スポーツドキュメンタリー番組の「ALL OR NOTHING(オール・オア・ナッシング)」をご存知だろうか。オール・オア・ナッシングは、Amazon prime videoで配信されているアマゾンオリジナル番組だ。既に9シリーズが放送されており、人気番組となっている。
オール・オア・ナッシングは、アメリカンフットボールやサッカー、ラグビーなどの競技で世界トップリーグに所属するチームや、ナショナルチームにシーズンを通して密着、チーム経営やミーティング、トレーニング風景、ロッカールーム、選手の私生活に至るまで密着し、スポーツビジネスの裏側を深く見ていくことができる。
当初オール・オア・ナッシングは、アマゾンとNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)が提供するスポーツドキュメンタリーとして提供されていたが、5シリーズ目でラグビーニュージーランド代表「オールブラックス」に密着、6シリーズ目にはイングランド サッカープレミアリーグ所属の「マンチェスター・シティ」に密着し、徐々にジャンルを展開している。
ただの「スポーツドキュメンタリー」ではない、オール・オア・ナッシングの魅力
最近はプロスポーツチームのソーシャルメディア戦略も強化されており、チーム公式アカウントでもロッカールームの様子や契約時など試合以外の部分を垣間見ることが容易になっている。
しかし、サッカーで言えばチャンピオンズリーグなどの重要な試合、リードされて折り返したハーフタイムで監督が選手に何を言い、戦術の修正を解説するシーンなど、核心に迫るシーンが収録されることは滅多に無い。
オール・オア・ナッシングは、その全てに密着しており、それこそホームグラウンドで働くスタッフの経歴や、スタッフと選手の関係性にまでフォーカスして番組が制作されている。知られざるトップチームの実態が明らかになる。
世界有数のトップチームがどのように経営され、それを支える現場スタッフがどう動き、選手はプレッシャーにどのように立ち向かうのか、クラブのトレーニング施設の様子、監督のマネジメント力と選手起用、そして移籍の裏側など、単純なスポーツドキュメンタリーではなく、一流の監督やクラブチーム経営から学べることが多く、読者が日頃直面している事業やマネジメントにおいても示唆に富む内容となっている。
例えば、監督を補佐する分析官が次の対戦相手に警笛を鳴らすデータを上げてきた、そして選手は故障者が続出し万全の状況ではない、さらには試合中に故障者が更に出てしまう。故障者を埋める移籍も見込めない。そのような状況において選手をモチベートし意思決定し結果を出さなければならない。ヒト・モノ・カネをどうコントロールし結果を出すのか、まさに経営/マネジメントそのものだ。
フィットネス業界的な視点でいえば、オール・オア・ナッシングはスポーツを題材にしているため、トレーニングや食事、メディカルシーンが豊富で、世界一流の選手たちを支えるフィジカルサポートでの学びは当然多い。また、選手を顧客と見立てれば、選手が試合でパフォーマンスを発揮するためにスタッフが行う仕事や設備は、店舗経営にも学びが多いはずだ。
2020年8月31日、待望の新シリーズ「トッテナム・ホットスパー」編スタート
そして2020年8月31日、オール・オア・ナッシング待望の新シリーズが配信される。6シリーズ目にフォーカスされたマンチェスター・シティと同じプレミアリーグに所属する「トッテナム・ホットスパー」編だ。
サッカー界ではオール・オア・ナッシング「マンチェスター・シティ」編の人気を受け、次のチームはどこか議論が巻き起こった。2018年時点での報道によると、プレミアリーグ所属の強豪リヴァプールがオール・オア・ナッシングの密着を断り、ドイツ ブンデスリーガ所属の強豪バイエルン・ミュンヘンにアプローチしていると見られていたが、決まったのは「トッテナム・ホットスパー」だった。
トッテナム・ホットスパーはロンドン北部をホームとし、イングランド代表FWハリー・ケインや、韓国代表FWソン・フンミンを要する名門チームだ。オール・オア・ナッシングの「トッテナム・ホットスパー」編は、同チームの2019/20シリーズに密着している。
