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カーブス新規入会は昨対10%、最新決算で開示されたコロナショックの内容を読み解く

新型コロナウイルス感染拡大で営業を取りやめているフィットネスジムは未だ多く先行きは不透明だ。米ゴールドジムの破綻などセンセーショナルなニュースも有る。中には営業を継続しているフィットネスジムもあるが、会員は純減し新規会員もほぼ増えていないという声も多い。他社はどのような状況か気になっている読者も多いだろう。

「女性だけの30分健康体操教室 カーブス」を展開している株式会社カーブスホールディングは、2020年8月期第2四半期決算において、新型コロナウイルスによる外出自粛が本格化した3月4月の状況を開示している。その内容から、フィットネス業界におけるコロナショックの影響を考えてみたい。

カーブスが受けたコロナショックの傷跡

まず同社は、全国に2,000超の店舗を有しているが、3月に6営業日(3/8-3/15)の全店臨時休業、4月には緊急事態宣言発令による10-18営業日の期間において1,075店舗の臨時休業を行っている。緊急事態宣言対象の7都道府県849店舗においては4/11-5/6まで、その他隣接エリアにおいても都道府県の方針に沿って店舗を休業している。

チェーン売上高は、 FC店を含めた入会金・会費売上+物販末端売上高の合計

同社が発表している内容を見ると、3月はカーブスのフランチャイズ店舗含めた全店舗の売上を反映する「チェーン売上高」とそれに連動する「ロイヤルティ等売上高」を除けば影響は限定的だったように見えるが、4月に入ってからは影響の大きさが明確に見えるようになっている。特に4月の新規入会数は昨対10%と、コロナ禍を考えれば順当にも思えるがインパクトは大きい。

カーブスは2019年8月期の連結売上高は280億円、直営・フランチャイズ両店舗の末端売上高の合計である「チェーン売上高」は702億円を計上している。

この平時の連結売上高・チェーン売上高を単月換算すると、連結売上高は23億円/月、チェーン売上高は59億円/月となる。これが4月に入ると、連結売上高は昨対73%(23億円/月→17億円/月)約6億円/月の減収、チェーン売上高は昨対58%(59億円/月→34億円/月)25億円/月の減収と、かなりのインパクトであることがわかる。

㈱カーブスホールディングス 2020年8月期第2四半期決算説明資料

FC本部である同社の売上=連結売上高と、フランチャイズ店舗の末端売上高を反映した「チェーン売上高」の昨対比の減収傾向にギャップがあるのは「会員向け物販」と「FCのロイヤルティ」設計によるものだと推測される。

連結売上高の約50%は、会員向けの物販によって構成されておりその大半が定期販売(リカーリングモデル)でのプロテイン販売によるものだ。店舗休業下においても、会員向け物販は外出自粛が本格化した4月でも昨対99%と底堅さを見せており、物販による売上構成比の比率がFC本部とフランチャイズ店舗で差があるため、ギャップの要因となっていそうだ。

また、一般的にFC本部はフランチャイズ店舗からは毎月売上の○%(最低○万円)といったロイヤルティの徴収や、毎月10万円もしくは売上の3%を広告分担金として徴収するなど、様々なロイヤルティの設計が存在している。例えば、広告分担金が定額(例:毎月10万円)だったとすれば、仮にフランチャイズ店舗の売上が下がっても必ず広告分担金10万円は支払うためFC本部の売上としては変動しない。売上に対するロイヤルティについても、減収幅が一定水準までは同様の考え方となる。そのため、FC本部とフランチャイズ店舗の売上の昨対減収率にギャップが生まれることとなる。

休会制度を設置し退会を抑止、営業再開後の復活に期待

これまでカーブスは「休会」制度を設置していなかった。会費を支払うか退会するかのどちらかだ。平時ではこの二者択一の会員制度でも会員数を維持し伸ばすことができたが、先行き不透明かつ店舗休業を実施する状況で会費の取り扱いを考えれば「休会」の概念が必要となる。

同社は今回「新型コロナウイルス特別休会制度」を設置、これまでになかった「休会」制度によって退会による会員減少に対策を打った格好だ。それでも、休会会員を含めた会員数は約4年前の2016年8月期末の水準77万人に近づいており、3月4月の約2ヶ月で約5万人の会員が退会している

