロナウイルス感染拡大と緊急事態宣言によってフィットネス業界は「トランスフォーメーション」を迫られている。新たな店舗運営の「ニューノーマル」をいち早く確立することで、消費者の支持を受け、業界の新たなリーダーになることができるだろう。

「ヨガの保険」が示すフリーランスの「怪我と補償」問題の対処法

フィットネス業界で経営者に取材をしていると、小中規模のジムや個人になればなるほどトレーニング中に起きた会員の怪我について聞くことが多い。保険でカバーされたという話もあれば、お客様との間で揉めたという話も聞く。

新型コロナウイルス感染拡大を受け、フィットネス業界ではオンライントレーニングに各社参入しているが、そこで脚光を浴びているのが「オンラインヨガ」だ。ヨガはマシンを使う機会が少なく、小スペースで実施できるためオンラインとの相性がよい。

SOELU公式サイト

オンラインフィットネススタジオを標榜する「SOELU(ソエル)」は、朝5時から24時まで1日100レッスン以上を開講している。1レッスンあたり15名程度が参加し、PCやスマホから利用できる。また5分程度の録画した短時間の動画も配信されており、ユーザーの様々なニーズに対応している。

同社の会員は80%がヨガ未経験で、オンラインレッスンによってヨガの潜在市場を掘り起こしている。報道によるとSOELUは、外出自粛が本格化した3月中旬にはレッスンの総受講回数が25万回を突破、1月の2倍に成長しているようだ。無料体験は既に1万人を突破している。

SOELUだけでなく、元々オンラインでトレーニングコンテンツを提供していたサービスは軒並み受注が伸びていると聞く。さらに言えば、フリーランスのヨガインストラクターもオンライントレーニングの稼働が増えている。

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フリーランスが直面する「補償」問題は働き方改革が生み出した新たな課題

市場成長の反面、考えたいのは指導中の「怪我と補償」の問題だ。

ヨガに限らずパーソナルトレーニングにおいても、店舗でのトレーニングを前提にした保険で補償されるか、個人で「オンライントレーニング」を提供していた場合の補償はどうか、何らかのプラットフォームに所属した上で配信していた場合はどうなるのだろうか。フィットネス業界における怪我と補償の問題を考える上では、特に個人・フリーランスに絡む問題は市場拡大の暗部となる可能性が高い。

そもそもフィットネス業界に限らず、働き方改革を受けた副業やフリーランスの増加に伴い、個人事業における業務中の事故や様々な補償の問題は社会課題となりつつある。資金力の弱い個人にとって業務中のトラブルや金銭的な補償は死活問題だ。

こうした市場背景を受けてインターネット関連企業大手のGMOインターネットはフリーランスに特化した金融支援サービス「FREENANCE」を提供している。仕事中の物損・情報漏えい・著作権侵害等のフリーランス特有の事故に対して最大5,000万円の補償が付く「FREENANCEあんしん補償」と、取引先からの支払い遅延や支払い早期化のための売掛債権の流動化サービス「FREENANCE即日払い」が主な提供サービスだ。

「FREENANCE」公式サイトに記載されている利用者の声を見ると、グラフィックデザイナー、フリー記者、カメラマンなど、クリエイティブ職がメインの対象に見えるが、フィットネス業界でもこのサービスを活用できる余地はあるだろう。

今後フリーランスに向けた業務サポート系のサービスが更に生まれてくると思われるが、各業界の商習慣や特徴によってはカバーされない範囲も出てくるだろう。フィットネス業界も特殊な事例になる可能性も高い。本稿では「ヨガ」を中心に考察していきた。

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ヨガ市場は拡大、マタニティヨガやパークヨガなど数十種類が存在

日本のヨガマーケット調査2017 株式会社セブン&アイ出版

ヨガ市場はウェアやシューズ等の関連市場を除いても約1,000億円規模となっており、月に1回以上ヨガを行っている人口は約590万人と一定の市場規模を有している。セブン&アイ出版のレポートによると自宅派は全体の38%を占めており、今回の外出自粛によってこの層に加えジム派・スタジオ派もオンライントレーニングに流入していきていると考えれば、盛り上がりは想像に難くない。

矢野経済研究所 2019年版 フィットネス施設市場の現状と展望

矢野経済研究所のレポートによると、ヨガの施設数は全国776施設で13%を占めている。新規に出店された施設に占める割合は19.4%と施設増加傾向は高い推移となっており、依然として高い成長性が見込める市場と見ることができる。

また、ヨガの特徴として「ヨガを行う場所」や「ヨガを行う人の目的や状況」によって「○○ヨガ」と種類が変わり、ポーズやカリキュラムが変化する。場所で言えば、ホットヨガのように室温を上げた環境で行うものから、公園など自然の中で行うパークヨガがある。また目的や状況で言えば、マタニティヨガやジャイロキネシス(ダンサーのためのヨガ)など、その種類は数十種類になる。

そのため、室内ではない環境での事故や怪我、妊娠中の方の不調など、レッスンの内容によってはリスクを真剣に検討する必要がある。

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ヨガインストラクターの9割が業務委託で複数スタジオに勤務している

