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2020年9月7日 分析と解説

インスタ新機能「Reels」利用がNBAで活発化、スポーツビジネスでインスタを無視できない理由

スポーツビジネスで必須のソーシャルメディア

スポーツビジネスにおいても必須となったソーシャルメディア。フェイスブックを通じたコミュニティ形成、ツイッターによるリアルタイムの情報発信などすでに多くのプレイヤーが行っている施策だ。

日本では、上記に挙げたフェイスブックとツイッターの利用が圧倒的に多い印象だが、海外のスポーツビジネス界隈では、ここ最近フェイスブック傘下のインスタグラムの利用が増え、ファンのエンゲージメントを高めている。

インスタグラムといえば、利用者のほとんどが若い女性で、ファッション系のコンテンツが多い印象がある。実際そうではあるが、インスタの新機能Reelsの登場によって、スポーツコンテンツとの相性が高まり、NBAなどでの活用が進んでいるのだ。

インスタの全体像を俯瞰しつつ、Reelsとはどのような機能なのか、そしてどう活用されているのか、その最前線を追ってみたい。

世界10億人のユーザーを抱えるインスタ

日本で2600万人の月間アクティブユーザーを抱えるインスタ。世界全体のユーザー数は10億人。ユーザー数1位のフェイスブック(27億人)、2位Youtube(20億人)、Whatsapp(20億人)、3位フェイスブック・メッセンジャー(13億人)、4位WeChat(12億人)に次ぐ5番目の規模を誇っている。

国別で見ると、インスタユーザー数が最も多いのが米国。Hootsuiteのまとめによると、約1億1000万人のユーザーがいるという。次いで、ブラジル(7000万人)、インド(6900万人)、インドネシア(5900万人)、ロシア(4000万人)が続く。

利用者の増加率が顕著なのはカナダ。eMerketerによると、同国における利用者増加率は、2018年に20%、2019年に7.3%を記録。2020年中には6.1%増となり、1260万人に達する見込みだ。

国別の普及率で見ると最大はブルネイ。実に全人口の60%がインスタユーザーであるという。このほか、アイスランド(57%)、トルコ(56%)、スウェーデン(55%)、クウェート(55%)などでの普及率が高い。

このインスタ、最近の中国アプリTikTok利用禁止騒動で、一層注目を浴びる存在になっている。動画シェアアプリとして若年層に人気があるといわれるTikTokだが、安全保障上の懸念があるとして、インドではすでに利用禁止され、米国でも禁止措置が取られる公算が高まっている。

インドではTikTokが禁止されたタイミングで、インスタが動画シェア新機能「Reels」をローンチ。短期間で多くのユーザーを集めたといわれている。

NBAやサッカーリヴァプールによる「Reels」活用、通常よりエンゲージメント高め

インスタReelsとは、音楽に合わせて自分がダンスしている姿やクリエイティブな映像を撮影し、インスタ上でシェアできる機能。

2019年11月、ブラジルで「Cenas」という名称で試験的運用が開始され、2020年6月には「Reels」としてフランスとドイツで、7月12日にインドでそれぞれローンチされた。また8月5日には、米国、英国、日本、オーストラリア、スペイン、メキシコ、アルゼンチンなど世界50カ国でサービスが開始された。

8月5日に公開されたインスタグラムReelsの紹介ページ
8月5日に公開されたインスタReelsの紹介ページ
https://about.instagram.com/blog/announcements/introducing-instagram-reels-announcement

インドメディアTimes Of Indiaが伝えたApptopiaのデータによると、Reelsローンチ1カ月前、インスタのダウンロード数は月間700万回だったが、Reelsローンチ後の1カ月は780万回に増加した。

米国では、早速NBAのチームがReelsによるファンエンゲージメント施策を開始。すでにその効果が出始めている。

データアナリティクス企業Convivaの調査によると、NBAチームのReelsコンテンツは、通常のインスタコンテンツに比べ、ファンのエンゲージメント率が平均で22%上昇したことが判明。

現時点で最も高いReels効果を得ているのは、ロサンゼルス・レイカーズで、エンゲージメントは38万5000回、Reels動画の1つが拡散され400万回再生されたという。レイカーズに次いでReels効果が高いのはヒューストン・ロケッツ。3つの動画で再生回数は計630万回を超えたとのこと。

このほかNBAチームのReelエンゲージメントトップ5には、ボストン・セルティックス、シカゴ・ブルズ、マイアミ・ヒートが続く。NBAチームの多くは、Reelsで試合のハイライトシーンをシェアしている模様。

リバプールがReelsで公開した「Nike」の発音に関する動画
リヴァプールが公開した「Nike」の発音に関する動画
https://www.instagram.com/reel/CDg7oM2Fw9i/?utm_source=ig_embed

NBAのほか、イングランドサッカーのリヴァプールもReelsを積極的に活用している。英国でReelsが解禁された翌日8月6日に「Nike」の発音に関する動画を公開。9月1日時点で53万いいね、4000件近いコメントを得ている。

ニューヨーク拠点の調査企業Jeffreiesがこのほど公開した調査によると、Reelsの動画は、IGTVなどインスタの他の動画コンテンツに比べ、5〜10倍視聴される傾向があることが判明。一部ではすでに視聴回数6000万回を超えたReels動画もあるという。

2020年2月、ブルームバーグはフェイスブック社がインスタグラム事業の2019年の広告収入が200億ドルに上ったと報道。Jeffreiesのアナリストらは、2022年にはReelsだけで、25億ドルの広告収入を生み出すだろうと予想している。

このところTikTok米事業責任者が辞任、またTikTokインフルエンサーが他のプラットフォームに流出する事態が続いている。安定しているインスタグラムReelsへの関心が高まっていくことは想像に難くない。Reelsの動向から目が離せない。