岐阜県大垣市に本社を置く株式会社ライトスピードソリューションズは、2004年の設立以降、地元企業を中心に顧客を抱えホームページやシステム開発などを行ってきた。
代表の打田氏は、2004年に自身が勤務していた企業のIT部門の事業譲渡を受け、ライトスピードソリューションズを設立。設立当時はWEBシステムの受託開発を主力事業にしていたという。
これまで地元に密着した開発会社として経営されてきた同社だが、今回フィットネスクラブ向けのSaaSサービス「ライスピ予約」をリリースする。その内容はスタジオレッスンにおける「席の予約」システムだ。
ライスピ予約は「スタジオレッスンの予約」ではなく、スタジオレッスンの「席」を予約するのだという。一体どういったサービスなのか、狙いや背景を同社の打田代表に聞いた。(聞き手はBEHIND THE FITNESS編集長 岩本)
キッカケはバスツアーのシステム開発
岩本「今回、スタジオレッスンの席予約システムを開発されているとお伺いしました。既存の予約システムでもできるレッスンへの参加予約ではなく、参加予約に加えて、どの場所に座るか『席』を予約するシステムということですか」
打田「そうです、どこでレッスンを受けたいのか『席』を指定できます」
岩本「かなり深いニーズを見据えられている気もしますが・・・」
打田「確かにニッチかもしれません(笑)」
岩本「ニーズに対する気付きはどういった経緯だったのか気になりますね(笑)御社は以前からフィットネス業界とのお取引が多かったのでしょうか」
打田「いえ、弊社のお取引先には観光業の会社さんが多いんですよ」
岩本「観光ですか」

打田「そうなんです。弊社は観光に特化したCMS(サイトシステム)をOEM開発していて、現在は全国の自治体とか観光協会に約30件ほど提供しています。累計だと100件近い導入数になりますね」
岩本「観光業界だとコロナ禍は大変だったんじゃないですか」
打田「それが逆だったんです。観光業界はコロナ明けを見越してサイトリニューアルの依頼が増えました。政府としてもGo To トラベルなど観光産業に対する支援などがありましたから」
岩本「それだけ既存事業が好調だと、フィットネス業界向けの新規事業を立ち上げるモチベーションはどこにあったのでしょう」
打田「経営者の立場としては特定の業種に依存しすぎるのは少し怖いと思っていまして、新規事業は常に模索していたんです。もちろん観光業以外に、地元企業さんからお仕事を頂いたりもするんですけども」
岩本「なにかキッカケがあったのでしょうか」
打田「キッカケは、2017年に『おんな城主 直虎 大河ドラマ館』という施設が浜松にオープンしまして、そこに向けたバスツアーが組まれたんですね。その時に大手旅行代理店さんから『バスの予約システムを作ってくれ』と依頼されたんです」
岩本「作ったんですか?」
打田「作りました。その後、お取引先様との商談中に『こんな予約システム作ったんですよ』とお話していたら『エステ用にも作れないか?』と言われまして。結局エステ店向けにも作ったんですね」
岩本「なるほど」
打田「その後口コミやご紹介で数珠つなぎ的にお話がきまして、結局バスツアー、エステ、美容院、フィットネスなど色々な業種に予約システムを作って導入していったんです」
岩本「この流れでフィットネスが出てくるんですね」
打田「そうなんです」
岩本「この時はまだ一般的な『予約システム』の開発依頼だったんですか」
打田「フィットネスクラブ以外のお客様は普通の予約システムの開発依頼だったんですが、フィットネスクラブさんから頂いたのが『席予約』の開発依頼だったんです」
岩本「フィットネス向けが初だったんですね」
打田「そうですね。ご依頼いただいたのは、東海地方を中心に店舗展開をしている大手スポーツクラブさんで、暗闇フィットネスの席予約システムを作りました。今も7店舗で稼働しています」

岩本「まだ受託開発的な納品だったんですよね」
打田「はい、この時点では既に稼働している管理システムとの連携などを考慮して個別に開発していました。店舗ごとに細かい仕様が違うので、その店舗の運営で最適な形になるようにカスタマイズしましたね」
岩本「そこから標準化(SaaS化)に至ったのはどういった流れだったんですか」
打田「先ほどお話しした大手スポーツクラブの社長さんから『システムを標準化して(SaaS化して)展開しないか』と逆にご提案をいただきまして」
岩本「意外な展開ですね(笑)」
打田「はい(笑)確かに標準化すれば、もっとたくさんのフィットネスクラブさんにご利用頂けるかもしれないし、お客様の負担するコストも下がりますから。このご提案が標準化を目指すキッカケになりましたね」
「命をかけて」「お金を払っても」前列の席を予約したいニーズを発見
岩本「システムを導入されていたからこそ、お客様のニーズが分かったわけですね」
打田「そうですね。ただ明確にエンドユーザーさんの熱量というかニーズを強く感じたのは、席予約システムを導入させていただいた京都のフィットネスクラブさんで起きた事件がキッカケですね」
岩本「事件ですか」
打田「はい、そこのフィットネスクラブさんには人気のインストラクターの方が在籍されていたんですね。それで初めてシステムを稼働させた日、昼の12時に席予約の受付を開始したんですけども。そのインストラクターさんの人気が高すぎてアクセスが集中しまして、サーバーが落ちてしまったんですよね」
岩本「1店舗ですよね?スタジオレッスンの予約でサーバーが落ちたんですか?」
打田「そうです、正直あなどっていました。きっと会員さんは怒っているだろうと。すぐにサーバーを増強して対応したんですけども」
岩本「驚きです・・・」
打田「受託開発だと取引先、ここで言えばフィットネスクラブ運営側のニーズや目的はよく理解できるわけですけど、この経験でシステムを利用されるエンドユーザーさんの熱量・ニーズを直に感じたわけです」

