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2020年10月6日 分析と解説

三菱地所発フィットネスベンチャー「GYYM」が急伸中、会員5,000名超・提携施設は120以上に

https://gyym.jp/

昨今、複数のフィットネスクラブ・ジムを1つのサービスで横断して利用できるサービスが日本でも盛り上がりを見せている。

この横断的なビジネスモデルは、元祖とも言える米「ClassPsss」が急成長し今やユニコーンとなったことが盛り上がりの背景にある。しかし数年前にClassPassはジムへ支払う手数料負担がバランスせずサービス内容の見直しを迫られた他、ClassPassを模したベトナム「WeFit」はシリーズAで100万米ドルを調達していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で資金繰りがショートし破産を申請した。

消費者の立場からすれば、ニーズが多様化すると共にフィットネスクラブや業態の選択肢が増加している中で「1つに選ぶ」ことの難易度と不便さが高まってきていると言える。ClassPassモデルの成立難易度の高さの反面、各施設で会員登録をすることなく(月会費を払うことなく)都度サービスを通して料金を支払って利用できるサービスのニーズが高まることは納得できる。

三菱地所発のフィットネスベンチャー「GYYM」

こうした環境下で三菱地所はGYYM株式会社(三菱地所100%子会社)を設立。フィットネスクラブを横断的に利用できるサービス「GYYM」を2020年1月にプレローンチした。同事業は三菱地所の「新事業提案制度」より生まれた事業だ。

フィットネス横断利用サービスGYYMの使い方ガイド
GYYM利用方法(同社プレスリリースより)

ユーザーはGYYM上で、ジムの検索・予約・決済・都度利用が可能。各施設での入会手続き等は原則一切不要で「月会費を無駄にすることなく」ジムを利用できる。フィットネスクラブ側はこれまで獲得できなかった会員の獲得機会を得ることができる。

興味深いのは、GYYMがダイナミックプライシングを導入していることだ。こういったサービスは通常「ジムAは利用1回●円」といったように画一的に決まっているものだが、セッションの予約状況や施設の稼働状況によって価格を変動させ(ダイナミックプライシング)稼働率向上や収益の最大化を実現できる。

フィットネスクラブ側が独自にダイナミックプライシングを導入できないとしても、GYYMを通すことで予約や施設の稼働を最大化することができ、また「前から気になっていたから1回行ってみよう」といったモチベーションのライトユーザーを将来の会員候補として獲得できる。

「GYYM」は既に会員5,000人を獲得、提携施設数は122施設まで拡大

GYYMは2020年1月のプレローンチ後すぐ、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けサービスを一時休止していたが、6月にサービス再開、10月5日に正式ローンチとなった。

サービス休止の2ヶ月を除く約8ヶ月でGYYMは5,000人の会員を獲得。提携施設数も暗闇ボクシングスタジオ「b-monster」やRIZAPグループの「EXPA」、ホットヨガスタジオ大手の「loIve」、MTGが運営する「SIXPAD STATION」など人気の高い業態を中心に122施設まで増加している。

GYYMへの加盟を決めたメガロス
GYYMへの加盟を決めたメガロス(同社プレスリリースより)

直近では9月15日から大手総合スポーツクラブの「メガロス」関東圏全店舗(38施設)との提携を開始、12月末まで「メガロス」の全プログラムを1,000pt(=1,000円相当)で利用できるキャンペーンも行う。

現在GYYMは、関東圏(東京・埼玉・神奈川・千葉)で提供されているが、こうした大手との提携を考えれば、全国への展開も時間の問題だろう。

「GYYM」は三菱地所グループとのシナジーをフル活用

GYYMは三菱地所100%子会社として運営されている。同社はプレスリリースでも触れているが、三菱地所グループの顧客ストックへのアプローチを徹底して行っている。

三菱地所グループ関連リンクのキャプチャ
三菱地所グループの一例
https://www.mec.co.jp/

例えば、丸の内エリア就業者約28万人をターゲットにした「デジタルサイネージ」を活用した広告・認知訴求、三菱地所のレジデンスクラブ会員(約60万世帯)をターゲットにした会報誌等での利用促進や付帯サービスの導入といった具合だ。これ以外にも数多くあるが、三菱地所グループとのシナジーは計り知れない。

米「ClassPass」やベトナム「WeFit」の事例のように、ClassPassモデルには初期投資を含め一定の資金が必要なビジネスモデルと言える。また黒字化するまでの難易度も低くないと思われる。

GYYM社の資本金は1億円。三菱地所グループとのシナジーや人的リソース、キャッシュポジションの強さを活かし一気にサービスを立ち上げようとする姿勢が見える。同社はこの分野のメインプレイヤーになれる可能性を秘めている。

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