オンラインのフィットネス業界誌

Twitter Facebook
2020年8月3日 分析と解説

運動不足と体重増加は「食の健康シフト」で対応?パンデミックで変わる世界の食トレンド

パンデミックと健康意識、食事に対する意識変化

心身のフィットネス/ウェルビーイングを実現するには、運動だけでなく様々な要素が必要になるが、食事の重要性は特に高いといえる。

このところ世界各地のミレニアル/Z世代において、アルコール摂取量が減ったり、ヨガをする人が増加するなど、健康意識が高まっていることを示すトレンドがいくつも確認されている。

パンデミックの影響は、このトレンドを一層強いものにしているようだ。思うように外出して運動できない状況下、人々は食事のあり方を見直し、食事の面で健康の増進を図ろうとしているのだ。このことは世界各地の様々なデータから読み取ることができる。

米国と英国などで展開する広告代理店Hunterが2020年4月に米国在住者を対象に行った調査では、パンデミックをきっかけに自炊するようになったとの回答が54%に上った。米国ではファストフードなど外食産業が発展しており、普段から自炊する人の割合は日本に比べ低いと推測されるが、レストランの閉鎖や健康意識の高まりから自炊率が増加したと思われる。

実際、自炊するようになった人にその理由を尋ねたところ、自炊することで健康的な食事ができるためという回答割合が52%と、いくつかある理由のなかで2番目の割合となったのだ。トップは、節約できるためというもので、その割合は58%だった。

プラントベース肉、スウェーデン発のブランドは売り上げ400%増

パンデミック下の食トレンドの1つとして、プラントベース肉人気の上昇も挙げられる。

英国の食品業界メディアFood Manufactureの2020年6月1日の記事によると、2020年第1四半期スウェーデン発のプラントベース肉「Oumph!」の英国における売上高が前年同期比で400%も上昇したことが判明した。

プラントベース肉「Oumph!」ウェブサイト
https://oumph.uk/

2015年にスウェーデンでローンチされた同ブランド。大豆、ハーブ、スパイスで生成された植物性の人工肉で、グルテンと乳製品が入っていないベジタリアン向けの食品として欧州で人気となっている。現在英国では、Tesco、Asda、Whole Foodsなどの小売り大手でも販売されており、入手しやすくなっている環境も売上増に貢献したと思われる。

プラントベース肉はグローバル市場でも拡大する見込みだ。Food Manufactureが伝えたResearch & Marketsの予測によると、同市場の規模は2020年に36億ドル(約3800億円)に達し、さらに2021年には42億ドル(約4400億円)に拡大する見通しだ。パンデミックをきっかけにした健康意識の高まりが市場拡大の要因の1つになっているという。

カリフラワーピザにカリフラワーステーキ、「カリフラワーイノベーション」への期待

運動不足により体重が増加傾向にある人々が増えていることが想定される中、炭水化物摂取量を減らそうとする動きも広がっているようだ。

米Consumer Reports2020年6月4日の記事では、米国では小麦粉ではなくカリフラワーを生地に使った「カリフラワーピザ」がスーパーマーケットで人気になっているという。

数年前から英語圏では「カリフラワーイノベーション」とも呼べる動きが強まっていたが、パンデミックの影響でその動きが加速しているようだ。

Food Business News2020年7月21日の記事では、カリフラワーイノベーションが今後も加速するとの見通しを展開。健康食の見本市Natural Product Expo Westにおいて、2017年カリフラワーを活用した製品数は28種類だった。これが2019年には15カテゴリ104種類に増加した。

米農業大手Van Drunen Farmsのマーケティング責任者ゲイリー・オーグスティン氏がFood Business Newsに語ったところでは、カリフラワーは2020年の農産物トレンドの1つであり、様々な料理に応用されている。カリフラワーピザのほか、カリフラワーパスタ、カリフラワータコスなどが人気で、カリフラワーステーキというメニューもあるとのこと。

低炭水化物ダイエットとともにパンデミックで再び注目されているのが、十分な量のタンパク質と脂肪を摂取し、炭水化物を可能な限り避ける「ケトダイエット」だ。グーグルトレンドのデータ(英国)がそのことを如実に示している。

グーグルでの「ケトダイエット」検索トレンドデータ

2018年末頃から注目され始めたケトダイエットだが、2019年夏からグーグルでの検索人気度は下落傾向に。その後2019年末頃に一時的な上昇を見せたが、その後すぐに下がった。しかし、世界各地でロックダウンが始まった2020年3月末から再び上昇傾向に入った。関連キーワードには「keto for beginners(初心者向けケトダイエット)」がランクインしており、パンデミックをきっかけに、ケトダイエットに興味を寄せる人が増えていることを示している。

米グローバル・ウェルネス・インスティテュート(GWI)の推計によると、2018年の世界ウェルネス市場の規模は4兆5000億ドル(約480兆円)で、このうち健康食に関する市場は7020億ドル(約74兆円)だった。

現在、世界各地で感染の第2波が懸念されており、また自由に外出するのが難しくなるかもしれない。食で健康増進というトレンドは、一層強まっていくのではないだろうか。