スポーツビジネスでアクティブシニアを狙うためのSNS選び
スポーツビジネスにおいても必須となったソーシャルメディア。フェイスブック、LINE、インスタグラム、YouTubeなどターゲット/用途別に使い分けるマルチチャンネル戦略が求められる。日本では「SNS」と一括にされているが、ソーシャルメディアごとに利用者の年齢層/性別に特徴があるためだ。
たとえば、国内の月間アクティブユーザー数、約2600万人(Gaiax調査より)とされるフェイスブックでは、40代の利用者が多いという特徴がある。男女比率はほぼ同じ。一方、月間アクティブユーザー3300万人のインスタグラムでは、20代女性が最も大きな層となる。
最近海外のスポーツ市場で「アクティブシニア」という言葉がよく聞かれるようになっている。時間とお金に余裕のある層の健康意識が高まり、スポーツ市場にとって重要な顧客となっているためだ。
一般的に若年層の利用が多いといわれるソーシャルメディアだが、フェイスブックのように40代が最も多いという事例もあり、そうとは言い切れない状況になっている。国内で40〜60代の層をターゲットにしたいと考えたとき、最適なソーシャルメディアの1つとして挙げられるのがYouTubeだ。
YouTubeは今やLINEに次ぐ国内2番目のソーシャルメディアとなり、かつ40代以上の利用者が多いという特徴を持っている。Gaiaxによると、LINEの国内月間アクティブユーザー数は8400万人。一方YouTubeは6000万人と推計されている。
このYouTube、年齢層別で最大は40代で、その数は1400万人に迫るものとなっている。40代に次いで多い年齢層は50代で、約1200万人。そして30代と60代が1000万人ほどでほぼ同じ水準となっている。
芸能人のYouTube進出も進んでおり、テレビからYouTubeに切り替える視聴者が増えることが想定される。若い世代はもともとテレビを見ていないといわれており、テレビからのYouTubeシフトは、おそらく40代以上で進むものと思われる。アクティブシニアをターゲットにする上で、YouTubeの重要性はこの先一層高まってくることが考えられる。
登録者6500万人、世界最大のYouTubeスポーツチャンネルとは?
スポーツビジネスにおいてYouTubeを活用しようとしたとき、どのようなコンテンツをつくるべきか悩むところだろう。そんなときはYouTubeの海外事例から学ぶのが得策。海外ではどのようなチャンネル/コンテンツが人気なのか、なぜ人気なのかを調査/考察することが出発点となる。以下では、YouTubeスポーツ分野における人気チャンネルに関して、海外の最新動向を紹介したい。
世界で最も多い登録者を持つYouTubeスポーツチャンネルはどこか。野球やサッカーのリーグ/チームのチャンネルを想像するかもしれないが、少なくとも、2020年8月26日時点のデータは、野球でもサッカーでもないということを示している。
現時点で世界最大のフォロワーを持つYouTubeスポーツチャンネル、それは米国のプロレス団体World Wrestling Entertainmentが運営するYouTubeチャンネル「WWE」だ。
2019年10月に登録者5,000万人超え、2020年5月に6,000万人超えを達成した同チャンネル。2020年8月26日時点では約6,500万人と、この3カ月間だけでも500万人増加している。
NBAやNFLなど他のプロスポーツチャンネルと比べると、WWEチャンネル登録者数が如何に突出しているのかが分かる。ソーシャルメディア分析プラットフォームSocial BladeのYouTubeスポーツチャンネル登録者ランキングで、NBAチャンネルの登録者数は1460万人で、4位に位置している。NFLチャンネルは661万人で、20位だ。
リーグや団体ではなく、チームで見た場合、登録者が最も多いのは、スペインのサッカーチーム「FCバルセロナ」。登録者989万人で、スポーツチャンネルランキング9位に位置している。
YouTubeWWEチャンネル人気の秘密
WWEチャンネルの人気の秘密はどこにあるのか。
YouTubeは基本的に国境の無いプラットフォーム。英語によるコンテンツ制作によってグローバルオーディエンスにリーチすることが可能だ。WWEは米国発のコンテンツ、基本言語はもちろん英語だ。
かつて北米や欧州で人気といわれたWWEだが、いま最も視聴者が多いのはインドだ。インドメディアRepublicWorldによると、WWEの幹部ジェームズ・ローゼンストック氏はこのほど、WWEチャンネルが最も視聴されている国はインドであることを明らかにした。WWEフェイスブックページでも、インドのフォロワーが最も多いという。インドで、WWEはソニーピクチャーズと提携、ソニーピクチャーズのネットワークが同国でのファンベースの拡大に寄与しているとのこと。
またWWEはプロレスではあるものの、「スポーツエンターテイメント」という言葉を用い、ショーとしてコンテンツを制作・配信している。このことがYouTubeでフォロワーを広く獲得する結果を生み出しているようだ。
さらにWWEは家族が揃って視聴できるファミリー路線を採用しているといわれている。今回のパンデミックで「Stay Home」におけるエンタメの重要性が問われる中、WWEは家族が視聴できるコンテンツの重要性がこれまでにないほど高まっているとの声明を出しており、そうした意向がコンテンツに反映され、一層多くのファンを引きつけているとも考えられる。
スポーツチャンネルではあるものの、「エンタメ」や「ファミリー」を意識したコンテンツ制作のあり方は、YouTube活用の大きなヒントとなるはずだ。