2019/20はトッテナム・ホットスパーにとって良いシーズンではなかったかもしれない。新型コロナウイルスの影響もあったし、プレミアリーグは6位でシーズン終了、チャンピオンズリーグはベスト16で敗退した。
では今シリーズの見どころはどこにあるのだろうか。
悩める指揮官(経営者)と、問題を抱えたエース(社員)
オール・オア・ナッシングで最もフォーカスされるのは「監督」だ。企業でいう経営者であり、チームを司る指揮官の苦悩や葛藤、チームや競技に対する哲学がこのシリーズの中心であり醍醐味でもある。
トッテナム・ホットスパー編が期待されている理由にこの「監督」がある。同クラブは2019年末にそれまで監督だったマウリシオ・ポチェッティーノをシーズン半ばに解任、ジョゼ・モウリーニョを後任監督とした。
モウリーニョはインテル、チェルシー、レアル・マドリード、マンチェスター・ユナイテッドなどのビッグクラブ監督を歴任し結果を出してきた名将だ。反面「バスを停める」と評される極端に守備的な戦術や、記者会見での発言が物議を醸すことも多く、選手との確執が取り沙汰されることも少なくなかった。そのため、モウリーニョのトッテナム・ホットスパー監督就任は大きな話題となった。
また、シーズンを通してこれまで物議を醸す人物像だったモウリーニョ監督が、穏やかになった、自信を喪失しているのではないか、といった報道も相次ぎ、実像に興味が集まっているのも一因としてある。
もう1つ注目を集める要因は、トッテナム・ホットスパーのFW、韓国代表FWでもあるソン・フンミンだ。ソン・フンミンはこのシーズンでアジア人として初のプレミアリーグで10ゴール10アシストを記録、プレミアリーグ通算ゴール記録でもアジア人記録を樹立している。バロンドール候補30人にノミネートされ、アジアでは最も時価総額が高い選手とされている同選手、2019/20シーズンはヨーロッパサッカー界でも話題になり続けた選手だった。今回のオール・オア・ナッシングでも中心的に描かれる選手ではないかと噂されている。
しかしソン・フンミンはプレーの素晴らしさに注目が集まる一方で、試合中のラフプレーや、相手に深刻な怪我を与えるプレーなどで議論が巻き起こり、ソン・フンミン自身がそれをどう捉えているのかも含め注目が集まっている。該当のプレーに関してオール・オア・ナッシングの予告編で本人が「あれのどこがレッドなんだ!教えてくれ!」と叫んでいることから、議論が再燃していることもある。
さらに、ソン・フンミンやハリー・ケインなどチームのエースである主力選手の怪我など、戦力的にもチームの状態が不十分になってしまったことも挙げられる。こうした状況を受け2019/20シーズン前の移籍市場でトッテナム・ホットスパーが放出した選手について疑問視(放出しなければと)する声も上がったシーズンとだったことも注目の要因として大きい。
これはトッテナム・ホットスパーに限らない話ではあるが、新型コロナウイルス感染拡大によるリーグの中断や無観客試合、ソン・フンミンが韓国とイギリスを往来する中での自主隔離といった特殊なイベントなど、否が応でも注目が集まる。
監督を経営者、選手を社員と見立てれば、一般的な会社でもこうしたことは多々あるだろう。ヒト・モノ・カネが十分ではないにも限らず、目の前の市場では競合と熾烈な戦いをしなければならない。このような状況において、一流と呼ばれる経営者(監督)が何を考え、伝え、社員(選手)をモチベートするのか。そして社員(選手)は何を思い、どう事態に立ち向かい克服していくのか、私達に示唆を与えてくれるのではと期待せざるを得ない。
もっとも、ヨーロッパのサッカービジネスは巨大市場であり、トッテナム・ホットスパーの売上高は2017/18シーズンの売上高は約550億円、2018/19シーズンの純利益は150億円とも言われている。このシーズンの純利益はサッカークラブが記録した純利益では世界1位となっている。数年前にメルカリが買収した鹿島アントラーズの売上高67億円と比べると、いかに巨大か分かる。オール・オア・ナッシングによって世界有数のスポーツビジネスのダイナミズムを感じることができるのも魅力の1つだ。