施設やオンラインサービスが増加している一方で、一般社団法人日本ホリスティックヘルスケア協会によるとヨガインストラクターの9割以上が業務委託で複数スタジオに勤務している状況で、成長を続けるヨガ市場はフリーランスによって成り立っている市場と言える。

「ヨガ練習中のケガに関する調査2017」一般社団法人日本ホリスティックヘルスケア協会

同協会の調査によると、レッスンによって怪我をした経験をもつ受講者は約70%存在しており、その理由に「インストラクターの不適切な指導」を選んだ受講者が15.5%も存在している。

その反面、インストラクターの90%近くが保険に加入しておらず、また怪我をした受講者の約60%はインストラクターにその事実を伝えていないため、インストラクターの35%は「怪我をさせたか分からない」と答えている。

つまりヨガインストラクターは、ある日突然「あなたのレッスンで怪我をしたので治療代を払って下さい」と求められる可能性が高いにも関わらず、その補償の対策を何も行っておらず、インストラクター・受講者その双方が泣きを見る環境となっている。

またヨガインストラクター自身の練習中の怪我など、就業不能の際の保障についても十分な対策がとられておらず、この状態はフリーランスが大半のヨガ業界の課題だろう。先述した通り「ヨガ」は数十種類存在し、実施する場所や目的なども多岐に渡るため、総合的な保険商品ではカバーしきれない可能性もある。これはヨガに限らずフィットネス業界全体の課題とも言える。

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ヨガの様々な指導や内容に即した専用の保険「ヨガの保険」

こうしたフィットネス業界のフリーランスをとりまく「怪我と補償」問題解決のヒントになるのが「ヨガ練習中のケガに関する調査2017」を行った一般社団法人日本ホリスティックヘルスケア協会が提供している「ヨガの保険」だ。

「ヨガの保険」は同協会が2018年1月にスタートしたヨガ安全指導員制度の取り組みとして提供されている。この「ヨガ安全指導員」制度は、レッスンの安全性を保つ知識や応急手当、救命措置の基礎知識を身につける「安全講習会」(最低年1回アップデート講習会の受講が必須)と協会員全員加入の「ヨガの保険」によって構成されている。

「ヨガの保険」は三井住友海上が引受を行っており、同協会がヨガのあらゆる指導や場面を想定、オリジナルで設計した賠償責任保険だ。フリーランスが多いヨガインストラクターを同協会の会員として束ね団体保険として提供することで、この問題に当たっている。

補償を受けたいインストラクターは、同協会に入会、年会費の支払い、安全講習会を受講することで翌月1日から自動的に「ヨガの保険」の補償がスタートする。安全講習会および「ヨガの保険」は協会員の特典であるため、三井住友海上との契約は同協会がとりまとめて行う。そのためインストラクターが個別に三井住友海上に対して保険料の支払い等を行う必要はない。

出所:同協会プレスリリースより

「ヨガの保険」の特徴はなんといってもカバー範囲だ。通常のヨガだけでなく、ホットヨガ、マタニティヨガ、ママ&ベビーヨガ、パークヨガ、SUPヨガ、アクロヨガ、ハンモックヨガ、ジャイロキネシス(ダンサーのためのヨガ)などの新しいスタイルのヨガも保険金支払い対象となる。特筆すべきは「オンラインヨガ」「Zoomヨガ」までカバーしている点にある。更に、受講者の怪我の賠償責任保険だけでなく、ヨガインストラクター自身の怪我(傷害)も保障される。

まさに、ヨガを知り尽くした同協会がオリジナルで三井住友海上と設計した、ヨガインストラクターのための保険商品となっている。

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世界最大のヨガ資格認定団体「Yoga Alliance」と連携、安全な指導の裏付けを更に強化

同協会は、世界最大のヨガ資格認定団体「Yoga Alliance」と「ヨガの保険」を独占提供するパートナー契約を締結したと発表した。「Yoga Alliance」は全世界に8万人超の会員を有する団体で、日本では約1,700名の会員がいる。この会員に向けて協同し「ヨガの保険」の広報・宣伝活動を行っていくとしている。

「Yoga Alliance」は北米(アメリカ・カナダ)で5万人の会員を有している。北米の会員向けには、既にAllianz社が賠償責任保険を提供していたが、日本の会員には提供されていなかった。そのため、日本のYoga Alliance会員にとっては待望のサービスとなっている。

本提携には、単純に会員拡大の取り組み以外に大きな意味があると本誌は見ている。「Yoga Alliance」の認定資格は「RYT200」「RYT500」と呼ばれており、ヨガ業界では常識ともなっている認定資格だ。

RYTは、REGISTERED YOGA TEACHER(登録ヨガインストラクター)の略なのだが、このRYTの認定資格を取得するにはRYS(Registered Yoga School)と呼ばれる「Yoga Alliance」の認定基準に準拠したスクールでトレーニングプログラムを修了する必要がある。

「RYT200」は「Yoga Alliance」認定基準に準拠した200時間のトレーニングプログラムを修了することで認定される。「RYT500」は累計500時間のプログラムを認定校で修了していることが求められ、更に最低100時間のティーチング経験が必要となる。また費用面でもRYT200で45-65万円、RYT500では65万-100万程度の費用がかかるため、RYTの認定資格を保有していることがヨガインストラクターとしての品質や姿勢について一目瞭然の「称号」となるものだ。