岩本「確かに情報として聞くのと、直に感じるのは違いますよね」
打田「こんなにスタジオプログラムに参加される方の熱量が高いのかと実感しましたね。そこで大手スポーツクラブの社長さんに色々とお話を伺ったのですが『命をかけて先生の前の席をとっている』お客様もいらっしゃると。とにかく競争率が高くても前の方に座りたい、先生の前でやりたいんだと」
岩本「凄まじい熱量ですね・・・」
打田「自分の好きな先生のレッスンにわざわざ参加するのに『どんな席になるか分からない』『参加してみたら後ろの方だった』なんて嫌ですよね。今後こうしたニーズを抱える利用者さんがどんどん増えると思ったんです」
岩本「確かに最近はSNSで全国にファンを抱えるインストラクターの方も多いですよね」
打田「だから今回サービス化する上で、他の予約サービスには無いキャンセル待ちの機能も実装したんですよ」
岩本「キャンセル待ちですか」
打田「はい。『絶対この席でレッスンを受けたい』『この席しか嫌』というエンドユーザーさんのために、指定した席にキャンセルが出た時だけ予約が入る機能です」
岩本「まさに『命をかけている』方のための機能ですね」
打田「ニーズがどこまであるのか分かりませんけどね(笑)でも実際にお話を伺った利用者さんの熱量はこれを求めていると思うんです」
岩本「大切な考え方ですよね」
打田「もちろん、参加したいクラスにキャンセルが出たらメールで通知する機能や、どの席でも良いから空いたら予約が入る機能といった通常のキャンセル機能もあるんですよ」
岩本「御社がエンドユーザーさんのニーズを明確に把握しているからこそ『キャンセル待ち』が発生する前提で開発されているわけですね」
予約システムではなく「導入したら売上利益が増えるツール」
岩本「戦略面についてもお聞きしたいのですが、既存の予約システムと差別化するという視点では、ライスピ予約をどう訴求されていくんですか」
打田「利用者さん、会員さんに向けて一番分かりやすい点は、クラスを予約するのではなく、そのクラスの中で『席』を予約できるということですね」
岩本「そうですね」
打田「導入店舗さんに向けての訴求を考える上で、弊社が最も意識しているのは『ビジネスモデル・アップセルのツールを販売する』ということなんです」
岩本「・・・導入したら『儲かる』ということですか」
打田「はい。例えばですね、最初に席予約を導入させていただいたフィットネスクラブさんでは、会員さんが席予約をするためには、月会費とは別に月1,000円のオプション料金を店舗に払う必要があるんですね」
岩本「なるほど」
打田「実際、今も数百人がこのオプションを払って席予約をご利用されているんです」
岩本「そうなんですか」
打田「だから、席予約をするために300人がオプション料金をお支払い頂ければ、300人×月額1,000円で月に30万円、年間だと360万円、導入いただいた店舗の売上が増えるわけです」
岩本「実績を元にした現実的なシュミレーションなんですね」
打田「そうです。単純計算ですけど、10店舗でこれを実現すれば年間の利益を3,000万以上も増やすことが可能です」
岩本「確かに」
打田「だからライスピ予約の本質というのは、既存の予約システムの訴求ポイントである『システム化』や『効率化』ということではなく、『導入したら売上が上がる』ことなんです」
岩本「ファンビジネスのアップセルツールに近いわけですね」
打田「そうなんです、だから弊社は予約システム市場で高いシェアを狙う!という意気込みではないんです。スタジオレッスンをやられているフィットネスクラブさんのアップセルにご協力できればと」
岩本「御社の事業内容から考えると、既に導入されている会員管理システムや基幹システムとの連携についても安心できそうですね」
打田「そうですね、これまで納品時に既存システムとの連携は散々やりましたから(笑)」

