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2020年8月25日 分析と解説

アディダスやFIFAが本腰、スポーツビジネスも無視できない「SDGs」の最新動向

このところ日本でも新聞や雑誌に登場することが増えている「SDGs」という言葉。「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字、世界中の政府や企業に持続可能な世界を実現するための行動を求める国連主導のイニシアチブだ。

このSGDs、スポーツの世界でも無視できないトピックになっている。アディダスなどのスポーツ企業、FIFAやIOCなどの国際スポーツ組織はすでにSDGsに関する取り組みを開始。他のプレイヤーにとってもビジネスをする際のニューノーマルになりつつある。

世界のスポーツ産業では、どのようなSDGs取り組みが行われているのか、その最新動向をお伝えしたい。

スポーツ産業とSDGs

SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までに達成すべき国際目標。貧困問題や環境問題など世界が抱える諸問題の解決に向けた17の目標と169の詳細ターゲットから構成されている。

法的拘束力はないものの、世界各国の政府や企業による自発的な行動を促しており、人々の危機意識/問題意識の高まりも相まって認知は広がりつつある。日本では、政府官邸にSDGs推進本部が設置され、国内でのSDGs関連取り組みを推進中だ。

17の目標のうち、スポーツ産業との関連が強いと思われるのは、目標3「健康的な生活の実現」、目標5「ジェンダー平等の達成」、目標12「持続可能な生活消費形態の確保」、目標13「気候変動影響の軽減」、目標14「海洋・海洋資源の保全」、目標15「生態系の保護」、目標16「包括的な社会の促進」など。この中でも、最近は環境負荷を減らす取り組みが顕著になっている。

2030年までにプラスチックごみゼロ目指すアディダス

スポーツ産業における環境取り組みをけん引する企業の1つがアディダスだ。

同社は、国連における気候変動議論が活発化した2015年頃から、持続可能戦略を本格化。同年4月には、海洋保全団体Parleyと提携し、海洋に流出したプラスチックごみから靴やウェアを製造する取り組みを開始した。

アディダス「Loop Gen2」ウェブサイト
アディダス「Loop Gen2」ウェブサイト
https://www.adidas.com.sg/futurecraft

アディダスは2015年、海洋プラスチックを活用した靴7000足を生産。この取り組みは拡大し、2019年には1100万足を生産するに至ったという。現在、100%リサイクル可能なランニングシューズ「Loop Gen2」の2021年販売開始に向けたプロジェクトを実施中だ。

アディダスは2030年までにプラスチックごみゼロを目指すという大胆な目標を掲げており、上記の個別プロジェクトは、その目標を達成するための要素となる。

同社ブランド戦略担当者ジェームズ・カーネス氏が英語メディアFastCompanyに語ったところでは、3段階でこの目標を達成することを計画しているという。

アディダスの環境戦略の図解
アディダスの環境戦略(アディダスウェブサイトより)
https://www.adidas-group.com/en/sustainability/managing-sustainability/general-approach/

第1段階では、プロダクト生産においてリサイクルされたプラスチックの利用を大幅に増やす。2020年末までに、生産に利用するポリエステルの半分をリサイクルされたものにシフトし、2024年にはその比率を100%にする計画だ。

また第1段階では、リサイクルされたプラスチックの利用を示すラベルを導入。ペットボトルからリサイクルされたプラスチックが利用されている場合「PrimeGreen」、海洋プラスチックごみが利用されている場合「PrimeBlue」のラベルが付与される。ポリエステル以外の材料についてもリサイクル利用を目指すという。

第2段階では、プロダクトデザインを刷新し、リサイクルが容易になる仕組みを構築することを計画している。期限は2030年。

そして第3段階は、生分解する商品を開発すること。これによりリサイクルの負荷を減らすとともに、環境へのダメージも減らすことが可能になる。しかし、現在の技術では難しいこともあり、目標達成の明確な期限は設けていないという。

このほか、アディダスは2050年までに事業にかかる電力の利用を代替可能エネルギーに完全シフトし「climate neutrality」を達成することも明文化。本拠地ドイツではすでに、電力のほとんどを代替可能エネルギー源から得ているとのこと。

FIFAやIOCなど、大型スポーツイベント組織もSDGs取り組みに本腰

アディダスのような個別企業による取り組みだけでなく、ワールドカップやオリンピックなど大規模スポーツイベントを管轄する国際組織においてもSDGs関連の取り組みが増えている。

何百万人という人が移動する大規模イベントでは、交通・宿泊・食事などで多くの温室効果ガスが発生する。これを削減しようという取り組みが実施されているのだ。

2018年ロシア・ワールドカップでは、イベント観戦のため500万人以上が移動したといわれている。このうち290万人が国外からの観戦者だ。FIFAの環境レポート「Greenhouse gas accounting report(2018年版)」によると、ロシア・ワールドカップでは、観戦者の移動や宿泊などで約160万トンの二酸化炭素が発生した。

こうした状況を鑑み、直近で計画されている大型スポーツイベントでは、温室効果ガス削減のためのプログラムが実施される見込みだ。2021年に開催延期となったサッカー大会「ユーロ2020」では、各地のスタジアムを訪れる観戦者に、公共交通のチケットが配布されるといわれている。これによりタクシー利用などを減らし、二酸化炭素の排出を減らす計画のようだ。

2022年開催予定のカタール・ワールドカップでも持続可能性に焦点が当てられている。カタールのスタジアムでは、従来より40%効率的な冷却システムを導入、このほか水を節約する仕組みや電力利用を抑えるLEDの導入など、ワールドカップ初の「Carbon neutral」を目指す施策が実施されている。

アディダスやFIFAの取り組みを筆頭に、スポーツ産業におけるSDGs取り組みは今後一層活発化していくことになるだろう。