出所:同協会プレスリリース

「Yoga Alliance」は昨今、インストラクターの質の低下を課題に感じており、スクールプログラムを更にブラッシュアップ(厳しく)している。座学内容の拡充だけでなく、指導にあたるリードトレーナーの指導時間を伸ばし、更にリードトレーナーの条件を絞っている。

つまり、むやみやたらにヨガインストラクターを補償するのではなく、「ヨガの保険」提供元の日本ホリスティックヘルスケア協会が開催する安全講習会や様々な講習の受講、「Yoga Alliance」のスクールプログラムのブラッシュアップによって「安全かつ正しい指導が行えるヨガ業界」をスクラムを組んで作っているにも関わらず「やむを得ない事故や怪我」に対して「保険が機能する」という正しい姿勢を感じることができる。

保険はあくまで「不慮の事故」に対するものであり、前提として「自浄作用」を己の中に持ち不断の努力を行っているという姿勢と仕組みがあることが、本質的なポイントだ。あくまで顧客が安全に正しくヨガの効果を感じられるサービスを追求していくという姿勢は評価できるのではないだろうか。

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本稿はヨガ業界を中心に見てきたが、フィットネス業界のサービスは概ね「体に直接触るわけではなくとも、間接的に体を動かさせ改善していくもの」であるため「安全性」への対策とトレーナーの「職業倫理」向上は避けて通れない課題だ。

その上で、フリーランスが多く活躍する業界であるため「補償」対策も同様であるべきだ。しかし本質的な対策は「正しく安全なサービス提供」が行えるように不断の学習と訓練を行うことであり、ヨガ業界の取組は示唆を与えてくれる。こうした取り組みが増え、健全な市場成長と提供サービスの品質向上が同時に実現することを切に願っている。

日本テレビHDフィットネス市場で250億円のM&A攻勢、会員の青田買い戦略を推進か

日本のフィットネス業界は異業種からの参入とM&Aの歴史と言える。例えばコナミスポーツも、元は旧マイカル系のニチイ(総合スーパー、現イオンリテール)が運営していたスポーツ事業を2001年にコナミが買収したものだ。最近ではカラオケ事業大手のコシダカホールディングスによるカーブス買収も記憶に新しい。

日本テレビホールディングス株式会社も、異業種からフィットネス事業へ参入した企業の1つだ。フィットネスクラブ「ティップネス」を2014年11月にサントリーホールディングスと丸紅から買収、2020年3月には「JSSスイミングスクール」運営企業の株式会社ジェイエスエスに資本参加し筆頭株主となっている。

この背景にあるのが、同社が2019年5月に開示した「日本テレビグループ 中期経営計画 2019-2021 日テレ eVOLUTION」だ。メイン事業である放送事業の方針は当然のことながら、インターネットビジネスを柱として成長させることや、AI活用による生産性向上等の方針を策定している。その中で数値目標を明確にして方針を示しているパートがある。

「日本テレビグループ 中期経営計画 2019-2021 日テレ eVOLUTION」の概要について

日テレHDは2020年3月期の売上高4,265億円、営業利益431億円、時価総額は約3,000億円の巨大メディア企業グループだ。その同社の規模としては異例とも言える内容が並んでいる。特に「非放送広告収入比率50%超」そして「投資枠1,000億円によるM&A」といった部分がどこに向くのかというのがポイントに思える。おそらくフィットネス領域の強化は1つの答えと言えるだろう。

日本テレビHDのフィットネス参入沿革(ティップネスの買収とジェイエスエスへの資本参加)

日テレHDのフィットネス領域におけるM&Aの沿革相関図を編集部で作成した。それと同時にフィットネス業界がいかにM&Aや資本参加によって形作られてきたかもお分かり頂けると思う。

ティップネスはサントリーの子会社として1986年10月に設立された。同時期に丸紅子会社として設立された「株式会社レヴァン」(レヴァンブランドでのフィットネスクラブ事業を運営)を2001年に吸収合併、その翌年に当時10店舗あったレヴァンブランドを「ティップネス」ブランドに統合し店舗数は24店舗の規模となった。20016年には、現在三越伊勢丹HD傘下にある丸井今井グループ(北海道で百貨店を展開、ファッションビルのマルイとは無関係)の経営不振を受け、同社が運営していたフィットネスクラブを買収し北海道進出を果たしている。

そして2014年、日テレHDはレヴァン旧株主であった丸紅(買収当時ティップネス株主28.6%を保有)とサントリーHD(71.4%)が保有するティップネスの全株式を現金240億9,900万円で取得し100%子会社としている。

株式会社ジェイエスエス公式サイト

一方、株式会社ジェイエスエスは「JSSスイミングスクール」を手掛ける「スイミングスクール特化型」のフィットネスクラブ業態だ。1976年に竜奥興業の子会社として設立され、当時の社名は「ジャパンスイミングサービス株式会社」(1991年に現社名に変更)だった。竜奥興業は大阪の小中学校のプール建設施工を主業としており、ジェイエスエスも祖業は「スイミングスクールの受託事業」であった。その後、直営事業に事業を展開し2013年にはジャスダック市場に上場を果たしている。