トッテナム・ホットスパー編のエピソード9話要約(追記2020/10/9)
2020年8月31日からAmazon USなどでは配信が開始されていたが、日本での配信は行われず見られない状態が続いていた。これは字幕付けのスケジュールによるもので、元々2020年11月から日本では配信される予定だったようだが、前倒しされ10月初旬から既に日本語字幕での配信が開始されている。
筆者の配信を見た感想にはなるが、今作のトッテナム・ホットスパー編、もしかするとマンチェスター・シティ編よりも見応えがあるかもしれない。不調の中から再興しようとするチームのアップダウンや、移籍問題での緊張感、選手と監督の激しいやりとりなど、順風満帆とはいかないチームでの生々しいシーンが満載だった。特にモウリーニョの仕事への姿勢や哲学は彼のこれまでの印象を一変させる側面も多々垣間見られる。是非ご覧頂きたい。
エピソード1「新しい契約」
スパーズは色々な意味で転機を迎えていた。昨シーズンはマウリシオ・ポチェッティーノ監督のチーム改革によってチャンピオンズリーグ決勝に進出、スパーズ会長ダニエル・リーヴィが主導した新スタジアムの建て替えが終わり新しいシーズンも順調にスタートするかと思われていた。しかしチャンピオンズリーグ決勝で敗退したことで、会長をはじめとする経営陣・監督・チーム・選手全ての関係に少しずつ溝ができていた。
新シーズン開幕から不調な出だしのスパーズ、シーズン序盤に行われたチャンピオンズリーグ グループステージでのバイエルン・ミュンヘン戦でスパーズは7失点の大敗をしてしまう。そこから中々勝ち星を挙げられないスパーズ、リヴァプールにも敗退、エヴァートンともドローとプレミアリーグでの順位は11位に低下。チャンピオンズリーグ グループステージのレッドスター戦で勝利を収めるも、次節プレミアリーグに昇格したばかりのシェフィールド戦ではドローという結果に。
この結果を受けポチェッティーノは突如解任される。そして後任に数々のビッグクラブを率いてきたジョゼ・モウリーニョが新監督として就任する。異例とも言えるシーズン途中での電撃的な監督解任、そして大物モウリーニョ就任の裏側、スパーズ選手たちが口にする不安や期待…ジョゼ・モウリーニョによるスパーズの再興が始まる。
エピソード2「新たな始まり」
新生スパーズが本格始動する。初戦のウエストハム戦、スパーズは3ゴールを決めモウリーニョのデビュー戦は勝利でスタートする。モウリーニョ2戦目、勝てばチャンピオンズリーグベスト16が決定するグループステージのオリンピアコス戦、2点を先制される展開となる。スパーズは1点を返すもリードされハーフタイムに突入する。モウリーニョは選手に「落ち着け、何があっても自信を失うな」と伝える。後半、選手たちは奮起し3ゴールを奪って逆転勝利を収める。
エピソード2では、モウリーニョが選手との関係を作りつつ、勝てるチームに作り上げる中で各選手に対するケアやモチベーティングする様子が具体的に描かれ始める。そしてオール・オア・ナッシング トッテナム・ホットスパーズ編で象徴的とも言われるシーンの1つが登場する。期待されつつも昨シーズン乱調で練習嫌い、ムラッ気のある若手のエース「デレ・アリ」にモウリーニョは個人ミーティングで優しくも厳しい言葉をかける。そしてデレ・アリは調子を取り戻し始める。
エピソード3「人の良さは捨てろ」
スパーズはモウリーニョ就任後、マンチェスター・ユナイテッド戦で初の敗戦を喫してしまう。敗戦の理由としてモウリーニョはスパーズの選手たちの「人の良さ」にあると指摘する。就任直後からジョゼ・モウリーニョは「このチームの選手は人が良すぎる」とチームの課題を指摘。次の試合、バーンリー戦でソン・フンミンはキャリア最高のゴールを決める。しかしそのソン・フンミンはモウリーニョの古巣であるチェルシー戦、ラフプレーでレッドカードを受け感情をあらわにする。
チームの経営陣とモウリーニョは移籍問題にも取り組み始める。最も大きな課題は、退団の意思を表明しつつも移籍が実現せずチームに残っているクリスティアン・エリクセン。他の移籍候補選手も自身のキャリアや家族のことについて口にする。
エピソード4「クリスマス」
