Facebookも参入、スポーツビジネスの主役となったOTTの現在

Photo by Brett Jordan on Unsplash

デジタルデバイスが日常ツールとなった今、若年層を中心にテレビ離れが進んでいる。OTT(over the top:通信業者以外のネットサービス企業)によるスポーツコンテンツの配信も急増し、テレビ以外のデバイスを介した視聴は世界中でスタンダードになりつつある。このOTTによってスポーツ観戦スタイルも急速に変化している。

デジタル環境の進化による、視聴ツールの多様化

これまでテレビ一強であったスポーツ中継。無料の地上波放送または有料チャンネルなど「視聴料の有無」の差こそあれ、「スポーツはテレビで見る」という行為は不動のものであった。

しかしここ10年ほどで、デジタル技術の飛躍的な進化とネット通信の高速大容量化により、PC、スマートフォン、タブレットといったデジタルデバイスが個人レベルにまで普及。誰もがいつでもどこでも快適に、動画配信サービスにアクセスできるようになった。

それに伴い、デジタルデバイスを利用したスポーツ観戦も急増している。アメリカの調査会社eMarketerによると、同国でスポーツをデジタルデバイス経由で視聴するユーザーは、2020年には3650万人に増加すると予測している。この数字は、2018年の約2倍に当たる。

ドル箱のスポーツ中継

スポーツ人気は世界の場所を問わず突出しており、「最も視聴率を取れる」コンテンツがスポーツの生中継である。

2019年の日本のテレビ番組の年間視聴率を見てみると、上位20位のうち、NHKニュースと紅白歌合戦を除いた6番組すべてがスポーツ中継である。トップ2はラグビーW杯、11〜13位には、ラグビー、全豪オープンテニス、箱根駅伝が入っている。

ラグビーワールドカップ2019の観客席の様子
ラグビーワールドカップ2019は日本で開催され連日話題となった
Photo by Stefan Lehner on Unsplash

アメリカでは有料放送加入者の中では、スポーツファンが最も解約しにくい層だと言われている。アメリカのコンサルティング会社Altman Vilandrie & Coによると、日常的にスポーツ番組を見る人の有料放送加入率は79%で、そうでない人の61%と比較すると遥かに高い。さらに、スポーツ中継の動画配信サービスを利用している人のうち57%が「テレビで放映されていない競技を見たいから」と述べている。

一方、新型コロナウイルスの感染拡大により、スポーツゲームは中止を余儀なくされた。感染が拡大し始めた3月末の時点で、ビジネスインサイダー・インテリジェンスの調査によると、スポーツ中継の延期を理由に有料放送の解約を考えている人は11%に上った。

スポーツ動画配信サービスの利用者が急増

冒頭に触れたように、OTTによるスポーツコンテンツの配信が盛んになっている。Netflix、Amazon Prime、DAZNなど定額動画配信サービスから、Facebookやtwitterといったソーシャルメディアプラットフォームも参入。その他、既存のメディア会社が運営するサービスや、NBAやNFLのようなスポーツリーグが配信するものもあり、スポーツ動画配信業界の競争は激化している。

2020年5月、調査会社ニールセンスポーツが日本で行った「OTTサービスとスポーツ観戦に関する調査」によると、スポーツコンテンツを放映している動画配信サービスの利用数は、一人あたり3.18個と、昨年の2.01個よりも大幅に数を増やしている。

スポーツコンテンツメディアの雄「DAZN」

現在、日本のスポーツファンの心をがっちり掴んでいる、スポーツ動画配信サービス「DAZN」。DAZNはイギリスに本社を置くデジタルコンテンツ配信会社であり、2016年に日本マーケットに参入してから、たった数年でシェアを急激に伸ばしている。

DAZNが日本で配信している契約リーグやチームの一覧画像
DAZNが日本で配信している契約リーグやチーム
https://www.dazn.com/ja-JP/redeem

DAZN急成長の理由の一つに、人気コンテンツの充実度が挙げられる。特にサッカーリーグは目を見張るものがあり、イギリスのプレミアリーグ、スペインのラ・リーガ、イタリアのセリエA、フランスのリーグ・アンなど、世界のトップリーグの放映権を総取りしている。

Jリーグは2017年、これまでタッグを組んでいたスカパーからDAZNに乗り換えて、10年間2100億円という破格の放映権契約を交わしたことで話題をさらった。2020年8月にはさらに2年更新し、12年間2239億円の新契約を締結したことを発表した。

利用料金がリーズナブルかつ分かりやすいのも魅力である。月額1750円(税抜、2020年8月現在)で、すべてのコンテンツが視聴可能。従来の有料チャンネルのように、視聴ジャンルによって細分化されていないのもユーザーの満足度を上げている。

Facebookが仕掛けるスポーツ配信を利用した戦略

ソーシャルメディア会社もスポーツ中継配信に乗り出している。Facebookはワールド・サーフ・リーグの放映権を2年間3000万米ドルで購入した。

Facebookはインド亜大陸の8カ国(インド、バングラデシュ、ネパール、パキスタンなど)で、スペインサッカーのトップリーグ「ラ・リーガ」の全試合を2018年より3シーズン無料でライブ中継している。ゲームはラ・リーガのFacebookページと個々のクラブページを介して配信される。

インドは13億人以上の人口を抱える大国だ。経済成長も著しく、中国を追い抜かす存在として注視されている。Facebookユーザーは大陸全体で3億4800人(2018年)であり、今後の伸びが期待できる。Facebookがラ・リーガに支払った放映権の金額は明らかにされていないが、2014〜2018年に同地で放映権を持っていたソニー・ピクチャーズ・ネットワークは3200万米ドルを支払っていたという。

Facebookはサッカーという人気コンテンツを利用して、同地の覇権を狙っているのだろう。

Facebookが生んだファン同士が交流できるスポーツ中継アプリ「Venue」

そうした流れを更に強化するべく、Facebookは2020年5月にスポーツ中継アプリ「Venue」を発表した。

Facebookが2020年5月にローンチしたスポーツ中継アプリ「Venue」
Facebookが2020年5月にローンチしたスポーツ中継アプリ「Venue」
https://npe.fb.com/2020/05/29/introducing-venue-the-live-event-companion-experience/

スポーツのライブ配信はどんなに大勢の人が視聴していても、基本的には「一人で見る」という単独・受け身の体験である。しかし、ファンたちは他の視聴者(ファン)との交流や試合に参加しているような感覚を得られる「インタラクティブな体験」を求めている。

Venueは中継画面の他にコミュニティ用の画面を用意し、画面上で視聴者同士の交流や試合予測などができるようにしている。まるで会場で隣り合ったファンたちが、おしゃべりするような感覚でゲームを視聴できる。Venueは今後、スポーツ動画配信のスタイルを変えていくかもしれない。

※「Venue」は現在のところ、同アプリはまだベータ版であり、使用はアメリカ国内に限定されている。

企画・編集:岡徳之(Livit)



関連記事