同社は現在、全国約80店舗を超える施設を有しており、2020年3月期の業績は売上高84億円、営業利益3.7億円、時価総額16.75億円(2020年5月18日終値ベース)となっている。特徴は、スイミングスクールに特化することで指導力など卓越したノウハウを有している点と、会員の9割が子供であるという点だ。

スイミングスクール特化型の競合には、学習塾大手ナガセ子会社の「イトマンスイミングスクール」等があるが、施設数では大きく差をつけておりジェイエスエスがこの分野ではトップ企業となっている。

上場後のジェイエスエスは安定株主の確保に課題

ティップネスと規模が違うとは言え、日テレHDにとって時価総額20億円弱のジェイエスエスであればTOBによって全株取得を行ってもよい規模だが、約25%の資本参加に留まった理由は、ジェイエスエスが抱える「安定株主」という課題にある。

ジェイエスエス上場時の株主構成を見ると、筆頭株主であるFVC(フューチャーベンチャーキャピタル)をはじめとするベンチャーキャピタルの保有比率は約46.6%に達している。通常ベンチャーキャピタル(VC)は出資後、出資先のM&Aや上場によって出資して取得した株式の「出口」を探るものだ。またVCの出資はVCが集めたファンドから行われる。ファンドの満期は約10年(延長有りで12年程度)でありこの間に「出口」を求められるのが一般的だ。

株式会社ジェイエスエス 有価証券報告書

ジェイエスエスの場合、46.6%あるVC保有株が市場で一斉に売却されると、一気に株価が下がり株価形成に影響を及ぼしかねない。そのため、このVC保有株を一定のかたまりで安定的に保有してくれる先を検索する必要がある。

同社の場合、創業家出身で前社長の奥村氏の持株比率は7.18%、現社長の藤木氏は2.40%、自己株式12.51%と経営陣等の持株比率が低い。江崎グリコ株式会社が9.48%保有しているなど上場前から安定株主の形成を実施してきた努力も見える。

2013年6月ジャスダック上場から約1年後の2014年5月、同社はニチイ学館との資本業務提携を開示している。資本提携の内容は、筆頭株主のフューチャーベンチャーキャピタルが保有している計50万株(24.84%)をニチイ学館に4.75億円で売却するというもので、ニチイ学館が「安定株主」となった形だ。

2020年3月に日テレHDが開示した内容では、このニチイ学館保有株100万株(2017年に1対2の株式分割を実施したため株数は2倍になっている)を総額7.8億円で買収するというもの。日テレHDとティップネスの事例と違い資本参加という形になったのは、ジェイエスエスの安定株主確保のニーズが反映されたものとなっている。

日テレHDがジェイエスエス・ティップネス連合に期待するシナジーとは

では、日テレHD側の狙いは何だったのかということだが、その点ジェイエスエス、ティップネス両社との比較によって考察したい。

目を引くのは店舗エリアの分布状況だろう。ティップネスは関東に店舗が集中しているため、北海道と西日本に強みを持つジェイエスエスをグループに取り込むことで、日テレHDのフィットネス事業は全国をカバーし、特に西日本の強化を行うことができる。

またティップネスはプールを併設した店舗が多く、こうした店舗のプール施設の管理やそこでのスイミングスクールの受託をジェイエスエスが行うことにより業績のアップセルを見込めること、ティップネスとしてはプール施設のプロであるジェイエスエスに委託することでクオリティが向上し、更に高い会員サービスを提供できる。

ジェイエスエス・ティップネス連合の本丸は会員の「青田買い」か

店舗の国内カバー率の向上(面取り戦略)、ジェイエスエスのプール施設運営のノウハウ提供による業績貢献以外に特筆すべきことがある。それは「子供会員」の価値だ。

ティップネス・キッズ公式サイト

先にも触れたがジェイエスエスの特徴は「子供会員」の多さにある。実はティップネスも既存店舗にて「ティップネス・キッズ」を30店舗以上で展開しており注力している様子が伺える。

ティップネス・キッズは、スイミングだけでなくダンスや体操、空手、球技など多岐にわたるプログラムが用意されており、さらには書道やそろばん、英語などフィットネス以外のプログラムも提供している。更に興味深いのは、ティップネスが年齢によって段階的なプランを用意している点だ。

TIPNESS進学 公式サイト

「TIPNESS進学」というブランドで「ティップネス・キッズ」を卒業後の中高生に向けてのプランを提供している。会員はティップネスの大人会員同様にマシンやスタジオプログラム、プールなどが利用でき、中高生の「放課後需要」を取り込む狙いだ。

つまり、単純な面取りではなく、子供会員に強みを持つジェイエスエスと連携することで「子供会員」の青田買いをジェイエスエス・ティップネス連合で行い、成長や興味に応じて様々なプログラムを提供していく考えと推測される。

大人の会員に対してはライフタイムの様々なタイミングでニーズに応じたプログラムや施設を連合体によって提供することが可能となる。これはティップネスの大人会員をジェイエスエスに送客することも含まれる。子供の頃に馴染んだブランドは、大人になり自分自身が消費の意思決定を行う上では安心感をもたらすことができため有利な存在だ。

もし日テレHDがジェイエスエス・ティップネス連合によって「青田買い」戦略を推進するとすれば長期的な取り組みになるだろう。またさらなるM&Aでの強化も考えられる。今後の日テレHDフィットネス事業が業界再編の中心となるか注目していきたい。

