最新研究が示すワークアウトのパフォーマンスを上げる「音楽の選び方」 運動におけるハイテンポ音楽の効用

音楽を聞きながらランニングすると不思議と楽に走ることができ、パフォーマンスが上がりやすい。普段ランニングをしている大半の人がこのような体験をしているはず。このような体験から、ランニング以外のワークアウトでも音楽を聴くことが常だという人も多いだろう。

これまでの研究では、音楽が運動パフォーマンスに何らかの影響を与えることが示されたきたが、どの音楽がどの運動に最適に作用するのかということまでは分からない状況だった。

しかし、このほど音楽の異なるテンポやムードが特定のワークアウトに最適作用することを示唆する研究が発表され、よりスマートにワークアウト時の音楽選びができる道筋が見えてきた。

170BPM以上のハイテンポ音楽で有酸素運動のパフォーマンス向上?

学術誌Frontiers of Psychologyで2020年2月に発表された論文では、有酸素運動におけるハイテンポ音楽の効用が示唆された。

クロアチア・スプリト大学、イタリア・ミラノ大学などの研究者らが、日頃から運動している24〜31歳の女性19人を対象に実施した同研究。被験者らに、10分間の有酸素運動とレッグプレスによる高負荷運動の2種類のワークアウトをさせ、それぞれのセッションで異なるテンポの音楽を聴かせ、どのような効果があるのかを分析した。

同研究においては、まず音楽の効果は、高負荷運動よりも有酸素運動においてパフォーマンス向上の効果が大きいことが判明。音楽を聴くことで、疲れの感覚が軽減し、それが有酸素運動のパフォーマンスにポジティブに作用する可能性があるという。一方、高負荷トレーニングは短時間かつ、意思決定プロセスも少なくなるため、音楽の効果は有酸素運動に比べ低くなるとのこと。

(画像)音楽を聴きながら走るアスリート
Photo by Quino Al on Unsplash

また、テンポの違いがパフォーマンスに影響する可能性も示唆された。同研究では、音楽なし、ローテンポ(90〜110BPM)、ミドルテンポ(130〜150BPM)、ハイテンポ(170〜190BPM)の音楽を聴く4つの状態で被験者に運動をさせた。この中で、心拍数が最大となり、かつ疲れの感覚が最も低くなったのが、ハイテンポ音楽を聴いたときだったのだ。BPMとはbeat per minitesの略、任意の曲が1分間で何回ビートを刻んでいるのかを示す指標。ハイテンポの曲に心拍数や身体が連動し、身体の意思決定にかかる負荷が軽減したことなどが考えられる。

この研究では、170~190BPMのハイテンポな曲の効果が示されているが、音楽の影響は主観によるところも大きい。National Center of Health Researchのジェニー・マーケル氏は、ワークアウトのペースや負荷は個人によって異なるため、最適な曲やテンポの発見には試行錯誤が必要になるだろうと述べている。

過去にもサイクリング・トレーニングにおいて最適なテンポは125〜140BPMとする研究やトレッドミルでのジョギングでは123〜131BPMが最適だとする研究も発表されている。テンポが運動パフォーマンスに影響することは間違いないが、マーケル氏の指摘する通り、ペースや負荷、さらには個人の好みによって、ワークアウトに最適な音楽は異なるのかもしれない。

高強度インターバルトレーニングにはモチベーション音楽が効果的

上記の研究のほかにも、音楽のワークアウトにおける効果を示す興味深い研究はいくつかある。

2019年11月に学術誌Psychology of Sport and Exerciseで発表された論文では、HIIT(高強度インターバルトレーニング)における「モチベーションアップ音楽」の効果が示された。

カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究らが実施したこの研究では、24人の男女に、エアロバイクによる20秒スプリントと2分間の低負荷ペダリングのセットを10分間させ、これを3セット繰り返した。セットごとに条件を変え、セット1では120BPM以上の「モチベーション音楽」を、セット2ではポッドキャストを聴かせ、そしてセット3では何も聴かせずに被験者にワークアウトをさせた。

結果、モチベーション音楽を聴いたときの心拍数と最大出力数が他のセットに比べ高まったことが判明。また、ワークアウトを楽しめたとの感覚も、音楽を聴いたときが最大だったという。

同論文の研究者の1人、マシュー・ストーク氏は、音楽を聴いたときの被験者の最大出力と心拍数が高まった理由として「Entrainment」と呼ばれる同調現象が起こった可能性を指摘。Entrainmentとは、脳が音楽に対してシンクロする傾向のこと。これによって心拍数が高まったことが考えられるという。心拍数が最大のとき、身体は完全集中するフロー状態になる傾向もある。これが出力数を高めた要因とも考えられる。

(画像)エアロバイクによる高強度トレーニング(写真はイメージ)
Photo by Erlend Ekseth on Unsplash

ストーク氏によると、長距離ランニングなどの低・中負荷ワークアウトと同研究が行った高強度ワークアウトにおける音楽の作用の仕方は異なるという。長距離ランニングなどでは、音楽は苦しいという感覚を軽減する効果がある。

一方、高強度ワークアウトでは音楽は目の前のタスクに集中するモチベーションを高めてくれる効果あるとのこと。ただし、マーケル氏同様にストーク氏も、ワークアウトのペースや音楽の好みなど個人の要素は排除できないとし、120BPM以下の曲でもモチベーション効果を感じるは人はいるだろうと述べている。

音楽の好み、ワークアウトの種類、テンポなどを考慮した自分だけのパフォーマンス最大化プレイリストをつくってみるものよいのではないだろうか。

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