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フィットネス界のネットフリックス「NEOU」が示す自宅エクササイズ市場の未来

パンデミックをきっかけに経済社会の側面が変化し様々な「ニューノーマル」が出現している。その1つといえるのが「自宅エクササイズ」だろう。

ロックダウンによるジム・フィットネスクラブの閉鎖によって、多くの人々は自宅でのエクササイズを余儀なくされた。アジアや欧州では感染増のピークは過ぎ、ジム・フィットネスクラブも通常運転に戻りつつあるようだが、自宅エクササイズの流れは継続すると見込まれている。

コロナのピークは過ぎても自宅エクササイズ需要は継続見込み

Pelotonウェブサイト

米フィットネススタートアップPelotonの数字は、自宅エクササイズのトレンドと今後のフィットネス市場の方向性を示す重要な指標といえるだろう。

フィットネスバイク、トレッドミルと専用の動画コンテンツを提供するPeloton。フィットネスバイクの価格2,245ドル(約24万円)に動画サブスクリプション月額39ドル(約4,100円)と、安くはない価格であるが、欧米における自宅エクササイズ需要の高まりを受け、売り上げが急増、フィットネス機器の生産が追いつかない状況になっているという。

同社2020年5月の発表によると、直近四半期における売上高は前年同期比66%増。サブスクリプション利用者は86万6100人と94%増加した。大手ジムなどの競合が危機的状況に陥る中、大幅な成長を記録している。同社株価は3月13日の19.72ドルから6月19日時点には50ドルと2倍以上増加している。

投資家注目、米フィットネス業界のニュースター「NEOU」

このPelotonと同様に、パンデミックによる自宅エクササイズ需要の高騰をきっかけに急成長が期待されているフィットネススタートアップが存在する。2015年ニューヨークで創設された「NEOU(ニューユー)」だ。フィットネス動画のストリーミング配信を通じて、「New You(新しい自分)」の実現を支援。動画配信に強みを持つことから「フィットネス界のネットフリックス」を謳い、利用者の拡大を狙ってきた。

NEOUウェブサイト
https://www.neoufitness.com/home

パンデミックの影響でNEOU利用者は急増。有料ユーザーは65カ国・5万人以上に拡大したという。料金は月額14.99ドル(約1,600円)、年間99.99ドル(約1万円)。

規模はまだまだPelotonには及ばないものの、自宅エクササイズ需要の継続から期待される成長ポテンシャルは非常に大きい。ブルームバーグが伝えたところでは、ウォールストリートの大物投資家らがこぞってNEOUに資金を投じている。6月初旬には、NEOUが新たなに500万ドル(約5億3,500万円)を調達したことが判明。2015年からの累計調達額は、3,000万ドル(約32億円)に達したという。さらなる拡大のため、機関投資家らとの交渉も開始。今年中に新たに2,500万〜5,000万ドルを調達することを計画している。

人気DJによるフィットネス動画が注目、NEOUの人気コンテンツ

テレビ、パソコン、スマートフォン、タブレットとあらゆる動画デバイスで、ストリーミング再生が可能なNEOUのコンテンツ。現時点で3,000以上のフィットネス動画を有しているという。これだけの動画があると、自然と人気動画も選りすぐられる。人気の動画の1つといわれているのが、人気DJスティーブ・アオキ氏の「Aoki Bootcamp」だ。

年間250回のライブをこなすスティーブ・アオキ氏。多忙な中でも、健康を維持するための運動方法を模索、たどり着いた手法を、フィットネストレーナーとともに配信している。配信が開始されたのは2019年3月頃。スティーブ・アオキ氏自身の知名度があることに加え、多忙な人向けにデザインされていること、ワークアウト音楽としてスティーブ・アオキ氏の楽曲が起用されていることなどが人気の理由と思われる。

英DJマガジンが毎年発表している世界のトップDJランキングで、2019年スティーブ・アオキ氏は10位にランクイン。2020年5月には、世界的人気オンラインゲームFortniteで行われたバーチャルライブに登場するなど、ゲームプレイヤー層にも広く認知されたDJだ。

Aoki BootcampとともにNEOUで人気となっているのが「The Program」。米ゲーム開発会社Take-Two InteractiveのCEOストラウス・ゼルニック氏(61歳)によるフィットネスコンテンツ。ゼルニック氏は、年齢による衰えを知らない経営者として、米ビジネス界隈で注目される人物。また、同氏が運営するTake-Two Interactiveは「NBA 2K」や「グランド・セフト・オート」などの人気ゲームで知られており、ゲームファンにも馴染みの人物になっているようだ。

「動画クリエイター視点」の重要性高まる今後のフィットネス市場

フィットネス界のネットフリックスを謳うNEOU。そのインタフェースはネットフリックスを彷彿とさせるものになっている。様々なフィットネス動画が、映画のように紹介されており、利用者は視聴したいジャンルや運動の長さの情報をもとに、コンテンツを選ぶことができる。

ネットフリックスを彷彿とさせるNEOUのインタフェース

常にフレッシュな気持ちで自宅エクササイズを行いたいと考える利用者にとっては、画期的なサービスといえるだろう。

一方で、NEOUのような動画ストリーミングプラットフォームは、ジム・フィットネスクラブやインストラクターらにとってもゲームチェンジャーになる可能性がある。

これまでのフィットネス市場においては、サービス提供側は物理的制限が非常に大きく、事業をスケールするには多額の資金を要し、大きなリスクを伴うものであった。

しかし、こうした動画配信プラットフォームを活用することで、低リスクで世界中にバーチャルサービスを展開することが可能となる。すでにYouTubeでも多くのフィットネスコンテンツが配信されているが、雑多なジャンルの中、真に求めるフィットネスコンテンツを探し出すのは至難。同じ動画ストリーミングでも、YouTube、ネットフリックス、そしてNEOUは目的ごとに棲み分けが進むことになるはずだ。

NEOUのネイサン・フォースターCEOは、ブルームバーグの取材で、NEOUは消費者にとってフィットネス界のネットフリックスだが、コンテンツクリエイターにとっては、アマゾンのようなマーケットプレイスだと指摘。ジム・フィットネスクラブやインストラクターは、市場が求めるコンテンツを制作し、NEOUで配信することで、ビジネスを拡大することが可能という。

音楽業界ではSpotifyによってデジタル化、プラットフォーム化が進み、映画の世界はネットフリックスがその動きを主導した。この流れが今フィットネス市場にも押し寄せているのではないだろか。この先、フィットネス産業のプレイヤーは「動画クリエイター視点」を持つこつが成功のカギとなるのかもしれない。

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