スパーズは年末年始の過密日程に向き合うが、怪我人が続出し、ソン・フンミンはレッドカードで3試合出場停止でスパーズは選手が枯渇してしまう。そこでU-23チームから3人の若手選手をトップチームに招集する。選手の負担が増加する年末年始の過密日程についてモウリーニョは記者会見でスケジュールに苦言を呈する。その嫌な予感は的中し過密日程の3試合目サウサンプトン戦、エースストライカーのハリー・ケインが筋肉を断裂し長期離脱が確定、ムサ・シソコもこの試合で怪我をしてしまう。
そんな状況で迎えたリヴァプール戦、強豪相手に敗退するも起用された若手選手が躍動、未来への望みがつながる。そしてスパーズはサッカー界で最も古いカップ戦「FAカップ」に挑む。FAカップでスパーズは過去8度優勝、是が非でも獲得したいタイトルの1つだ。初戦勝利しチームはFAカップ4回戦に進出、この試合で若手DFジャフェット・タンガンガが躍動しMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選ばれる。
エピソード5「新入り」
年末年始の過密日程が終わり、移籍期間が始まる。しかしチームの状況は芳しく無く、若手の活躍はあるも主力選手の穴は大きく、スパーズは1ヶ月に渡り勝星から遠ざかっていた。一方でクラブに12年在籍しチーム最古参のLSBダニー・ローズは出場機会が減ってることの不満をモウリーニョに直接ぶつけ緊張感が高まる。これをキッカケに会長のダニエル・リーヴィはローズの長期レンタル移籍に動く。
そして問題が長期化していたクリスティアン・エリクセンにインテルからオファーが届く。移籍を望むエリクセンに会長のリーヴィとモウリーニョは直接残留を打診し、インテルと移籍条件で折り合わない場合は交渉を打ち切る可能性もあると進言する。しかし最終的には移籍を認めることをエリクセンに伝える。
結果的にスパーズはこの移籍市場でPSVからFWステーフェン・ベルフワイン、ベンフィカから若手MFジェドソン・フェルナンデスを獲得する。逆にエリクセンを2000万ユーロでインテルに放出、ダニー・ローズをニューカッスルにローンで放出した。その頃、4ヶ月離脱していた主将のウーゴ・ロリスが怪我から復帰したことでチームは士気を取り戻しつつあった。移籍が一段落した初戦のマンチェスター・シティ戦でベルフワインは得点を決めチームの勝利に貢献、移籍後のデビュー戦でMOMを獲得、チームに前向きな風が吹き始める。
エピソード6「戦力不足」
FAカップ4回戦サウサンプトン戦を控えるが、ベルフワインはこの試合出場資格がなく、未だ主力選手の離脱も多くチームは戦力が限られた状態でこの試合を戦うことになった。苦戦しつつもソン・フンミンの決勝点でスパーズは勝利を収める。次節のアストン・ヴィラ戦も苦戦の末ソン・フンミンの決勝点で連勝するも、ソン・フンミンがこの試合で腕を骨折したことが判明、長期離脱が確定する。戦力不足が決定的となった状況で、チャンピオンズリーグ ベスト16レグ1/2のRBライプツィヒ戦が迫っていた。
エピソード7「後悔はない」
チャンピオンズリーグ ベスト16レグ1/2のRBライプツィヒ戦、スパーズは押される状態でハーフタイムを折り返す。後半、動きを取り戻し再三チャンスを作るもスパーズは敗北。次節のプレミアリーグでもチェルシーに敗北。連敗が続く中、モウリーニョとコーチ陣はこれまでと違う方法で選手をモチベートする。次節ウルブス戦、スパーズは先制、その後追いつかれるも再度ゴールを決めハーフタイムを迎える。後半に入りウルブスに同点弾を決められると、その後更にゴールを許し逆転され試合はそのまま終了、スパーズは3連敗してしまう。
試合後のロッカールームでデレ・アリとダイアーは口論になる。それを見たモウリーニョは「こうした口論は嬉しい」と言い「プレーが良いのに負けた理由は、人が良すぎる、ずる賢さが足りない」と当初からの指摘を再度口にする。
チームはそのままFAカップ5次ラウンドノリッジ戦に挑む。1-1で試合終了し勝敗はPK戦に、3-2で敗北しスパーズはFAカップ敗退となった。この試合後、ダイアーが観戦に来ていた親族に絡むファンに激怒し観客席に入り揉める事件が起きる。モウリーニョは「状況を考えれば誰でもやりかねない」とし処罰は求めないと会見で発言し一定の理解を示す。