コナミ・セントラル・ルネサンス、フィットネス業界大手3社の最新決算解説とフィットネス業界の新秩序

5月は経済誌・ビジネスメディアにとっては忙しい月となる。理由は上場企業で3月決算の会社が一斉に通期決算を開示するからだ。本稿を編集している5月14日だけで、TDnet(上場企業が適時開示を行うサイト)上に1,300件の適時開示が配信されている。

フィットネス業界に目を向けると、今週で業界BIG3の「コナミスポーツ」「セントラルスポーツ」「ルネサンス」が通期決算を開示している。1社1社に分けて記事を編集してもよいのだが、業界の歴史を作ってきたこの大手3社の決算を同時に考察することで、現在のフィットネス業界の姿を垣間見ることができる。

2020年3月期、各社の通期決算の状況

さっそく3社の決算を見ていきたい。各社、新型コロナウイルス感染拡大による休業の影響を少なからず受け、3社とも減収減益決算となっているが、減収幅は外出自粛が本格化した4月は織り込まれていないため限定的となっている。

コナミスポーツは、売上高589億8,400万円(昨対7.1%減)、営業利益は3,300万円(昨対98.5%減)と大幅な減益となっている。コナミスポーツの決算はコナミホールディングス株式会社の「スポーツ事業」セグメントとして開示されており、コナミスポーツ株式会社単体決算ではなく、コナミグループのスポーツ関連事業の連結決算となっている。(但し9割以上がコナミスポーツ株式会社の業績)

また同社の決算はIFRS(米国会計基準)で組まれており、セントラルスポーツ、ルネサンスの会計基準JGAAP(日本会計基準)と平等に比較するために、決算説明資料の「営業損益」の項目ではなく「セグメント損益」を比較に採用していることにご留意頂きたい。

セントラルスポーツは、売上高533億8,600万円(昨対1.6%減)、営業利益38億1,400万円(昨対10.0%減)。ルネサンスは、売上高450億4,900万円(昨対2.2%減)、営業利益32億6,700万円(昨対13.6%減)となっている。

両社ともコナミスポーツほどではないが、それでも減益幅は10%を超え、2・3月の新型コロナウイルスの影響を感じる結果となっており、4月以降に暗い影を落とす内容となった。

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コナミスポーツ 2020年3月期決算

コナミホールディングス株式会社 2020年3月期 決算発表資料

同社の決算短信によると、新型コロナウイルス感染拡大の影響以外では、パーソナルトレーニングプログラムの刷新、暗闇トレーニング「Club Style(クラブスタイル)」の開始、元競泳日本代表の社員がコーチとして直接指導する「少人数制スイミングスクール」を都内の2施設で開講するなど業態開発を進捗させている。また、受託事業では新規で3施設の業務受託運営を開始している。

また61億円規模の減損を行っており(セグメント損益には影響無し)、決算短信には「スポーツ事業において激化する競争環境の中で事業構造の体質強化に向けて有形固定資産及びのれんの減損損失6,445百万円を計上したものであります。」という説明がなされている。

貸借対照表を見ると今期でのれんが40億円近く減少しており61億円の内、半分以上はのれんの減損と推測される。おそらく施設もしくはM&A案件で買収した物件の減損を行ったものと思われ、来期以降の利益に対するのれん償却での減益プレッシャーを下げ、利益率向上を見込んだものと思われる。

ただスポーツ事業のセグメント損益98.5%減に対する詳細の開示は無いため、減益の要因は残念ながら不明だ。

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セントラルスポーツ 2020年3月期決算

セントラルスポーツ株式会社 2020年3月期 決算発表資料

セントラルスポーツは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で約8日間の全店舗休業を行い3月単月の売上高は79.5%(昨対比20.5%減)となった。しかし通期を通しては、フィットネス会員の減少をスクール会員が補う形で比較的順調な事業進捗だったと見ることができるが、同社の会員数は前期に続きマイナス推移となっており、この点については注視が必要だろう。

セントラルスポーツ株式会社 2020年3月期 決算発表資料

出退店については、通期で直営8店舗の新規出店、受託運営物件は6店舗増加した。退店は移転建替1店舗、退店は2店舗となった。この結果、直営179店舗、受託施設65店舗、提携店265店舗となり、全国509店舗のネットワークとなった。来期2021年3月期に出店を公表しているのは6店舗(直営3店舗、受託3店舗)となっている。

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ルネサンス 2020年3月期決算

株式会社ルネサンス 2020年3月期 決算説明資料

ルネサンスのトピックはなんと言ってもリハビリ特化型デイサービス「元氣ジム」事業だろう。売上の内訳を見ても、マイナス成長のセグメントが続く中、大きく業績を伸ばしているのが「その他売上高(元氣ジム等)」だ。

株式会社ルネサンス 2020年3月期 決算説明資料

元氣ジムは、理学療法士と運動指導員が常駐し、医学的視点からも安全で効率的なプログラムを提供するデイサービス業態で、直営だけでなくフランチャイズによる出店にも注力している。2020年3月期の出店実績としても、元氣ジムが9施設と多くを占めており同社の注力領域であるとわかる。