同社の「新型コロナウイルス特別休会制度」は、再開示に入会金がかからず、休会中の費用は一切かからない制度。請求済みの休会初月会費については再開時の会費にあてられる。この休会制度の利用者は3月に10万会員、4月には累計16万会員が利用している。

しかし、休会を「していない」会員数推移を見ると悩ましい現実も見えてくる。この状況下で62万人が会員を継続している事実は、裏を返せばカーブスという業態の力強さも表しているともとれるが「休会制度を利用する会員がどこまで増えるのか(≒店舗休業がどこまで続くか)」によって再開後の回復にプレッシャーになることが予想される。

フランチャイズ店舗の損益は赤字を覚悟する水準に

同社全体の数字を見ているとリアリティが薄いかもしれない。そこで店舗レベルに分解して目を向けると想像以上に厳しい状況が浮き彫りとなる。

店舗レベルで見ると、2月は1店舗平均413人の会員が在籍していた計算になるが、4月には374人まで減少、そのうち会費の支払いを行わない「休会会員」は21%に及ぶ79人で、退会数も増加している。逆に新規会員は毎月1.6人と2名に満たないペースになっていることが推測され、店舗によっては新規獲得が0になっている店舗もあると見られる。

カーブスの会費は、月5,700円(税込6,270円)と月6,700円(税込7,370円)の2パターン、月の平均単価を6,000円とすると、店舗の月会費売上は2月に248万円だったものが4月には185万円と2ヶ月で63万円も減少していることとなる。

また少し古いデータとなるが、2010年のフランチャイズ・ショーで同社が発表した店舗の損益分岐点売上高は153万円、客単価6,000円で割ると損益分岐点会員数は255名となる。今回のコロナ禍においては退会よりも「休会」への移行速度が高い。つまり休会会員比率が4月21%→35%(53人増加)まで上がってしまうと店舗単位では一時的に赤字のフランチャイズ店舗が続出する可能性が高く、約2ヶ月で21%の会員が休会に移行したことを考えると、5月中に35%の水準に到達してもおかしくはない。

ただ、あくまで再開前提の「休会」であるため完全に退会されてしまうことを考えると、営業再開後に赤字に転落していても黒字に復帰することの布石となるため、スピーディーに「休会制度」を経営判断として設置した同社の対応は一定の評価を得るべき施策だと考える。

AFTERコロナ、WITHコロナ時代のカーブス業態の進化を目論む経営陣の気迫

同社は、コロナ禍を抜けた先に「新しい市場」が生み出されると考えているようだ。自宅待機中の運動量低下による「コロナ太り」や「免疫維持改善」「基礎疾患予防」など、新しい健康ニーズが高まると見ている。その領域に向けては、オンライン体操教室「おうちでカーブス」の展開にも着手している。

㈱カーブスホールディングス 2020年8月期第2四半期決算説明資料

ただオンラインフィットネス自体は、コロナ禍において毎日数件〜10件以上のジムがプレスリリースでオンライントレーニングの提供を発表しており目新しさは無い。同社が他社と違う点は下記のスライドに象徴されている。

㈱カーブスホールディングス 2020年8月期第2四半期決算説明資料

カーブス経営陣が発表したこの方針の凄みは、ほぼ全業種が影響を受けているこの特殊な市場環境にも関わらず、こういった特殊な状態に影響を受けていること、ビジネスモデルとしてそのリスクヘッジが行えていなかったことを「課題」に感じていることにある。

つまり全国2,000店舗まで拡大した基幹事業のビジネスモデルの「コアコンピタンス」を再度明確化した上で「マイナーチェンジ」ではなく「バージョンアップ」、根底からビジネスモデルを再考すると表明しているのだ。

こういったアプローチは、通常企業再建のように既存事業が立ち行かなくなった場合や、ベンチャービジネスなど環境変化の激しい市場へのアプローチに見られる手法(しばし「ピボット」とも呼ばれる)だ。このスライド一枚にカーブス経営陣の並々ならぬ今回の事態への対処に向けた「気迫」を感じることができる。

休会した会員の何%が通常会員に復帰し何%が退会していくのかなど、店舗完全再開時のKPIとして注視したい項目は多いが、そもそも「カーブス」がこれからどうなっていくのか、同社の「ベンチャースピリッツ」に今後も注目したい。

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