岩本「そうですよね(笑)具体的にはどういった連携機能を考えられているんでしょうか」
打田「1つは標準的なAPI連携の仕様を策定していく予定です。あとは会員管理のシステムが入っているところに対して導入しやすい形で導入すること。例えばcsvでの会員データの取り込みなんかも検討しています」
岩本「ライスピ予約の料金プランは決まっているんですか?」
打田「はい、料金プランはベーシックプランとサブスクプランの2つがあって、違いはライスピ予約上で決済ができるかどうかです」
岩本「店舗の端末で決済したり、既存のシステムで決済するフィットネスクラブなら、決済機能の無いベーシックプランで問題ないということですか」
打田「その通りです。既存の導入先はベーシックプランで全然問題なく運用できていますね」
岩本「なるほど」
打田「ベーシックプランは、200名までのご利用で月額5,000円。それ以降は100人につき月額費用が2,500円ずつ増える料金体系ですね」
岩本「じゃあ利用する会員さんが500人だと月額12,500円」
打田「そうです。決済機能付きのサブスクプランは200名までのご利用で月額10,000円。それ以降は100人につき月額費が5,000円ずつ増えます。決済された金額も店舗側に直接振り込まれます。これだけですね。」

岩本「それだけですか?売上や決済金額に応じた従量課金も無し?」
打田「そうです」
岩本「もっと初期費用ウン十万円、月額費用も決済金額の数十パーセントみたいなイメージをしていました」
打田「先ほど申し上げたように、ライスピ予約は業務を効率化するための『予約システム』として導入してもらうのではなくて『導入したら儲かる』ツールとして提供したいので」
岩本「徹底してますね」
打田「既存の予約システムだと予約数の制限があったり、決済金額に応じて従量課金があったりするわけですけども、弊社の場合は、ライスピ予約を利用してくれる会員さん・エンドユーザーさんが増えれば導入店舗が儲かるというビジネスモデルなので、こういう料金プランになっています」
インストラクターを「スター」にする会社
岩本「インストラクターは会員さんを店舗につなぎとめる役割も果たしてますよね」
打田「人気のインストラクターさんは特にそうですよね。会員のLTVを底上げして、退会率を抑止する重要な役割だと言っても過言ではないと思っています」
岩本「スタジオレッスンを目的に入会される会員さんも多いですからね」
打田「ライスピ予約では、インストラクターさんの集客率とか予約率を出せるようにもなっているんですね」
岩本「人事評価にも使えるわけですか」
打田「はい。導入先では実際にインストラクターさんの査定にもご利用されていますね」
岩本「インストラクターさんの売上も上がるわけですよね」
打田「仰るとおりで、先ほど店舗の売上が上がると言いましたが、具体的に言えばスタジオレッスンの売上が上がるんです。集客率とか予約率からどのインストラクターさんが貢献しているかも分かるようになります」
岩本「インストラクターさんの評価がより上がると」
打田「それまで評価されていなかったインストラクターさんの貢献度が、実は高かったということも分かったりします」
岩本「確かにそうですね」
打田「インストラクターさんには個人事業主の方も多いですし、分かりやすい数字の指標があるのは営業上も良いことだと思います。社員インストラクターさんの査定にとってもプラスの効果があると思うんですよね」
岩本「先ほどお聞きした『キャンセル待ち』の機能も機会損失を防いでいますよね」
打田「その通りです。エンドユーザーさんのファン心理を汲んだ機能でもあるんですけど、それとは別にインストラクターさんが利益を取りこぼさないように少しでも貢献できればと」

岩本「本当に『予約システム』ではなく『アップセルのツール』というコンセプトが一貫していますよね」
打田「ありがとうございます、それが最も伝えたいことなので、ちゃんと伝わって安心しています(笑)」
岩本「御社はインストラクターさんをエンパワーメントする企業になるわけですね」
打田「その通りです。これまでもインストラクターさんがフィットネスクラブの経営において重要な存在であったわけですが、ライスピ予約でそれを今よりもさらに強くできれば。言うなればインストラクターさんがスターになるお手伝いをできればと思っています」
岩本「サービス開始はいつからですか?」
打田「今リリースに向けて鋭意開発中なんですが、7月末か8月初旬を目処に提供を開始できればと思っています」
岩本「デモ版なんかはもう触れるんですか」
打田「8月2日〜4日のスポルテックに出展するので、まずはそこでデモを触って頂ける予定です」
岩本「もしかして今はリリース前の一番忙しいタイミングですか(笑)」
打田「はい(笑)良いサービスとしてリリースできるように頑張ります」
ライスピ予約の資料請求・お問い合わせはこちらから
ライスピ予約のサービスサイトは現在準備中のため、お見積・ご商談依頼などは下記からお気軽にご連絡ください。
「ライスピ予約」お問い合わせフォーム
https://form.asana.com/?k=JSJkX1Dfd5tZEfmpayUlvw&d=1151733756925434
同社は2023年8月2日〜4日に東京で開催されるスポルテックに「ライスピ予約」を出展致します。当日はデモ版を体験いただけるほか、スタッフによるご説明・ご商談も可能です。

