5Gの普及で変わるスポーツの形、バーチャル観戦がニューノーマルに?

日本で2020年3月に開始された5G、海外では2019年から導入する国が急増し「5G元年」などと呼ばれていた。この5Gの普及で様々な産業が大きく変化するとみられているが、スポーツ産業も例外ではない。VR・ARやホログラムなど先端テクノロジーとの融合で、スポーツビジネスのあり方を大きく変える可能性があるのだ。

実際、日本に先行し5Gを導入した米国や欧州では、スポーツ産業における5Gを活用した取り組みが増えている。

どのような取り組みが実施されているのか。最新動向から、5Gがもたらすスポーツビジネスへのインパクトを考察してみたい。

5Gの普及とそのインパクト

まずは世界各地の5Gの普及状況を俯瞰してみたい。米ネットワークテスト企業VIAVIが2020年2月に発表したレポートによると、同時点における世界の5G導入国・都市の数は、34カ国・378都市だった。

欧米地域では、米国、英国、ドイツ、スペイン、スイス、イタリア、フィンランド、スウェーデン、アイルランドなどが5Gを導入。アジア太平洋地域では、オーストラリア、ニュージーランド、中国、韓国、モルディブの名前が挙がっている。

これに2020年8月現在では、日本や台湾などが加わるかたちとなる。

5Gスマホのイメージ
(画像)5Gスマホのイメージ
Photo by Mika Baumeister on Unsplash

5Gが普及すると何が変わるのか。英テックメディアRacounterが伝えたVodafoneの説明によると、5Gの通信速度は4Gの約10倍。4Kなどの高画質動画のライブストリーミングが可能になる水準に達するという。また、VR向けの8K動画のライブストリーミングも可能になる。

世界経済全体への影響は計り知れない。市場調査会社IHS Markitは、2035年には5Gによって世界経済全体は12兆3000億ドル(約1300兆円)の価値を生み出すと予想している。また5G関連のバリューチェーンにも影響を及ぼし、同年には2200万人の雇用を創出すると見込んでいる。

5Gとスポーツビジネスの変化、スポーツイベントが5Gサービス開始のきっかけに?

急速に普及する5G。スポーツビジネスの文脈では、どのように捉えられているのか。

イスラエル発の通信メディア多国籍企業Amdocsが2019年2月に発表した調査では、スポーツの世界でも5Gがニューノーマルになる日はそう遠くはないことが示されている。

世界の通信・メディア大手60社の経営層を対象に実際された同調査によると、スポーツイベントで5Gを活用したVR・AR施策の導入を検討しているとの回答割合が63%に上ったのだ。スタジアムでの観戦だけでなく、自宅でのテレビ観戦にVR・ARを組み合わせ、これまでにない体験を提供しようとしている。

延期になった東京オリンピックだが、同調査では、このオリンピックに合わせて5Gサービスの導入を計画していた通信企業は少なくないことも判明。実に、26%がオリンピック開催のタイミングで、5Gサービスの開始を計画していた。また、同じく来年に延期となったサッカーイベントEuro 2020では、当初の開催予定だった6〜7月に5Gサービスの開始を計画していた企業の割合は28%だった。

米フォーチュン誌(2019年9月)が伝えたところでは、米国ではスポーツスタジアムにおける5Gネットワークの整備が進められている。米通信大手ベライゾンは、プロフットボールリーグNFLと提携し、NFLスタジアムで5Gネットワークを開設している。2019年9月時点で、31カ所のうち13カ所のスタジアムで5Gサービスを展開する計画を明らかにしている。

プロアメリカンフットボールリーグ「NFL」の画像
アメリカンフットボールはアメリカで最も人気のあるプロスポーツ
Photo by HENCE THE BOOM on Unsplash

スタジアムでのスポーツ観戦に関して、現在各プレーヤーが実験しているのがホログラムやバーチャル応援システムを活用した新しい体験の創出だ。

デロイトのスポーツ市場レポート(2020年版)によると、テレビ局が5Gを活用したホログラム放送のあり方を模索しており、実際そのような試みを始めているという。エリクソンが2018年11月に、ボーダフォン・ドイツと提携し、ホログラムを活用したコミュニケーションの実験を行っているが、スポーツ観戦においても同様のテクノロジーが使われていると考えられる。

インドでは財閥系大手テック企業が5Gによるバーチャルスポーツ観戦に本腰

インドでは財閥系のテクノロジー大手企業が、5G活用によるホログラム観戦の取り組みに乗り出している。

Business Insider India(2020年5月28日)によると同国マヒンドラ財閥を母体とするテクノロジー多国籍企業Tech Mahindraは、カナダのテックスタートアップChampTraxと提携し、家にいながらスタジアムの雰囲気を体験できる仕組みの構築を進めているという。

Tech Mahindraの最高技術責任者ジャグディシュ・ミトラ氏が同メディアに語ったところによると、5GスマホにARでスタジアムの様子を投影し、どの角度からでも視聴できる仕組みの構築を目指すとのこと。スタジアム側で、選手の動きを複数のカメラで撮影し、スマホ側で3Dとして映し出す仕組みのようだ。

一方、ChampTraxは、スポーツファンの声をリアルタイムでスタジアムに届ける仕組みを提供。視聴者は自宅にいながら、スマホを通じてスタジアムにいる選手やチームを自分の声で応援できる。各ユーザーの声は統合され、スタジアムでよく聞く大人数による声援にまとめられ、選手やチームに届けられる。この仕組は、サッカーのプレミアリーグでも導入される可能性が報じられている。 5Gとバーチャルテクノロジーによって、変わるスポーツ観戦のかたち。ソーシャルディスタンスの解除はしばらく見込めない状況、バーチャル化の流れは一層強くなることが想定される。

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