【決算解説】スポーツフィールド2020年12月期 第1四半期:課題の既卒領域をM&Aで補完

スポーツ人材(主に体育会系学生)に対する人材サービスを提供する株式会社スポーツフィールドは2019年12月に東証マザーズに上場、5/12に上場後初となる四半期決算を発表した。

1Qは増収減益、投資フェーズを継続

株式会社スポーツフィールド 2020年12月期 第1四半期 決算説明資料

同社の20/12期 1Q決算は売上高583百万円(前年同期比6.0%)、営業利益108百万円(▲28.7%)、経常利益108百万円(▲28.6%)となり増収減益の結果となった。売り上げのセグメントで見ると、主力の新卒者向けイベント事業は前年同期比で増収したものの、新卒人財紹介事業、既卒人財紹介事業については減収となった。

株式会社スポーツフィールド 2020年12月期 第1四半期 決算説明資料

セグメント単位では課題もあるが全体としては増収決算となった第1四半期の減益要因として人件費の増加が上げられる。詳細は後述するが、全国に営業拠点の拡充等営業面の強化を実施しており、それに伴い従業員数が167名→201名と34名増加している。また上場維持費用(管理部門の人件費等含む)が30百万円増加していることも要因として挙げられている。

逆に広告効果が向上し四半期で14百万円の増益要因となっている点はポジティブなトピックと言える。

株式会社スポーツフィールドはスポーツ「人財」への求職サービスを展開

同社が定義する「スポーツ人財」とは、過去、部活動等のスポーツ経験のある人材を指し、特に新卒については「体育会・クラブチーム等所属学生」を指している。

同社の事業構成を見ると、新卒領域と既卒(第2新卒)領域の2つに分かれる。新卒領域では、いわゆる「合同説明会」のような就活イベント事業「スポナビ」と新卒人材紹介事業「スポナビエージェント」の2つを展開している。また既卒領域では人材紹介事業「スポナビキャリア」を提供している。

売上構成比では、就活イベント事業の「スポナビ」が前期売上42.7%となっており主力事業、新卒人材紹介事業と既卒人材紹介事業もそれぞれ20%後半の構成とバランスの良い事業ポートフォリオが組まれている。

株式会社スポーツフィールド 成長可能性に関する説明資料

同社が対象としている「スポーツ人財」の特徴として、体育会やクラブチーム加入の学生は先輩や同期とのつながりが強いことが挙げられ(体育会学生の方がOB/OG訪問の経験が一般学生に比べ2倍以上も高いというデータも有る)、同社の営業戦略もそれに準じたものとなっている。

通常の人材紹介企業は求職者の募集をオンラインで行い、数回のカウンセリング(1回の時も有る)で求職企業に紹介していくのに対し、同社は大学の講義を開催したり過去の顧客学生から後輩の紹介を受けるなど、アナログなタッチポイントを増やし、その後のフォローアップも複数回行うなどして「感情移入」が双方可能なレベルまで高めるとしている。

株式会社スポーツフィールド 2020年12月期 第1四半期 決算説明資料

そのため、2020年12月期 第1四半期の人件費の増加の1要因として考えられるのが、既に全国11箇所あるオフィスに加え、6箇所のサテライトオフィスを設置した点だ。今後このタッチポイントを拡充するため更に拠点を増やしていくと見られる。

主力のイベント事業は新型コロナウイルスの影響に上手く対応し増収

同社主力事業である新卒向け就活イベント事業「スポナビ」は、新型コロナウイルス感染拡大を受けた政府からのイベント自粛要請をふまえ一部大型イベントの中止などを強いられるも、中小規模型イベントを代替実施し、販売枠(出展企業の出展料)は前年同期比14.7%増加の403百万円で着地した。

イベント参加人数は昨年同期比で減少するも、この環境下であれば仕方のない状況と思われる。また同社は5月開催予定の就活イベントを全てオンライン開催することを発表しており、主力事業のトーンダウンは避けられない状況だが、積極的な対策を講じている。

新卒人材紹介事業「スポナビエージェント」は企業の内定承諾のタイミング早期化で好調な出だし

新卒人材紹介事業は、前年同期比13百万円マイナスの売上高34百万円で着地した。減収しているものの、本セグメントはそこまで悪い状況とも言い切れない状況だ。

株式会社スポーツフィールド 2020年12月期 第1四半期 決算説明資料

企業の内定承諾時期は年々早まってきており、3年前は1-3月の内定率は10%台だったものが、前期に関しては30%にまで高まっており、売上の偏重時期に変化が起きている。今期(対象は2021年3月卒学生)も新型コロナウイルス感染拡大の影響で選考の遅れがあるも、前年同期比プラスの推移が維持されている。

株式会社スポーツフィールド 2020年12月期 第1四半期 決算説明資料

2021年3月卒業の学生の紹介人数は前年同期比59%とかなり好調な出だし、紹介企業も前年同期比28%と、就活早期化による売上偏重だけでなく同社の本セグメント事業の好調ぶりを感じられる。逆に年間の約50%の内定承諾(売上計上)がある時期は3年前も昨年も4-6月の第2四半期と変わりはなく、同社の繁忙期である第2四半期に新型コロナウイルスの影響が直撃しているため、来四半期以降に注視が必要だ。

