コナミ・セントラル・ルネサンス、フィットネス業界大手3社の最新決算解説とフィットネス業界の新秩序

5月は経済誌・ビジネスメディアにとっては忙しい月となる。理由は上場企業で3月決算の会社が一斉に通期決算を開示するからだ。本稿を編集している5月14日だけで、TDnet(上場企業が適時開示を行うサイト)上に1,300件の適時開示が配信されている。

フィットネス業界に目を向けると、今週で業界BIG3の「コナミスポーツ」「セントラルスポーツ」「ルネサンス」が通期決算を開示している。1社1社に分けて記事を編集してもよいのだが、業界の歴史を作ってきたこの大手3社の決算を同時に考察することで、現在のフィットネス業界の姿を垣間見ることができる。

2020年3月期、各社の通期決算の状況

さっそく3社の決算を見ていきたい。各社、新型コロナウイルス感染拡大による休業の影響を少なからず受け、3社とも減収減益決算となっているが、減収幅は外出自粛が本格化した4月は織り込まれていないため限定的となっている。

コナミスポーツは、売上高589億8,400万円(昨対7.1%減)、営業利益は3,300万円(昨対98.5%減)と大幅な減益となっている。コナミスポーツの決算はコナミホールディングス株式会社の「スポーツ事業」セグメントとして開示されており、コナミスポーツ株式会社単体決算ではなく、コナミグループのスポーツ関連事業の連結決算となっている。(但し9割以上がコナミスポーツ株式会社の業績)

また同社の決算はIFRS(米国会計基準)で組まれており、セントラルスポーツ、ルネサンスの会計基準JGAAP(日本会計基準)と平等に比較するために、決算説明資料の「営業損益」の項目ではなく「セグメント損益」を比較に採用していることにご留意頂きたい。

セントラルスポーツは、売上高533億8,600万円(昨対1.6%減)、営業利益38億1,400万円(昨対10.0%減)。ルネサンスは、売上高450億4,900万円(昨対2.2%減)、営業利益32億6,700万円(昨対13.6%減)となっている。

両社ともコナミスポーツほどではないが、それでも減益幅は10%を超え、2・3月の新型コロナウイルスの影響を感じる結果となっており、4月以降に暗い影を落とす内容となった。

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コナミスポーツ 2020年3月期決算

コナミホールディングス株式会社 2020年3月期 決算発表資料

同社の決算短信によると、新型コロナウイルス感染拡大の影響以外では、パーソナルトレーニングプログラムの刷新、暗闇トレーニング「Club Style(クラブスタイル)」の開始、元競泳日本代表の社員がコーチとして直接指導する「少人数制スイミングスクール」を都内の2施設で開講するなど業態開発を進捗させている。また、受託事業では新規で3施設の業務受託運営を開始している。

また61億円規模の減損を行っており(セグメント損益には影響無し)、決算短信には「スポーツ事業において激化する競争環境の中で事業構造の体質強化に向けて有形固定資産及びのれんの減損損失6,445百万円を計上したものであります。」という説明がなされている。

貸借対照表を見ると今期でのれんが40億円近く減少しており61億円の内、半分以上はのれんの減損と推測される。おそらく施設もしくはM&A案件で買収した物件の減損を行ったものと思われ、来期以降の利益に対するのれん償却での減益プレッシャーを下げ、利益率向上を見込んだものと思われる。

ただスポーツ事業のセグメント損益98.5%減に対する詳細の開示は無いため、減益の要因は残念ながら不明だ。

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セントラルスポーツ 2020年3月期決算

セントラルスポーツ株式会社 2020年3月期 決算発表資料

セントラルスポーツは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で約8日間の全店舗休業を行い3月単月の売上高は79.5%(昨対比20.5%減)となった。しかし通期を通しては、フィットネス会員の減少をスクール会員が補う形で比較的順調な事業進捗だったと見ることができるが、同社の会員数は前期に続きマイナス推移となっており、この点については注視が必要だろう。

セントラルスポーツ株式会社 2020年3月期 決算発表資料

出退店については、通期で直営8店舗の新規出店、受託運営物件は6店舗増加した。退店は移転建替1店舗、退店は2店舗となった。この結果、直営179店舗、受託施設65店舗、提携店265店舗となり、全国509店舗のネットワークとなった。来期2021年3月期に出店を公表しているのは6店舗(直営3店舗、受託3店舗)となっている。

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ルネサンス 2020年3月期決算

株式会社ルネサンス 2020年3月期 決算説明資料

ルネサンスのトピックはなんと言ってもリハビリ特化型デイサービス「元氣ジム」事業だろう。売上の内訳を見ても、マイナス成長のセグメントが続く中、大きく業績を伸ばしているのが「その他売上高(元氣ジム等)」だ。

株式会社ルネサンス 2020年3月期 決算説明資料

元氣ジムは、理学療法士と運動指導員が常駐し、医学的視点からも安全で効率的なプログラムを提供するデイサービス業態で、直営だけでなくフランチャイズによる出店にも注力している。2020年3月期の出店実績としても、元氣ジムが9施設と多くを占めており同社の注力領域であるとわかる。

元氣ジムの顧客層は高齢者が多く、理学療法士もしくは運動指導員1人に対して5−10人程度がレッスンを行う形態で、同社がこれまで主力としてきたような大型のテナントでなく済む。