エピソード8「中断」
新型コロナウイルスの感染拡大が伝わり始めた中、チームの疲労感は高まっていた。それでも連敗から抜け出そうとするモウリーニョと選手たち。翌週にチャンピオンズリーグ ベスト16レグ2/2のRBライプツィヒ戦を控えたバーンリー戦、前半リードされるも後半で追いつき1-1のドローでなんとか5連敗を免れるが、この試合でベルフワインが怪我をし主力選手を更に失うスパーズ。
その頃、新型コロナウイルス感染拡大の影響で役員陣は決算が減収になる可能性、パンデミックによる無観客試合や休業が保険の適用外になることなど経営上の課題にも直面していた。迎えたRBライプツィヒ戦でスパーズは敗北する。その直後、新型コロナウイルスのパンデミックが本格化し、サッカーだけでなく全世界のスポーツが止まり始め、スパーズのクラブ経営にも影を落とし始める。モウリーニョはプレミアリーグの中断やファーストチームの練習停止、ロックダウンの影響で選手が自宅待機を強いられる期間のパフォーマンス低下を懸念する。
そして時は過ぎ、ファーストチームの練習が再開される。怪我をしていた主力選手たちがロックダウン期間に復帰、残り9試合となったプレミアリーグの熾烈な順位争いに向けてスパーズは、再開後の初戦マンチェスター・ユナイテッド戦に挑む。
エピソード9「追い込み」(最終回)
残り8試合となったスパーズは、ウエストハム戦に挑む。残りの試合数を考えると負けられない1戦、集中力を欠く選手たちにモウリーニョはハーフタイムに厳しい指摘をし選手は奮起する。その一方で、タンギ・エンドンベレはトッテナムに移籍後、環境に慣れることができず、且つ試合にも出られないことを不満に思い、会長のダニエル・リーヴィと話し合いの場を設ける。記者からもエンドンベレを高額で獲得したにも関わらず出場機会が少ないことの質問が増えていた。次節のシェフィールド戦、エンドンベレは出場するもののスパーズは敗北してしまいチャンピオンズリーグ出場の可能性が消えかかる。
その3日後、モウリーニョは11人ずつで練習試合をさせる。その練習試合、ダイアーのタックルを受けてソンが倒れダイアーに怒りをあらわにする。その横ではチームメイトが口論を始めチームに緊張感が漂う。
次節エヴァートン戦、ソン・フンミンは試合に出場する。しかし事件が起きる。前半終了間際のソン・フンミンの守備の姿勢に対してGKのウーゴ・ロリスは怒りをあらわにし掴みかかる。ロッカールームでも2人は激しい口論となるが、モウリーニョは「そうしたチームメイト間の口論や厳しい指摘を向けることについて成長の証だ、就任直後の状態からは考えられない、良いことだ」と選手を鼓舞する。次第にスパーズの選手は闘争心を取り戻しエヴァートン戦では勝ち点を手にする。
しかし次節ボーンマス戦は無得点のドロー。プレミアリーグ順位は9位となりチャンピオンズリーグ出場の可能性は極めて低くなったが、ヨーロッパリーグ出場の可能性にかけることになる。次節はアーセナル。アーセナルは100年以上続くライバル関係にあり、両者の試合はロンドンダービーと呼ばれている。スパーズはこの試合に勝利、ヨーロッパリーグ出場の可能性を残す。
この時点でスパーズは8位、残り3試合で6位に浮上する必要があった。残り3試合スパーズはこれまでのフラストレーションを払拭するように好調をキープし2勝1分、上位のウルブスが最終節で負けたためスパーズはヨーロッパリーグ出場が決まり、選手たちと監督は喜びを爆発させるのだった。
オール・オア・ナッシングのシリーズ一覧
# | タイトル(以下Amazonページリンク) |
1 | アリゾナ・カーディナルスの挑戦 |
2 | ロサンゼルス・ラムズの軌跡 |
3 | ミシガン・ウルヴァリンズの試練 |
4 | ダラス・カウボーイズの葛藤 |
5 | ニュージーランド オールブラックスの変革 |
6 | マンチェスター・シティの進化 |
7 | カロライナ・パンサーズの野望 |
8 | サッカー ブラジル代表の復活 |
9 | フィラデルフィア・イーグルスの逆襲 |
NEW | トッテナム・ホットスパーの再興 |