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2024年4月16日 分析と解説

【解説】24/7の過半数をNOVA親会社がTOB、買収後はフランチャイズでの再成長を模索か

パーソナルジム「24/7Workout」を運営する株式会社トゥエンティーフォーセブンは、2024年4月15日、駅前留学NOVAなどを運営するNOVAホールディングス株式会社の筆頭株主「いなよしキャピタルパートナーズ株式会社」による公開買付に賛同する旨を発表した。

今回の公開買付では、株式会社トゥエンティーフォーセブンの筆頭株主で代表取締役社長である小島礼大氏が、いなよしキャピタルパートナーズとの間で公開買付応募契約を締結。いなよしキャピタルパートナーズは、小島氏が保有する株式 3,843,500株(58.33%)のうち、3,690,200株(56.00%)を1株350円(総額は約12.9億円)で取得する。

なおトゥエンティーフォーセブン取締役会は、小島氏以外の株主に対しては今回の公開買付への応募は推奨せず、応募するか否かについては各株主の判断に委ねるとしている。

株式会社トゥエンティーフォーセブン上場時からの株価推移|画像:Google Finance

今回の公開買付により、いなよしキャピタルパートナーズは、トゥエンティーフォーセブン発行済株式の56%を保有することになり、トゥエンティーフォーセブンは同社の連結子会社となる。なお、本公開買付後も上場廃止はせず、東京証券取引所グロース市場での上場を維持する。

公開買付後のトゥエンティーフォーセブン経営体制については、現代表取締役社長の小島氏はそのまま代表取締役として残り、いなよしキャピタルパートナーズ代表取締役の稲吉正樹氏が代表取締役会長に就任する予定となっている。小島氏は本公開買付実施後、少なくとも2年間は代表取締役としての業務を遂行することについて合意している。

トゥエンティーフォーセブンの業績は4期連続で減収

株式会社トゥエンティーフォーセブンは、健康関連商品の販売等を行う目的で2007年12月に設立。2012年10月から現在の主力事業であるパーソナルジム「24/7Workout」事業を開始、パーソナルジム市場の成長と共に業績を伸長させ、2019年11月に東京証券取引所マザーズ市場に上場した。(2022年4月の東京証券取引所 新市場区分移行に伴い、現在は東京証券取引所グロース市場に上場)

2024年4月15日時点で、24/7Workoutは全国89店舗(北海道1店舗、東北1店舗、関東60店舗、中部8店舗、近畿11店舗、中国2店舗、九州6店舗)を展開。2023年4月には新業態の女性専用セミパーソナルジム「FITTERIA」を出店し、当該店舗も含め合計90店舗を運営している。

画像|株式会社トゥエンティーフォーセブンのIR資料からBEHIND THE FITNESS編集部が作成

一方で、業績はコロナ禍と同時期から低迷。最盛期の2019年11月期にあった売上高76.9億円が、4期連続で減収し、直近の2023年11月期には売上高32.1億円まで縮小。また、利益面でも2020年11月期に赤字転落し、2023年11月期までの4期間、黒字転換できずにいる。

当初はコロナ禍での投資計画や既存資産価値の見直しによる減損として特別損失を計上するなどで大きな赤字決算を計上していたが、直近でも収支状況は改善せず、現在では構造的な要因による赤字として、店舗の統廃合やコスト削減・効率化、「24/7 English」の事業譲渡(2023年9月に実施)などを行い構造改革に取り組んでいる。

また財務体質についても、2019年11月末にあった流動資産37.2億円が2023年11月末には8.9億円に縮小、純資産も36.6億円が1.2億円まで減少している。同社は無借金のため財務キャッシュフローのマイナスプレッシャーは少ないものの、赤字によって営業活動のキャッシュフローのマイナスが続いているため、漸減傾向が続いている。

24年11月期 第1四半期は減収赤字拡大・業績予想を下方修正

今回の公開買付と同時に発表された、2024年11月期 第1四半期(2023年12月〜2024年2月)決算を見ても依然として業績は厳しく、売上は昨対比で24.9%減少の売上6.1億円、営業利益▲1.9億円、経常利益▲2.0億円となり、減収赤字拡大という着地となっている。

株式会社トゥエンティーフォーセブン|2024年11月期 第1四半期決算短信

当四半期は、テレビCMを含めた広告宣伝を強化。同社の開示資料によると「CM放映エリアでの認知度向上による一定の集客効果があった」ものの、CM未放送エリアでは当初計画していた集客は未達。並行して固定費・変動費の削減・最適化を推進するも、減収分を吸収するに至らず、赤字拡大となった。

第1四半期末の2024年2月末の現預金残高は5.7億円、流動資産7.4億円、純資産0.3億円となっており、資金繰りの不安は低いものの、債務超過スレスレの水準に至っており、借入でなく資本増強による財務強化の必要性が再燃しているように見える。

株式会社トゥエンティーフォーセブン|通期業績予想の修正に関するお知らせ

また第1四半期決算の結果を受け今期の着地予想も見直し。公開買付の発表と同時に2024年11月期の業績予想の修正も発表しており、売上(予想)は6億円減少(17.6%減)の28億円、営業利益(予想)は1.3億円減少の▲2.9億円、経常利益は1.3億円減少の▲2.9億円、当期純利益は1.1億円減少の▲3.3億円の予想としている。