既卒(第2新卒)の人材紹介事業「スポナビキャリア」は苦戦の様相

3セグメントの中で最も状況が芳しくないと感じられるのが、既卒領域の人材紹介事業だ。第1四半期の売上高は134百万円と前年同期比▲13百万円の減収着地となった。

開示された四半期推移を見ると、本セグメントの繁忙期は1-3月の第1四半期だが、減収着地且つ前年同期比マイナスとなっている。過去5四半期で前年同期比マイナスの四半期が3四半期も存在しているため、新型コロナウイルス感染拡大の影響だけではなく「スポナビキャリア」事業の成長性が鈍化していると見られる。

2019年12月期の第1四半期が「良すぎた」きらいもある。だが紹介企業のユニーク数は右肩上がりで伸びており企業の採用ニーズは高まっている。成長鈍化の主要因は求職側の仕入(転職希望者の確保)が思うように進捗していないと見て良いだろう。

同社に限らず、人材市場の売り手市場化(求人を出しても応募が集まらない、求職側が選ぶことができる)は年々高まっている。求職者の確保(仕入)の進捗が悪いのは同社に限らない課題ではあるが、それでも求職者の確保において同社のアナログな営業戦略がうまく機能していないとも見ることができる。

課題の既卒領域でM&Aを実施:スポーツ関連企業に特化した求人サイト「スポジョバ」を買収

本四半期において、同社はスポーツ関連企業に特化した求人サイト「スポジョバ」の買収を発表している。買収金額は非公開、対象事業の業績情報も売り手企業である株式会社スポーツマリオの意向により非開示となっている。

ただ、同社の開示によるとスポジョバの経営成績について「売上高および営業損失は、当社の 2019 年 12 月期の売上高の1%未満、営業利益の8%未満となります。※対象事業は 2019 年8月に開始されており、サービス開始に伴う諸経費により損失を計上しております。当社事業年度との比較のため、対象事業の 2019 年8月~12 月期と対照しております。」「資産から負債を除した金額は、当社 2019 年 12 月期の連結純資産額の2%未満となります。」「譲渡価額については非開示とさせていただきますが、譲受価額は、当社 2019 年 12 月期の連結純資産額の1%未満となります。」との記載がある。

記載から逆算して考えると、スポジョバ事業の経営成績は下記のような状況と推測される。

  • 売上高は19百万円以下で赤字
  • 営業損失は5百万円程度?(5ヶ月間)
  • スポジョバ事業BSの純資産は8.6百万円以下(おそらくほぼソフトウェア勘定でサイト構築費?)
  • 譲渡価格は4.3百万円以下

ここから考えられるのは、あまり事業としての価値は考えにくく(そもそも赤字事業でサービス開始から半年程度の求人サイト)売上は立っているもののおそらく初年度は通年で赤字決算となり、また事業拡大の投資を売り手であるスポーツマリオ社が捻出できない(もしくは投資できない)事情から事業売却に至ったとも想像できるため、かなり安い金額もしくは譲渡価格は備忘価格(1円)に近い価格とも推測できる。

「スポジョバ」買収の狙いは「アクハイヤー」か

M&Aの世界では度々「アクハイヤー(Acqui-hire)」というキーワードが使われる。これはM&Aにおいて事業やサービスではなく、優秀なスタッフ・チームを獲得することの意味で使われる。同社の「スポジョバ」買収もまさにこれではないだろうか。

株式会社スポーツフィールド 2020年12月期 第1四半期 決算説明資料

スポーツフィールド社の「スポジョバ」買収は、既卒領域の事業ポートフォリオ構築に一定の価値は有るし、開始5ヶ月の求人サイトではあるが初速でそれなりの売上がたっているとすれば今後の成長性も期待できる。

だが、成長鈍化している可能性がある「スポナビキャリア」事業を補うには少々心もとない内容だ。しかし先述した既卒領域の課題であった「求職者の確保」の要因は「同社のアナログな営業戦略がうまく機能してない」という面を考えると納得感を得られる。

同社の開示にも「SEOに強みを持つ事業開発チームも当社に入社し、既存事業も含めたSEOを底上げ」とある。つまり「アクハイヤー」によって、スポジョバの成長だけでなく「スポナビキャリア」における求職者獲得のSEO戦略等についてもテコ入れを行い、同社の得意とする「アナログな営業戦略」を補完する狙いが強いと見られる。

M&Aにおいて「シナジー」「補完」と述べるのは簡単だ。今後の同社の成長は、デジタルな事業開発チームとアナログな営業チームが混在する企業文化を作り上げられるか、新たに加わるチームが同社の企業文化にフィットできるか、PMIにかかっていると本誌は考察する。

FOLLOW US
BEHIND THE FITNESSの最新情報を受け取れます

FOLLOW US

BTFの最新情報をチェック



関連記事