アンダーアーマー日本総代理店のドームDNSを売却、売却は再建の一歩となるか

DNS公式ウェブサイト https://www.dnszone.jp/index.php

「アンダーアーマー」正規日本ライセンシーの株式会社ドームは、「DNS」ブランドでプロテインなどのスポーツサプリメントの開発・製造・販売を行っている事業部門を売却すると発表した。

DNS事業の譲受先は、日本産業推進機構グループ(NSSK)が設立した会社となる模様。NSSKは、2014年にTPGキャピタルやメリルリンチ日本証券出身者が立ち上げた投資ファンド。買収金額は公表されていないが、数十億円規模と推測される。

DNS事業は株式会社DNSとしてファンド傘下で独立

本件のスキームを確認してみたい。株式会社ドーム内にこれまで存在していたDNS事業は、今回の会社分割(簡易吸収分割)によって株式会社DNSとして独立することになる。

株式会社ドームのDNS事業売却のスキーム図
DNS事業売却のスキーム図

この株式会社DNSは、ドーム内のDNS事業を譲り受ける受け皿として設立された新設法人で、この法人はNSSKが設立する。設立時にNSSK(傘下ファンド)よりDNS事業買収と運転資金を注入し、この法人がドームへDNS事業の買収資金を支払うスキームとなっている。

結果的にドームのDNS事業は、株式会社DNSとして独立することとなる。ドーム社のプレスリリースによると、株式会社DNSのオフィスはドーム内に維持され(事業部と似た/同じ環境で維持され)ドーム社の事業と連携を続けながら事業運営を行うとされ、株式会社DNSの本格稼働は来年3月までと余裕をもったスケジュールになっている。

おそらく、DNS事業の契約関係の整理(新設法人での再締結)やステークホルダーへの説明、人員の移籍や移管についてもここから同意をとっていく中で、当然ドームに残りたい従業員も出てくるため、実質的な事業移管にはまだ時間がかかる見込みだ。

ドームのDNS事業売却の狙いと同社の現在を考察する:本件は再建への執念か

ドーム社における本件の狙いを考察してみたい。最も強い狙いは財務基盤の強化にあると推測される。同社の前期決算(2019年12月期)を見ると、下記のようになっている。

株式会社ドーム 2019年12月期(第24期)決算公告
株式会社ドーム 2019年12月期(第24期)決算公告

売上高376億円、営業利益▲19億円、当期純利益▲22.9億円と厳しい決算となっており、BSに目を向けると総資産401億円に対して純資産38.2億円(自己資本比率9.5%)となっている。

同社の売上推移は、17/12期 459億円→18/12期 426億円→19/12期 376億円と、3期連続で減収となっており厳しい事業状況が想像できる。また19/12期の決算は営業利益時点で赤字になっており、特別損失など一時的な赤字ではなく、構造的な赤字体質に陥っている可能性が無視できない。

もし今期も減収を継続し、前期並み、もしくはそれ以上の赤字を計上するようなことがあれば、純資産がマイナスに転落、債務超過になってしまうため、同社に融資をしている銀行団の反応も硬化することが考えられる。更に言えば、シンジケートローンのコベナンツに抵触することなどがあれば、一気に資金繰り不安につながる可能性もある。

おそらく同社はこのような「待ったなし」の財務状況へのテコ入れ、そして同社の収益構造の抜本的な改革のために、DNS事業を売却し資金調達を目論んだというのが最大の狙いと考えられる。

BSを見る限り、これ以上の融資を行うと有利子負債比率が跳ね上がり借入過多に陥ってしまうこと(現在でも多い可能性は高い)、また抜本的な構造改革をしない限り赤字補填を銀行融資で行うだけで、その先に再成長の未来を見いだせないというのが実情だろう。

株式会社ドームが提供する事業のポジションとバリューチェーン
DNS事業は同社が提供するバリューチェーンの中では重要なポジションを占める
http://www.domecorp.com/service/performance.html

しかしながら(あくまで筆者の想像ではあるが)アンダーアーマー事業不振の反面DNSは同社の稼ぎ頭だった可能性も捨てきれず、しかしまとまった資金を調達するためには業績の良い事業を売却する必要もあり、アンダーアーマー事業からの撤退も容易ではない(売却も難しい)、稼ぎ頭の事業を売却することで再建の道筋は厳しくなる可能性もある、というような経営陣として難しい選択を行ったのではないかと思う。

業績が低迷し再建に入るタイミングでの「アルアル」な状況ではあるのだが、まともに価値が付き売却できる事業が「DNS事業」しかなかった、という可能性もある。プレスリリースでは「アンダーアーマー事業に集中する」としているが、同社としてはアンダーアーマー事業を「立て直すしか道が無い」というようにも見ることができる。

東京オリンピックを見据えた投資をしてきたスポーツメーカー、フィットネス事業者は多かったはずで、オリンピック開催1年延期を受けてその投資効果が1年流れただけでも資金効率は悪化する。そこに新型コロナウイルス感染拡大による消費活動の冷え込みが重なった。同社のように厳しい財務体質の改善を行いながら再成長のチャンスを狙っていた企業にとっては特に「不運」と言えなくもない状況ではあるが、再成長の道筋を見つけるしかない。

DNS事業は、同社にとってシナジーが高い事業だし、DNSの略は「Dome Nutrition System」とドームの社名からもとられている。NSSKがこのブランドを変更するのかは不明だが「DNS」というブランドに一定の価値と知名度があるのは事実だ。

本件は、アンダーアーマー事業の立て直しと、来年の東京オリンピックと新型コロナウイルス感染拡大の収束を受けて同社が業績を回復し、将来的にはNSSKから株式会社DNSを「買い戻す」ことも視野に入れたディールではないかとも考えている。やはりDNS事業が同社の提供する事業ポートフォリオやバリューチェーンにおける重要な役割を果たしているのは間違い無い。

ドーム社の経営陣にとっては正念場が続く。しかし、この厳しい状況において本件のような決断をすることは容易ではない。このディールには経営陣の執念を感じる。なんとかこの状況を切り抜け再成長の軌道に戻ることを願い、経営陣にエールを贈りたい。

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