この業績予想を見ると、資本増強することなく業績予想の通りに着地すると、期末には債務超過となり上場維持基準にも抵触することとなるため、資本増強・資本政策の見直しの必然性は明確であり、今回の公開買付は、このあたりのテコ入れの「触り」であると見ることができるだろう。

NOVAホールディングスは事業多角化、FCで店舗数は2,000超え

今回の公開買付実施後、トゥエンティーフォーセブンの親会社となる「いなよしキャピタルパートナーズ」代表の稲吉正樹氏(100%株主)は、1994年に学習塾「がんばる学園」を創業し、1995年4月に有限会社がんばる学園を設立。その後、学習塾のフランチャイズ展開を中心に拡大、次に飲食業を買収しフランチャイズ展開でそれらの事業も拡大させた。

2007年11月には、NOVAの経営破綻を受けて同社の再建スポンサーとなり、2007年11月に株式会社ノヴァから英会話教室の運営事業を取得。2009年にリーマンショックが発生したことで、当時NOVAを運営していた株式会社ジー・コミュニケーションの全株式を日本振興銀行株式会社の関係会社等へ売却したが、売却先の日本振興銀行が経営破綻したことを受け、2010年に当該教育事業と運営会社株式を買い戻した。

買い戻した会社が2013年9月に社名変更し、現社名の「NOVAホールディングス株式会社」となっている。いなよしキャピタルパートナーズは、このNOVAホールディングスの発行済株式 78.79%を保有する筆頭株主で、公開買付が成立するとトゥエンティーフォーセブンはNOVAホールディングスの兄弟会社となる。

画像:NOVAホールディングスHP|https://nova-holdings.jp/about/business.html

現在、NOVAホールディングスは、英会話事業でも「駅前留学NOVA」だけでなく「NOVAバイリンガルKIDS」「Gabaマンツーマン英会話」など複数のブランドを展開している。また学習塾事業では、全国1,013校を展開している「ITTO個別指導学院」や「がんばる学園」「TOPS」「みやび個別指導学院」「すみれ個別指導学院」などを展開、そのほか英語教育に力を入れた保育園、留学事業、プロスポーツチーム「広島ドラゴンフライズ」サッカースクール「ドルトムント・サッカーアカデミー」などのスポーツ事業、通訳・翻訳事業などのBtoB事業など多岐にわたる事業を展開している。

代表の稲吉氏がこれまで歩んできた過程にもあるように、NOVAホールディングスはフランチャイズによる展開を強みとした企業グループとなっており、現在FC本部としてフランチャイズ展開している業態は「駅前留学NOVA」「NOVAバイリンガルKIDS」「ITTO個別指導学院」「がんばる学園」「TOPS」「みやび個別指導学院」「すみれ個別指導学院」などで、その合計は2,000店舗を超える。

24/7Workout 今後はフランチャイズによる再成長を志向?

今回の公開買付では、いなよしキャピタルパートナーズが、トゥエンティーフォーセブン代表の小島氏が保有する株式 3,843,500株(58.33%)のうち3,690,200株(56.00%)を取得した後、329,500株(5.00%)をNOVAホールディングスに対して本公開買付価格と同額にて譲渡を行うことを予定している。

そのため、公開買付後はトゥエンティーフォーセブンの51%をいなよしキャピタルパートナーズが保有、5%をNOVAホールディングスが保有する体制で新たな成長戦略へ舵を切る。

※小島氏以外の株式をいなよしCPが取得しない場合の想定|画像:BEHIND THE FITNESS編集部 作成

NOVAホールディングスが5%を保有する狙いとして、開示資料にはNOVAグループが保有するノウハウ・アセットをトゥエンティーフォーセブンと共有するためとしており、店舗開発・マーケティングノウハウの提供による出店加速、NOVAとの共同出店やNOVA顧客の24/7Workoutへの送客といったことが開示資料に記載されている。

特にフランチャイズによる成長戦略の模索ついては多く記載があり、NOVAグループがこれまで培ったフランチャイズによる店舗展開ノウハウをトゥエンティーフォーセブンに提供。フランチャイズによる24/7Workoutの出店加速、NOVAグループのフランチャイズ加盟先に対して24/7Workoutへの加盟を斡旋するなどして、同社の立て直しを検討しているようだ。

一方でトゥエンティーフォーセブンは、これまでフランチャイズによる出店も一部行ってきたが、基本的には「自社運営へのこだわり」を強く打ち出してきており、FC店舗は全体の10%前後にとどまっていた。

画像:株式会社トゥエンティーフォーセブン 2019年11月期 決算説明資料

同社の2019年11月期の決算説明資料には「FC店舗による一般的な拡大戦略ではなく、直営店のメリットを生かし高い経営効率を維持」と記載があり、この時点では「さらに直営化比率引き上げを進める」としていた。

今回の公開買付によって同社は方針を一変させる可能性が高く、これまで注力してこなかったフランチャイズによる出店戦略が、低迷していた同社立て直しの起爆剤となるか注目が集まるだろう。

株式会社トゥエンティーフォーセブン
https://247group.co.jp/