元氣ジムの顧客層は高齢者が多く、理学療法士もしくは運動指導員1人に対して5−10人程度がレッスンを行う形態で、同社がこれまで主力としてきたような大型のテナントでなく済む。

これと似たような顧客属性やトレーニング目的の業態を聞いたことはないだろうか。本誌の読者はすぐ思いつくかもしれない、カーブスだ。カーブスのこの数年の破竹の勢いと凄まじい業績を見ていると、元氣ジムにも否が応でも期待せざるを得ない。期待できるのは業態の特徴だけではない。

株式会社ルネサンス 2020年3月期 決算説明資料

なんとコロナ禍において「自治体から営業継続の要請」があり営業を継続しているというのだ。利用者は通常時の半分程度になっているということだが「リハビリ」という特性上ニーズを強く感じるトピックとなっている。

本誌は元氣ジムは値千金の業態だと考えている。カーブスと違い、理学療法士や運動指導員の確保が必要で、且つ安全面の配慮からフランチャイズオーナーを選ぶ必要があるものの、直営20%程度でフランチャイズの募集に今の10倍以上の規模で思い切って投資しても良いし、セグメントを独立させるだけではなく子会社化して、ベンチャー企業的な成長を志向しても良いのではないかと思う。いずれにしても3社の中で、極めて前向きなトピックがあったのはルネサンスだった。

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売上高1位はコナミスポーツ、営業利益1位はセントラルスポーツ、営業利益率1位はルネサンス

直近10年の売上高推移(単位:百万円)

直近10年の売上高推移を見ると、依然としてコナミスポーツが首位ではあるのだが、グラフの通り毎年減収を続けており来期については順位変動の可能性がある水準となっている。逆にセントラルスポーツ、ルネサンスは着実に業績を向上させ、首位コナミスポーツに肉薄する水準に迫っている。

直近10年の営業利益推移(単位:百万円)

次に営業利益の推移だが、営業利益においてはセントラルスポーツが7期連続で最高額を推移し首位の座を守っている。次点でルネサンスがセントラルスポーツに近い水準で推移している。一方コナミスポーツは精彩を欠く状態が続いている。

最後に営業利益率の推移だが、こちらはルネサンスが7期連続で首位の座を守っている。営業利益率には売上構成比の内容、店舗オペレーションの営業努力が大きく影響する。またコナミスポーツの2020年3月期に計上される減損処理はこの営業利益率の上昇を目論んだものとも推測される。

まとめると現在のフィットネス業界大手3社内での順位は、売上高1位はコナミスポーツ、営業利益1位はセントラルスポーツ、営業利益率1位はルネサンスという結果になった。営業利益、営業利益率については既に順位は入れ替わってしばらく経っており、売上高は数年内に変動がある可能性が高い。各社の業績に今後も注目していきたい。

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業界戦線異常あり!フィットネス業界の地殻変動

ここまでは各社の2020年3月期決算と直近10年の推移を見てきたが、これによってフィットネス業界の「今の姿」を少し垣間見ることができた。営業利益額、営業利益率で言えば既に首位はコナミスポーツではなくなっているが、売上高でみれば依然としてコナミスポーツが首位に君臨している。

フィットネスクラブ経営業者の実態調査(帝国データバンク)

フィットネス業界は市場成長を続けており短期的な決算を見ると各社成長を続けている。そのため業界順位について長年大きな変動は無く「1位はコナミ、2位以下は…分からない」もしくは「ライザップが1位じゃないの?」と曖昧な認識の読者もいるかもしれない。近年のフィットネス業界は本稿で紹介している大型フィットネスクラブ業態のコナミスポーツ、セントラルスポーツ、ルネサンスだけでなく、ライザップやカーブス、エニタイムといった新興ジム業態各社もしのぎを削っている。

フィットネス市場を見る上で、例えば売上高について言えば大型フィットネスクラブ業態各社は基本的に直営店がメインの業態であるため(FC店舗は低比率)売上高はほぼ店舗末端の売上高と近い水準にあるが、カーブスやエニタイムのようなフランチャイズを主体に店舗展開している企業はロイヤリティや加盟金などが売上高に計上されるため、ジムブランドの末端売上高(ジムブランドの実態の流通額)は企業業績に反映されない(実態より低い売上高で計上される)。その代わり出店コストを負担せずに済み、店舗運営の固定費が損益計算書に費用計上されないため高い利益率を計上できる。

㈱カーブスホールディングス 20/8期Q2決算説明資料

カーブスの末端売上であるチェーン売上高は前期で既に702億円に達しており、末端ベースの売上高ではフィットネス業界での圧倒的首位水準となっている。しかしカーブスホールディングスの売上高は280億円とチェーン売上高の40%程度の金額となっている。だが営業利益は56億円(営業利益率20%)となっており、これは圧倒的な業界首位の規模と水準だ。

先述したルネサンスの「元氣ジム」は、店舗設備や顧客ターゲットなどが類似しているため、この業態に近づける可能性が有り大型施設をメインに出店してきた企業が大きく変化する可能性がある。

RIZAPグループ株式会社 2019年3月期 決算説明会資料

またライザップも大きく成長しており、2019年3月期におけるRIZAP関連事業(セグメント)の売上高は413億円が計上されている。売上413億円は業界上位に食い込む水準だ。