これと似たような顧客属性やトレーニング目的の業態を聞いたことはないだろうか。本誌の読者はすぐ思いつくかもしれない、カーブスだ。カーブスのこの数年の破竹の勢いと凄まじい業績を見ていると、元氣ジムにも否が応でも期待せざるを得ない。期待できるのは業態の特徴だけではない。

株式会社ルネサンス 2020年3月期 決算説明資料

なんとコロナ禍において「自治体から営業継続の要請」があり営業を継続しているというのだ。利用者は通常時の半分程度になっているということだが「リハビリ」という特性上ニーズを強く感じるトピックとなっている。

本誌は元氣ジムは値千金の業態だと考えている。カーブスと違い、理学療法士や運動指導員の確保が必要で、且つ安全面の配慮からフランチャイズオーナーを選ぶ必要があるものの、直営20%程度でフランチャイズの募集に今の10倍以上の規模で思い切って投資しても良いし、セグメントを独立させるだけではなく子会社化して、ベンチャー企業的な成長を志向しても良いのではないかと思う。いずれにしても3社の中で、極めて前向きなトピックがあったのはルネサンスだった。

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売上高1位はコナミスポーツ、営業利益1位はセントラルスポーツ、営業利益率1位はルネサンス

直近10年の売上高推移(単位:百万円)

直近10年の売上高推移を見ると、依然としてコナミスポーツが首位ではあるのだが、グラフの通り毎年減収を続けており来期については順位変動の可能性がある水準となっている。逆にセントラルスポーツ、ルネサンスは着実に業績を向上させ、首位コナミスポーツに肉薄する水準に迫っている。

直近10年の営業利益推移(単位:百万円)

次に営業利益の推移だが、営業利益においてはセントラルスポーツが7期連続で最高額を推移し首位の座を守っている。次点でルネサンスがセントラルスポーツに近い水準で推移している。一方コナミスポーツは精彩を欠く状態が続いている。

最後に営業利益率の推移だが、こちらはルネサンスが7期連続で首位の座を守っている。営業利益率には売上構成比の内容、店舗オペレーションの営業努力が大きく影響する。またコナミスポーツの2020年3月期に計上される減損処理はこの営業利益率の上昇を目論んだものとも推測される。

まとめると現在のフィットネス業界大手3社内での順位は、売上高1位はコナミスポーツ、営業利益1位はセントラルスポーツ、営業利益率1位はルネサンスという結果になった。営業利益、営業利益率については既に順位は入れ替わってしばらく経っており、売上高は数年内に変動がある可能性が高い。各社の業績に今後も注目していきたい。

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業界戦線異常あり!フィットネス業界の地殻変動

ここまでは各社の2020年3月期決算と直近10年の推移を見てきたが、これによってフィットネス業界の「今の姿」を少し垣間見ることができた。営業利益額、営業利益率で言えば既に首位はコナミスポーツではなくなっているが、売上高でみれば依然としてコナミスポーツが首位に君臨している。

フィットネスクラブ経営業者の実態調査(帝国データバンク)

フィットネス業界は市場成長を続けており短期的な決算を見ると各社成長を続けている。そのため業界順位について長年大きな変動は無く「1位はコナミ、2位以下は…分からない」もしくは「ライザップが1位じゃないの?」と曖昧な認識の読者もいるかもしれない。近年のフィットネス業界は本稿で紹介している大型フィットネスクラブ業態のコナミスポーツ、セントラルスポーツ、ルネサンスだけでなく、ライザップやカーブス、エニタイムといった新興ジム業態各社もしのぎを削っている。

フィットネス市場を見る上で、例えば売上高について言えば大型フィットネスクラブ業態各社は基本的に直営店がメインの業態であるため(FC店舗は低比率)売上高はほぼ店舗末端の売上高と近い水準にあるが、カーブスやエニタイムのようなフランチャイズを主体に店舗展開している企業はロイヤリティや加盟金などが売上高に計上されるため、ジムブランドの末端売上高(ジムブランドの実態の流通額)は企業業績に反映されない(実態より低い売上高で計上される)。その代わり出店コストを負担せずに済み、店舗運営の固定費が損益計算書に費用計上されないため高い利益率を計上できる。

㈱カーブスホールディングス 20/8期Q2決算説明資料

カーブスの末端売上であるチェーン売上高は前期で既に702億円に達しており、末端ベースの売上高ではフィットネス業界での圧倒的首位水準となっている。しかしカーブスホールディングスの売上高は280億円とチェーン売上高の40%程度の金額となっている。だが営業利益は56億円(営業利益率20%)となっており、これは圧倒的な業界首位の規模と水準だ。

先述したルネサンスの「元氣ジム」は、店舗設備や顧客ターゲットなどが類似しているため、この業態に近づける可能性が有り大型施設をメインに出店してきた企業が大きく変化する可能性がある。

RIZAPグループ株式会社 2019年3月期 決算説明会資料

またライザップも大きく成長しており、2019年3月期におけるRIZAP関連事業(セグメント)の売上高は413億円が計上されている。売上413億円は業界上位に食い込む水準だ。

但しここも注意が必要で、企業毎にセグメントに含める事業は様々で、例えばRIZAPの場合RIZAPゴルフやRIZAP関連商品の売上高も含まれており、純粋な会費収入がどの程度含まれているかは不透明だ。カーブスについても物販売上が145億円(プロテイン比率が95.7%)となっており、FC本部売上対比51.8%、チェーン売上対比20.7%と非会費収入が高い水準となっている。

これはフィットネス事業のビジネスモデルが多角化していることも意味している。業界の覇権を握る競争はますます熾烈を極めそうだ。

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