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2024年5月15日 分析と解説

【決算】ルネサンス 25年3月期にも売上高で業界最大規模に、買収したスポーツオアシスは25年4月に吸収合併を予定

株式会社ルネサンスは、2024年5月10日、2024年3月期決算を開示した。また同日に、同社の連結子会社である株式会社スポーツオアシス(旧 株式会社東急スポーツオアシス)を2025年4月1日に吸収合併することも発表した。

ルネサンスの2024年3月期決算は、売上高436.2億円(昨対比9%増)、営業利益12.6億円(85.4%増)、経常利益5.2億円(68.5%増)、当期純利益6.3億円(黒字転換)で増収増益の着地となった。また連結子会社であるオアシスも、2023年3月期の売上高121億円から2024年3月期 売上高171億円と約50億円の大幅増収で着地した。(2024年3月期は売上は非連結、持分法による投資損益のみ計上)

ルネサンス・オアシスともに好業績の様相となったが、ルネサンスの連結決算上ではオアシスの持分法による投資損失3.6億円を営業外費用に計上しているため、オアシスの最終損益は約9億円の赤字であったと推察される。この赤字の一部として、オアシスは固定資産の回収可能性を検討した結果、既存15施設を対象に2.9億円の減損処理を実施している。

一方で、ルネサンス決算上はオアシス株式を段階取得(2023年3月31日に40%、2024年3月31日に残り60%を取得)したことによる差益として特別利益3.37億円の計上も行っている。

ルネサンスは開示資料の中で、「売上高ならびに営業利益については、概ね前回予想に近い水準で推移しました」としつつ、「一方、経常利益については、持分法による投資損失の計上により、前回公表の業績予想を下回る結果となりました。なお、親会社株主に帰属する当期純利益については、オアシスの株式を段階取得したことに伴う株式再評価による評価益を計上したことで、概ね前回予想に近い水準で推移しました」と前回業績予想と実績の差異についてコメントしている。

ルネサンスの24年3月期は全セグメントで増収

ルネサンスの24年3月期決算の内容を見ると、事業状況は好調で全てのセグメントが増収となった。フィットネス事業の売上高は、23年3月期 178.5億円から24年3月期 196.7億円と前期比10.2%増で着地。スクール事業もスイミングスクール、テニススクール、その他スクール全てが増収、特にスイミングスクールは売上高97.8億円から102.4億円(4.7%増)への増収となった。また「元氣ジム」などの介護リハビリ事業の売上も16.8億円から18.3億円(8.9%増)に増収している。

会員数は、フィットネス会員が23年3月 17.8万人から24年3月 18.4万人(前期比3.3%)に増加。スクール会員数は15.8万人から15.6万人(▲1.1%)に減少した。内訳はスイミングスクールが10.3万人→10.2万人(▲0.4%)、テニススクール3.4万人→3.3万人(▲1.7%)、その他2.0万人→1.9万人(▲3.9%)となっている。オンライン会員は大幅に増加し3.6万人→5.4万人と47.1%増加。全体の会員数はフィットネス会員とオンライン会員の増加が牽引し、23年3月 37.3万人→24年3月 39.5万人と5.7%増で着地した。

その他の事業指標に目を向けると、客単価は2021年度の8,828円から増加傾向にあり、22年度9,158円→23年度9,575円と増え続け、遂に1万円が見通せる水準に達した。退会率は漸増傾向で21年度3.1%→22年度3.2%→23年度3.4%と今年度も若干の増加となった。

会員の年齢構成比推移を見ると「会員の高齢化」は今期も進んでおり、フィットネス会員20〜40歳代の構成比は23年3月の43.8%から24年3月で42.4%と1.4%減少、逆に50歳以上の構成比は56.2%から57.6%へ1.4%増えた。

高齢化の傾向はスクール事業でも見られ、20歳未満のスクール会員構成比は73.2%から73.0%に減少(10歳未満会員も55.0%→54.4%に減少)した一方で、40歳以上は21.9%から22.4%に増加した。スクール事業の40歳以上会員構成比は2020年3月時点で18.4%であり、直近4年間で4%増加している。

オアシスを吸収合併、25年3月期に売上で業界最大規模に

24年3月期の決算発表と同日、ルネサンスは連結子会社の株式会社スポーツオアシス(旧 株式会社東急スポーツオアシス)を2025年4月1日(予定)に吸収合併することも発表している。

ルネサンスは、2023年3月31日に東急不動産の子会社であった東急スポーツオアシス(フィットネス運営、ホームフィットネス、スポーツ施設の管理運営受託及びデジタルヘルスデザインの各事業を会社分割により承継した新設会社)の株式40%を取得。2023年8月には残り60%の株式を取得し100%子会社化することを発表し、その実行と手続が2024年3月31日に完了。2024年4月1日には、東急スポーツオアシスの社名を「株式会社スポーツオアシス」に変更した。

今回新たに発表されたオアシスの吸収合併は、2024年12月27日に合併契約締結、2025年4月1日が合併期日(効力発生日)というスケジュールで予定されており、オアシスは解散となる。2023年3月から始まったオアシス買収の一連の流れは、ルネサンスに吸収する形で一つの完成を迎える。

そして、今回の決算発表では、スポーツオアシスの業績が連結で通期寄与する来期の業績予想が開示されており、ルネサンスの2025年3月期業績(予想)は、売上630億円、営業利益18億円、経常利益10億円、当期純利益7億円となり、25年3月期をもって売上高ではフィットネス業界最大規模となる見込みだ。

また決算発表・オアシスの吸収合併の発表と同時に、中期経営計画も開示されている。この中期経営計画は2027年をターゲットに策定されており、ルネサンスが総合型スポーツクラブのリーディングカンパニーとして業界をリードすることを掲げ、2027年度(2028年3月期)に過去最高益を目指すための戦略を示している。

