オンラインのフィットネス業界誌

Twitter Facebook
2020年9月6日 分析と解説

世界1番人気のスポーツはサッカー。では、2番目は?日本人が知らない「意外なスポーツ」拡大見込まれる10億人市場の可能性

日本で人気のスポーツといえば野球とサッカー。中央調査社が2015年に実施した意識調査によると、日本で一番人気のスポーツは「野球」(41.7%)であることが判明。2番目は「サッカー」(29%)、3番目は「プロテニス」(22.4%)となった。

調査サンプル時期やサンプルの違いで多少の変動はあると考えられるが、野球とサッカーが2大人気スポーツであることは間違いないといえるだろう。

一方、世界全体のスポーツ人気はどうなっているのか。日本と同じように野球とサッカーが2大人気のスポーツなのか。スポーツビジネスに携わる上で、世界全体のスポーツトレンドは知っておいても損はないといえるだろう。

世間には様々な「世界人気スポーツランキング」関連の記事が氾濫しているが、そのほとんどはデータ出典が明確になっておらず、信頼できる情報とは言い難い。しかし、個別に調べていくことで、世界ではどのようなスポーツが人気なのか、ぼんやりとではあるが全体像が見えてくる。

世界人気スポーツランキング

グーグル検索で「most popular sports in the world」と入力したときトップ表示される記事の1つが、Reunion Technologyという企業が運営するメディア「WorldAtlas」の記事だ。

その記事によると、ファン数で見た世界人気スポーツランキングの1位は、サッカーであるという。ファン数は約40億人。

2位には野球がランクインすると思う人もいるかもしれないが、同ランキングで野球は8位にとどまる結果となっている。ファン数は5億人だ。では、どのスポーツが2位なのか。2位にランクインしたのは、日本ではほとんど知られていないスポーツ「クリケット」だ。ファンは世界中に25億人もいるという。

オーストラリアのクリケット試合の様子
クリケット試合の様子(オーストラリア)
Photo by Aksh yadav on Unsplash

3位も日本ではメジャーではないスポーツ「フィールドホッケー」がランクイン。ファン数は20億人となっている。

以下、4位テニス(ファン数10億人)、5位バレーボール(9億人)、6位卓球(8億7500万人)、7位バスケットボール(8億2500万人)、8位野球(5億人)、9位ラグビー(4億7500万人)、10位ゴルフ(4億5000万人)という順位だ。

日本人にはピンと来ないランキングといえるかもしれない。実際、同記事ではデータ出典が明記されておらず、ランキングの信憑性はない。グーグル検索でトップ表示される他の記事についても状況は同じ。信頼に足りる「世界人気スポーツランキング」を見つけることができない。調査規模が膨大になることから、いまだ実施されていないものと思われる。

しかし、WorldAtlasの記事を出発点とし、他のデータを照らし合わせることで、ある程度全体図は見えてくる。

まず、サッカーについて。米CNNが2014年6月5日に公開した記事では、当時のブラジル・ワールドカップに関する報道を行っている。その中で、ワールドカップ期間中に、どれほどの人が大会を視聴するのかというFIFAの予測に言及。その数は約32億人と伝えている。

またFIFAは同組織ウェブサイトで、2018年ロシア・ワールドカップでの視聴者数を公開。テレビとデジタルプラットフォームを合計した視聴者数は、35億7200万人に上ったという。

米国で一番人気のスポーツ、アメフトの試合中の写真
米国で一番人気のスポーツ、アメフト
Photo by Keith Johnston on Unsplash

一方、野球はどうか。野球は、米国、日本、台湾、中南米で人気だが、他の地域ではあまり知られていないスポーツといえる。本場米国においても、人気は低迷中。米世論調査会社ギャラップのデータによると、2017年米国で最も人気のあるスポーツはフットボール(アメフト)であることが判明。調査対象者の37%が好きなスポーツに選んだ。次いで人気が高かったのは、バスケットボール(11%)。野球は3位で9%だった。米国では1940〜60年代にかけて野球は人気1番のスポーツだったが、1970年代アメフト人気が野球を上回り、それ以来米国ではアメフトが1番人気のスポーツに君臨し続けている。

AP通信が2019年10月に伝えた消費者調査大手ニールセンのデータによると、米メジャーリーグ・ワールドシリーズでの最初の5試合、各試合の平均視聴者数は1160万人だった。過去のワールドシリーズの中で、最も低い数字と伝えている。

世界10億人の「クリケット」ファン、公式調査が示す市場規模

一方、クリケットはどうか。グーグルで「cricket fans in the world」で検索すると「25億人」という数字があがってくる。しかし、データ出典が不明であり、この数にも疑問が残る。

クリケットに関して、最も信頼できる数字はおそらく国際クリケット評議会(ICC)の委託で実施された2018年の調査だろう。

ICCウェブサイトで公開されている調査結果によると、クリケットファンの数は世界中で10億人に上るという。ファンの平均年齢は34歳で、男女比率は61%が男性で39%が女性。視聴だけでなく、学校での部活など含め実際にクリケットをプレーする人は世界に3億人もいる。

国際クリケット評議会(ICC)のウェブサイト
国際クリケット評議会(ICC)ウェブサイト
https://www.icc-cricket.com/

16世紀の英国で興ったとされるクリケット。英国の影響が強いオーストラリア、ニュージーランド、インドなどで人気を博している。上記ICCの調査では、世界中にいるクリケットファン10億人のうち90%以上はインドのファンであるというこが判明したという。

世界最大のクリケット市場といえるインド。そのプロリーグ「Indian Premier League(IPL)」の評価額は年々高まっている。

米CNBCは2018年7月、メディア企業GroupMの話として、IPLは2017年にスポンサーシップだけで10億ドル(約1000億円)の収益をあげたと伝えている。同年、米メジャーリーグのスポンサーシップ収益8億9200万ドルを上回ったという。

ファイナンシャルアドバイザリー企業Duff&Phelpsによると、2017年IPLの評価額は前年比26%増の53億ドル(約5300億円)に上昇したとのこと。

少子高齢化が進む他の国とは異なり、インドは人口増加トレンドが続いている。若年層が多く、クリケット市場はこの先も拡大することが見込まれている。世界のスポーツビジネスを俯瞰する上で、クリケットは無視できない市場といえるだろう。