オンラインのフィットネス業界誌

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2020年9月11日 分析と解説

「男性用かつら」から「卓球」へ、スヴェンソングループのタクティブがフィットネス業界に参入

Photo by Wan San Yip on Unsplash

卓球スクール国内最大手のTACTIVE(タクティブ)は、卓球を軸にしたフィットネス業態「ピンポンFIT」を開始すると発表した。

ピンポンFITは、タクティブ立川店でスタートする予定。入会費3,000円、月額会費6,980円で提供される。店内には卓球台が4台設置されており、会員同士でラリーを行えるほか、卓球マシンも2台設置されているため1人でも利用が可能。2020年9月23日〜2020年10月31日までの期間、入会費0円、見学当日入会で月会費の初月半額等のキャンペーンも合わせて実施する。

9月11日より無料見学の申し込み受け付けを開始、9月23日より見学と入会の受付を行う。本格的なサービス提供は10月1日からを予定している。

スヴェンソングループが推し進める卓球事業

タクティブ、あまり聞き馴染みの無い企業かもしれない。タクティブは国内11店舗で卓球スクールを展開する最大手企業で、コナミスポーツクラブ府中店でもスクールを展開するなど、その勢力を拡大中だ。

スヴェンソングループの関連会社一覧
スヴェンソングループの関連会社
https://www.svenson.co.jp/

タクティブの親会社は、男性向けかつら製造販売事業や、ヘアケア/スキンケア事業を中心に手掛けるスヴェンソンホールディングス。一見、卓球は全く関係のない企業に思えるが、スヴェンソン社の現会長 兒玉圭司氏は元卓球国体代表選手で、明治大学卓球部監督や卓球日本代表監督を歴任した人物だ。

またスヴェンソン事業で培った店舗開発ノウハウが卓球事業でも発揮されており、スヴェンソングループにおけるスポーツ事業の中核として「卓球」は確固たる位置づけとなっている。

スヴェンソングループの事業を見ると、タクティブ以外にも「VICTAS」という卓球用品の総合メーカー事業なども手掛ける。VICTASは卓球界では知られた存在であり、国内/世界でのシェアも着々と伸ばしている。

スヴェンソングループが運営する卓球用具メーカーVICTASの旗艦店の写真
VICTAS旗艦店
https://t-4.jp/tokyo/

2020年10月からVICTAS社の代表取締役社長に就任が予定されている松下浩二氏は、日本初のプロ卓球選手としても知られ「Tリーグ」チェアマンなどを歴任した人物だ。同社の卓球界でのポジショニングと卓球事業の勢いを感じることができるだろう。

卓球市場の成長とフィットネス性、タクティブ駒井代表に聞いた

意外に知られていない事実だが、卓球は隠れた「成長市場」だ。

日本における卓球の競技人口はこの10年近く右肩上がりで伸びている。日本卓球協会が発表している「都道府県別加盟登録人数一覧表」を見ると2019年度は約35.8万人、生活の中でレジャー等で卓球に触れる人数は「社会生活基本調査」によると766万人と推定されている。

また調査によって差異はあるが、世界の卓球人口は3億人とも言われており、Tリーグやオリンピックなどで触れる機会が増えることで更に増加するのではと推測されている。この卓球市場の成長背景について、株式会社タクティブ 代表取締役社長の駒井氏は「少子化の影響も大きい。少子化で団体競技が実施しづらく、個人競技に流れてきている」と語る。

また、テレビやネットなどで、高齢者が機微な動きで卓球をする様子を見たことがあるだろう。卓球が「高齢者でもできるスポーツ」として浸透していることもあり精神的なハードルも低い。長時間走ったり、マシントレーニングに比べ負荷の度合いもほどよく、適度な動きによって怪我をしにくい有酸素運動としての側面もある。

ピンポンFITのウェブサイトに掲載された卓球の運動効果説明図
ピンポンFITウェブサイトより
https://pingpong-fit.tactive.co.jp/

タクティブ代表の駒井氏は「卓球は幼少期や学生時代に行っていた人が40歳〜60歳の間に再開することが多い。話を聞いているとゴルフやテニスから流れてきた方が多い。」とコメントを寄せた。

日本の大手フィットネス事業者の会員属性を見ても高齢者比率は年々高まってきている。人口動態上「アクティブシニア」に受ける業態を開発することが、日本のフィットネス市場開拓の切り口にもなっており、卓球はこの流れにハマる極めて「日本的」なニーズを捉えたフィットネス業態とも言える。

タクティブ
https://www.tactive.co.jp/