中期経営計画の内容を見ると、目指すべきゴールに対して吸収合併されるオアシス事業の役割は大きく、吸収合併で一つの完成を迎えた後の新たな章が始まる。

中期経営計画:4年で売上750億円、営業利益55億円を目指す

中期経営計画で示されている業績目標は、2027年度(2028年3月期)売上高750億円、営業利益55億円。今回の発表された最新決算期の2023年度(2024年3月期)売上高436億円、営業利益12.6億円から4期間でこの水準を目指す。

ルネサンスはフィットネス事業に加え、介護関連サービス事業も展開しており、今回の中期経営計画では同社の対象市場についても記載されている。ルネサンスの推計では、フィットネス市場規模は約4,500億円、うち総合型フィットネス市場は約2,800億円で、同社はこの中において現在約600億円の売上を確保している格好だ。

これに加え介護関連サービス市場約1兆円のうち、フレイル関連市場約1,300億円・介護テック市場約700億円・リハビリ施設市場約3,000億円をターゲットとして示している。同社の介護施設売上高は約20億円で、こちらのほうが成長余地としては大きく見える。

また今回の中期経営計画では、対象市場に対するルネサンスの考察についても記載がある。フィットネス市場に対してルネサンスは「24時間・無人等の低価格業態やオンライン普及も、フィットネス参加率は微増程度」「低価格業態が市場開拓を推し進める一方で、総合型の魅力再認識も進む」「総合型を手掛けられる事業者は徐々に限られ、大手による集約が進む」とコメントしており、オアシスの買収は「大手による集約」を自ら推し進める一手と言える。

画像:株式会社ルネサンス|2024-2027中期経営計画

2027年度(2028年3月期)売上高750億円、営業利益55億円の達成に向けて各事業セグメント別の方針に目を向けると、大きく分けて5つのセグメント(①スポーツクラブ事業、②BtG事業:PPPによる公共施設の運営受託、③BtoB事業、④介護・医療周辺事業、⑤ホームフィットネス事業)で各戦略の記載がある。

ルネサンスグループの主要事業である①スポーツクラブ事業は、2023年度(2024年3月期)の売上高393億円から2027年度593億円までの伸長を目指す。2023年度の売上高393億円にオアシスの2023年度売上高121億円は含まれていない。593億円の目標に対し、2023年度時点でルネサンスとオアシスの売上を単純に合算すると514億円で、既に目標値の86.6%まで進捗している。

戦略面では、小規模・無人系の業態とは異なる顧客体験価値へつながる「ヒト」へのサービス強化や顧客体験価値に適した価格設定、施設維持コストの低減などを含む収益基盤の強化と構造改革を推進しつつ、やはりオアシス統合シナジーの最大化には注力する。24年3月末でオアシスは43施設(直営32施設、業務委託11)在籍会員数は81,867人を有しており、ルネサンスが保有するスイミングスクール等のノウハウを活かした伸びしろを強化する方針。

また今後も積極的なM&Aや、継承による業界再編の主導に取り組むとしている。同社はこれまでもM&Aを上手く活用し企業規模の拡大を実現してきており、実際こうした積み重ねで現在全国140施設を展開、今回買収したオアシス32施設により首都圏・近畿圏をカバーするなど、M&Aは戦略の軸となりそうだ。

②BtG事業(PPPによる公共施設の運営受託)でも、資本参加しているBEACH TOWNとの連携によってパークPFI等への市場拡大を目指す。また累計150以上の自治体に向けて1,000以上の介護予防教室の実施をしてきた実績などをさらに拡大させ、セグメント業績は売上16億円(2023年度)を2027年度には55億円まで引き上げる。(なお2023年度の売上にも、オアシスの同セグメント売上10億円は含まれていない)

③BtoB(法人向け)事業は、オンラインフィットネスのトピックが大きく、ルネサンスのオンライン会員は2024年3月31日で54,331名、オンラインライブストリームプログラム数は週900本、法人契約企業/健保数は900社以上と成長を果たしている。売上高目標は4億円(2023年度)から8億円(2027年度)となっている。

④介護・医療周辺事業では「元氣ジム」などのブランドで、2024年3月末時点で直営33施設、フランチャイズ11施設を展開している。今後、特にエリアを面でおさえる新規出店やM&A推進に積極投資を行うほか、自社運営を通じて得たノウハウを活かし、他事業者が運営する通所介護施設の収益性に貢献する提案を行う営業体制を強化する方針。本セグメントの売上高は2023年度で19億円、これを2027年度に35億円まで伸長させる計画。

そして最後の⑤ホームフィットネス事業は、オアシスとの統合シナジーがフィットネス事業と並び大きいセグメントとなっている。バランスボールなどのホームフィットネス事業は「オアシスの得意領域」であり、これは数字でも明らかだ。

ルネサンスの本セグメント売上高は、2023年度で1.6億円に留まるも、同年度のオアシスのセグメント売上高は39億円あり、既にルネサンスの約24倍の売上規模を有している。2027年度の売上目標は46億円、2023年度でオアシスのセグメント売上を単純合算すると既に40.6億円に達し、目標の88.2%を既に満たしている。

こうしてみると②BtG事業と④介護・医療周辺事業に関しては、若干チャレンジングな業績目標にも見えるが、業績数値の規模も大きい①スポーツクラブ事業、⑤ホームフィットネス事業に関しては十分達成可能な水準にも見える。同社の今後のM&Aに対する取り組みも含め、新生ルネサンスが名実ともに総合型スポーツクラブのリーディングカンパニーとして業界をリードできるか注目が集まる。

株式会社ルネサンス
https://www.s-renaissance.co.jp/

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