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2024年4月18日 分析と解説

ジム横断サービス「ナップワン」がサービス終了、大手と提携拡大もコロナ禍で厳しい経営環境

画像|https://www.nupp1.io/

ナップワン株式会社は、フィットネス向けシェアリングサービス「Nupp1(ナップワン)」を2024年4月30日をもってサービス終了すると発表した。3月27日時点で新規会員の受付を停止しており、4月30日にストアからアプリの削除・すべての機能が利用停止となる。

同社のサービス終了のお知らせには「2019年5月22日(水)よりサービスを開始してから、より良いサービスを提供できるよう日々尽力して参りましたが、今後お客様にご満足いただけるサービスの提供が困難であるという結論に至りましたため、サービスの終了を決定いたしました。」と記載されている。

ナップワンは、2019年5月に「Nupp1 Fit(ナップワンフィット)」としてサービス開始。アプリをダウンロード・無料会員登録をすることで、入会金・月額料金不要で提携フィットネスジムを1分単位で利用できるサービス。ジムごとの会員登録や事前予約などの手続きも不要で、初めて利用するジムも店舗に設置されたQRコードスキャンをスキャンすることで利用ができる。

画像:サービスリリース時のプレスリリースより|https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000041914.html

サービス開始当初は東京都内を中心に提携フィットネスジムを開拓し、株式会社LDH martial arts(LDHグループ)が運営する「EXFIGHT(エクスファイト)」をはじめとした18社19箇所を提携フィットネスとしてサービスを開始した。その後、スポーツクラブNASやティップネス、アクトス、メガロス、JOYFIT24、ルネサンスなど大手フィットネスクラブも参画、提携フィットネスジムのエリアは東京・神奈川・埼玉・千葉で300超まで広がっていた。

運営会社のナップワン株式会社は、サービス開始から10ヶ月後の2020年3月に、株式会社ジェネシア・ベンチャーズ、みずほキャピタル株式会社、三菱UFJキャピタル株式会社、児玉昇司氏、正林真之氏など個人投資家を引受先とする1億円の第三者割当増資を実施。この時点で施設数は166施設まで伸びており、広告宣伝費を一切かけない状態で約2万人にダウンロードされていると発表していた。

ジム横断サービスは「コロナ禍前」にビジネストレンド化

ナップワンのようなフィットネスジム横断型サービスは、2013年にアメリカで設立された「ClassPass」が走りと見られており、ClassPassは定額で複数のフィットネスクラブ・プログラムに通い放題というサブスクサービスで人気を博した。

しかし、2016年には「通い放題プランのビジネスモデルに問題がある」として、当初人気を博した複数ジムの通い放題サービスを実質的に廃止にした経緯もある。その際、同一ジムの月間利用回数に上限を設け、利用回数限定プランを導入、月額料金を2倍以上に値上げするなどし、この手のビジネスモデル成立の難しさについても知られることとなった。

現在のClassPass月額料金(ロケーションNewYorkの場合)

ただClassPassは、そういった試行錯誤を乗り越え、2020年1月にはシリーズEで約300億円の資金調達を実施。時価総額が10億ドルを超えユニコーン企業になっている。

また2012年にブラジルで設立された「Gympass」も先行企業の1つで、Gympassは法人向けに提携フィットネスジムの利用を月額定額制で提供。2019年6月にはソフトバンクなどから3億ドルを調達し、ClassPassと共に日本でも知られる存在になった。2020年6月時点で、Gympassの会員企業数は2000社以上、提携フィットネスジムは5万件超、提携ウェルネスアプリは60個、2000人以上のパーソナルトレーナーが登録、ブラジルを含め世界14カ国で展開するなど拡大の一途だった。

国内では、三菱地所の社内ベンチャー「GYYM」が類似サービスを展開。GYYMは2020年1月にサービスをプレローンチ、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けサービスを一時休止していたが、6月にサービスを再開、2020年10月5日に正式ローンチした。サービス休止した2ヶ月を除く約8ヶ月で5,000人の会員を獲得。2020年10月当時、提携施設数も暗闇ボクシングスタジオ「b-monster」や、RIZAPグループの「EXPA」、ホットヨガスタジオ大手の「loIve」、MTGが運営する「SIXPAD STATION」など人気の高い業態を中心に122施設まで増加していた。

GYYMには現在、提携施設数が400施設、2,000以上のプログラムが掲載されており、ジム利用だけでなくプログラムから通いたい施設を選ぶ体験の訴求も目立ち、ClassPassに近いサービス内容へと変化しているようにも見える。

国内では先駆け的な存在だったが、コロナ禍で経営環境が悪化

国内でもジム横断型サービスが同時期に複数ローンチされたことで、先行する海外サービスと共に注目が集まり、ナップワンはその先駆け的な存在でもあった。

しかし、開示されているナップワン社の決算公告を見るとその実態は決して楽なものではなく、2020年4月期は約1億円の赤字、21年4月期が3,571万円の赤字、22年4月期3,498万円の赤字、23年4月期4,110万円の赤字と黒字化に至っていなかった。

決算公告の内容からの推察すると、20年3月の増資後も、21年4月期に約1,000万円の借入、22年4月期には約5,000万円の新株予約権を発行するなどして資金調達を行いつつ事業を継続。2020年8月には法人向けに「Nupp1 for Business β」の提供を開始し、Gympass的なアプローチも模索していた。

ただ、ナップワンのサービス開始は2019年5月で、2020年4月7日に1回目の新型コロナウイルス感染拡大に対する緊急事態宣言が発令されたことを考えると、同社にとっては厳しい経営環境だったこともうかがえる。現在のフィットネス業界は、コロナ禍から回復しコロナ前の日常を取り戻しつつある。今後、国内でフィットネス横断サービスが成立し消費者の選択肢として根付くのか改めて注目が集まるだろう。

そして、厳しい経営環境ながら一定規模までサービスを拡大させたナップワン経営陣の「ナイスチャレンジ」を称賛し、「ネクストチャレンジ」にエールを送りたい。

ナップワン
https://www.nupp1.io/