但しここも注意が必要で、企業毎にセグメントに含める事業は様々で、例えばRIZAPの場合RIZAPゴルフやRIZAP関連商品の売上高も含まれており、純粋な会費収入がどの程度含まれているかは不透明だ。カーブスについても物販売上が145億円(プロテイン比率が95.7%)となっており、FC本部売上対比51.8%、チェーン売上対比20.7%と非会費収入が高い水準となっている。

これはフィットネス事業のビジネスモデルが多角化していることも意味している。業界の覇権を握る競争はますます熾烈を極めそうだ。

【決算解説】スポーツフィールド2020年12月期 第1四半期:課題の既卒領域をM&Aで補完

スポーツ人材(主に体育会系学生)に対する人材サービスを提供する株式会社スポーツフィールドは2019年12月に東証マザーズに上場、5/12に上場後初となる四半期決算を発表した。

1Qは増収減益、投資フェーズを継続

株式会社スポーツフィールド 2020年12月期 第1四半期 決算説明資料

同社の20/12期 1Q決算は売上高583百万円(前年同期比6.0%)、営業利益108百万円(▲28.7%)、経常利益108百万円(▲28.6%)となり増収減益の結果となった。売り上げのセグメントで見ると、主力の新卒者向けイベント事業は前年同期比で増収したものの、新卒人財紹介事業、既卒人財紹介事業については減収となった。

株式会社スポーツフィールド 2020年12月期 第1四半期 決算説明資料

セグメント単位では課題もあるが全体としては増収決算となった第1四半期の減益要因として人件費の増加が上げられる。詳細は後述するが、全国に営業拠点の拡充等営業面の強化を実施しており、それに伴い従業員数が167名→201名と34名増加している。また上場維持費用(管理部門の人件費等含む)が30百万円増加していることも要因として挙げられている。

逆に広告効果が向上し四半期で14百万円の増益要因となっている点はポジティブなトピックと言える。

株式会社スポーツフィールドはスポーツ「人財」への求職サービスを展開

同社が定義する「スポーツ人財」とは、過去、部活動等のスポーツ経験のある人材を指し、特に新卒については「体育会・クラブチーム等所属学生」を指している。

同社の事業構成を見ると、新卒領域と既卒(第2新卒)領域の2つに分かれる。新卒領域では、いわゆる「合同説明会」のような就活イベント事業「スポナビ」と新卒人材紹介事業「スポナビエージェント」の2つを展開している。また既卒領域では人材紹介事業「スポナビキャリア」を提供している。

売上構成比では、就活イベント事業の「スポナビ」が前期売上42.7%となっており主力事業、新卒人材紹介事業と既卒人材紹介事業もそれぞれ20%後半の構成とバランスの良い事業ポートフォリオが組まれている。

株式会社スポーツフィールド 成長可能性に関する説明資料

同社が対象としている「スポーツ人財」の特徴として、体育会やクラブチーム加入の学生は先輩や同期とのつながりが強いことが挙げられ(体育会学生の方がOB/OG訪問の経験が一般学生に比べ2倍以上も高いというデータも有る)、同社の営業戦略もそれに準じたものとなっている。

通常の人材紹介企業は求職者の募集をオンラインで行い、数回のカウンセリング(1回の時も有る)で求職企業に紹介していくのに対し、同社は大学の講義を開催したり過去の顧客学生から後輩の紹介を受けるなど、アナログなタッチポイントを増やし、その後のフォローアップも複数回行うなどして「感情移入」が双方可能なレベルまで高めるとしている。

株式会社スポーツフィールド 2020年12月期 第1四半期 決算説明資料

そのため、2020年12月期 第1四半期の人件費の増加の1要因として考えられるのが、既に全国11箇所あるオフィスに加え、6箇所のサテライトオフィスを設置した点だ。今後このタッチポイントを拡充するため更に拠点を増やしていくと見られる。

主力のイベント事業は新型コロナウイルスの影響に上手く対応し増収

同社主力事業である新卒向け就活イベント事業「スポナビ」は、新型コロナウイルス感染拡大を受けた政府からのイベント自粛要請をふまえ一部大型イベントの中止などを強いられるも、中小規模型イベントを代替実施し、販売枠(出展企業の出展料)は前年同期比14.7%増加の403百万円で着地した。

イベント参加人数は昨年同期比で減少するも、この環境下であれば仕方のない状況と思われる。また同社は5月開催予定の就活イベントを全てオンライン開催することを発表しており、主力事業のトーンダウンは避けられない状況だが、積極的な対策を講じている。

新卒人材紹介事業「スポナビエージェント」は企業の内定承諾のタイミング早期化で好調な出だし

新卒人材紹介事業は、前年同期比13百万円マイナスの売上高34百万円で着地した。減収しているものの、本セグメントはそこまで悪い状況とも言い切れない状況だ。

株式会社スポーツフィールド 2020年12月期 第1四半期 決算説明資料

企業の内定承諾時期は年々早まってきており、3年前は1-3月の内定率は10%台だったものが、前期に関しては30%にまで高まっており、売上の偏重時期に変化が起きている。今期(対象は2021年3月卒学生)も新型コロナウイルス感染拡大の影響で選考の遅れがあるも、前年同期比プラスの推移が維持されている。

