4月16日に発表された緊急事態宣言の全国拡大を受け、「女性だけの30分健康体操教室 カーブス」を運営する株式会社カーブスホールディングスは、日本全国に展開する2,014店舗の休業を決めた。
同社は、すでに15都道府県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県、茨城県、 群馬県、福井県、石川県、愛知県、岐阜県、京都府、愛媛県)の1,075店舗を休業していたが、これに続き全店舗の休業に踏み切った。
4月10日に発表した「2020年8月期 第2四半期 決算説明資料」によると、2020年2月末時点での全2,014店舗のうち、直営店はわずか65店舗、その他1,949店舗はフランチャイズ店舗となる。元々カーブスホールディングスは、東証1部に上場するコシダカホールディングスの子会社であったが、国内初のスピンアウト上場会社として2020年3月2日に東証1部に上場した。
カーブス業態の知名度の高さや、事業規模の大きさ、スピンアウトスキームによる上場など、かなりの注目を集めていたが、上場の翌日には3月8日〜3月15日の期間、国内全店舗の休業を発表していた。コロナウイルス感染拡大を受け、初動の速さと企業の姿勢を示した形だが、前回の休業から1ヶ月たった今回、2度目の全店休業を発表することとなった。
カーブスはフランチャイズ関連で売上の約9割を構成
同社の業績をモニタリングする上で注意すべき部分はフランチャイズ店舗の存在だ。2020年2月末現在の国内全2,014店舗のうち、直営店はわずか65店舗、その他1,949店舗はフランチャイズ店舗という数字から分かるように、同社の売上の大半はフランチャイズ店舗からのロイヤリティ、加盟金、マシン機器販売等が収益のメインとなっている。
上半期の売上高144億円の内、直営店舗の売上高は11億円(7.8%)、海外事業は2.5億円(1.7%)となっており、フランチャイズ絡みの売上高は90%近い構成比率と、フランチャイズモデルで成長した会社だ。
減収減益だけでは終わらない「見えないコスト」の可能性
全店休業中の月会費は、翌月以降の会費への繰越しや、プロテインなどのリカーリングモデルでの定期販売など、売上高が0になることは考えづらいが、売上の大半は減少することとなる。
しかし、より注意が必要なのは(BtFは現時点で同社のフランチャイズ契約の内容を確認できていないため推測の域となるが)こうした天災等によるフランチャイズ本部としての対応をどう考えるか、という点にある。
通常フランチャイズ契約に限らず一般的な基本取引契約など、発注側企業やフランチャイズ本部は天災等の不可抗力による損害の求償を受けない契約になっていることが多く、逆にフランチャイジー(加盟店舗側)は売上のミニマムキャップ(最低売上補償)等によって最低限のロイヤリティを本部に支払う契約になっていることも想定される。
今回は不可抗力による休業という見方が多いが、(あくまでフランチャイズ店舗に事前確認を行っていたとしても)最終的にはフランチャイザー(本部)が「休業を決定した」とも受け取れるため、休業期間のロイヤリティは支払い免除される可能性は高い(本部は収入の大部分を失う)。
フランチャイズ本部として加盟店へのケアを間違うと、将来に大きな影響を残す可能性も
例えば、赤字FC店舗を運営していた業績不振の加盟店は今回の休業で資金繰りの目処が立たず倒産する可能性も考えられる。フランチャイズ加盟企業が倒産することは、フランチャイズ本部・ブランドとしてはブランドや業態の信用を毀損することにつながるため、今後の新規店舗オープンに伴うフランチャイズ募集に大きな影響を与えることになりかねない。
こうした影響を回避するために、資金繰りが厳しくなったフランチャイズ店舗を直営店に切り替え(本部が店舗を買収)たり、融資等の支援を行う可能性も考えられる。
つまり今回の全店休業による売上減少から生じる損失だけではなく、フランチャイズ加盟店のケアに対する必要資金などの大きさによって、同社は今後の投資戦略を更に見直す必要もあり、逆にフランチャイズ店舗への補償の姿勢によっては、今後のフランチャイズ募集に大きな影を落とす可能性も生じる。
フィットネス業界に限らず全業種が大きな影響を受け、各社アフターコロナの時代に対する準備と足元の着実な対策が求められる難しい状況の中で、同社は業界内でも先駆けてコロナ対策を実施してきた。
3月の上場直後から厳しいトピックが続いているが、初動の速さは企業の姿勢を写していると筆者は考えている。同社のこれからの対応がフィットネス業界の中でも1つの指針になる可能性も高い。厳しい環境下だが同社にエールを送りたい。
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