株式会社スポーツフィールド 2020年12月期 第1四半期 決算説明資料

2021年3月卒業の学生の紹介人数は前年同期比59%とかなり好調な出だし、紹介企業も前年同期比28%と、就活早期化による売上偏重だけでなく同社の本セグメント事業の好調ぶりを感じられる。逆に年間の約50%の内定承諾(売上計上)がある時期は3年前も昨年も4-6月の第2四半期と変わりはなく、同社の繁忙期である第2四半期に新型コロナウイルスの影響が直撃しているため、来四半期以降に注視が必要だ。

既卒(第2新卒)の人材紹介事業「スポナビキャリア」は苦戦の様相

3セグメントの中で最も状況が芳しくないと感じられるのが、既卒領域の人材紹介事業だ。第1四半期の売上高は134百万円と前年同期比▲13百万円の減収着地となった。

開示された四半期推移を見ると、本セグメントの繁忙期は1-3月の第1四半期だが、減収着地且つ前年同期比マイナスとなっている。過去5四半期で前年同期比マイナスの四半期が3四半期も存在しているため、新型コロナウイルス感染拡大の影響だけではなく「スポナビキャリア」事業の成長性が鈍化していると見られる。

2019年12月期の第1四半期が「良すぎた」きらいもある。だが紹介企業のユニーク数は右肩上がりで伸びており企業の採用ニーズは高まっている。成長鈍化の主要因は求職側の仕入(転職希望者の確保)が思うように進捗していないと見て良いだろう。

同社に限らず、人材市場の売り手市場化(求人を出しても応募が集まらない、求職側が選ぶことができる)は年々高まっている。求職者の確保(仕入)の進捗が悪いのは同社に限らない課題ではあるが、それでも求職者の確保において同社のアナログな営業戦略がうまく機能していないとも見ることができる。

課題の既卒領域でM&Aを実施:スポーツ関連企業に特化した求人サイト「スポジョバ」を買収

本四半期において、同社はスポーツ関連企業に特化した求人サイト「スポジョバ」の買収を発表している。買収金額は非公開、対象事業の業績情報も売り手企業である株式会社スポーツマリオの意向により非開示となっている。

ただ、同社の開示によるとスポジョバの経営成績について「売上高および営業損失は、当社の 2019 年 12 月期の売上高の1%未満、営業利益の8%未満となります。※対象事業は 2019 年8月に開始されており、サービス開始に伴う諸経費により損失を計上しております。当社事業年度との比較のため、対象事業の 2019 年8月~12 月期と対照しております。」「資産から負債を除した金額は、当社 2019 年 12 月期の連結純資産額の2%未満となります。」「譲渡価額については非開示とさせていただきますが、譲受価額は、当社 2019 年 12 月期の連結純資産額の1%未満となります。」との記載がある。

記載から逆算して考えると、スポジョバ事業の経営成績は下記のような状況と推測される。

  • 売上高は19百万円以下で赤字
  • 営業損失は5百万円程度?(5ヶ月間)
  • スポジョバ事業BSの純資産は8.6百万円以下(おそらくほぼソフトウェア勘定でサイト構築費?)
  • 譲渡価格は4.3百万円以下

ここから考えられるのは、あまり事業としての価値は考えにくく(そもそも赤字事業でサービス開始から半年程度の求人サイト)売上は立っているもののおそらく初年度は通年で赤字決算となり、また事業拡大の投資を売り手であるスポーツマリオ社が捻出できない(もしくは投資できない)事情から事業売却に至ったとも想像できるため、かなり安い金額もしくは譲渡価格は備忘価格(1円)に近い価格とも推測できる。

「スポジョバ」買収の狙いは「アクハイヤー」か

M&Aの世界では度々「アクハイヤー(Acqui-hire)」というキーワードが使われる。これはM&Aにおいて事業やサービスではなく、優秀なスタッフ・チームを獲得することの意味で使われる。同社の「スポジョバ」買収もまさにこれではないだろうか。

株式会社スポーツフィールド 2020年12月期 第1四半期 決算説明資料

スポーツフィールド社の「スポジョバ」買収は、既卒領域の事業ポートフォリオ構築に一定の価値は有るし、開始5ヶ月の求人サイトではあるが初速でそれなりの売上がたっているとすれば今後の成長性も期待できる。

だが、成長鈍化している可能性がある「スポナビキャリア」事業を補うには少々心もとない内容だ。しかし先述した既卒領域の課題であった「求職者の確保」の要因は「同社のアナログな営業戦略がうまく機能してない」という面を考えると納得感を得られる。

同社の開示にも「SEOに強みを持つ事業開発チームも当社に入社し、既存事業も含めたSEOを底上げ」とある。つまり「アクハイヤー」によって、スポジョバの成長だけでなく「スポナビキャリア」における求職者獲得のSEO戦略等についてもテコ入れを行い、同社の得意とする「アナログな営業戦略」を補完する狙いが強いと見られる。

M&Aにおいて「シナジー」「補完」と述べるのは簡単だ。今後の同社の成長は、デジタルな事業開発チームとアナログな営業チームが混在する企業文化を作り上げられるか、新たに加わるチームが同社の企業文化にフィットできるか、PMIにかかっていると本誌は考察する。

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