フィットネスクラブ大手のルネサンスは27日、組織再編と人事異動を行うと発表した。その再編内容から、同社のコロナ禍で直面した課題と今後のビジネスモデルに対する改革の狙いが見える。本稿ではその狙いについて考察したい。
オンラインレッスンと公式ウェブショップが事業部として独立
今回の組織再編で主要なポイントと思われる部分は2点ある。1点目は、ルネサンス社の主要事業全般の推進を担っていた「営業本部」をスポーツクラブ事業本部とヘルスケア事業本部に分割する点。2点目は「事業開発部」を3事業部に分割した点だ。
営業本部を分割して新設された「本部」機能の管掌範囲の説明を読むと、スポーツクラブ事業本部は「スポーツクラブ事業の早期回復を目指し、営業施設及び
スポーツクラブ運営の企画及び支援機能を管掌します。」とあり、ヘルスケア事業本部は「スポーツクラブ業績向上の支援に加え、スポーツクラブへの来館を前提としない収益の確立を目指します。」としている。
この新たに新設された本部、スポーツクラブ事業本部は名称通り分かりやすく本業の「館ビジネス」を統括する部署と読み取れる。一方でヘルスケア事業本部は「非来館ビジネス」以外の模索をする部署だと読み取ることができ、ここに同社の狙いがあるように思う。
また事業部の分割内容を見ても「非来館ビジネス」への意欲は鮮明だ。コロナ禍に同社が注力してきたオンラインレッスン「ルネサンス オンライン Livestream」は「オンライン活用推進部」として独立、公式オンラインショップもEC事業部として事業部独立している。
今回の組織再編は、コロナ禍において変化した生活様式(店舗ビジネスの弱点)と、オンラインレッスンのように急成長した新しいニーズを考えれば「来館に頼らないビジネスモデル」の構築にこれまで以上に本気で取り組む必要があるという同社の意欲が見えてくるだろう。
事業部機能の被りや管掌範囲を明確化、担当役員の兼任が減少
再編対象となった旧営業本部は、緊急事態宣言の延長が決まった2020年5月に行われた組織再編によって傘下に5つの機能を保有する形となった。
この時点から同社は「来館に頼らないビジネスモデルの早急な確立」を標榜していたが、今回と明確に異なるのは、事業間の連携強化を行う中で新たなビジネスモデルを確立するといったアプローチであった点だ。そのため新旧ビジネスモデルを全て営業本部に集約した格好となっていた。
今回の再編では新たなビジネスモデル確立へのアプローチを変更したと推測され、それが特に注力すると考えられる「オンラインレッスン」と「EC/通販サイト」の事業部独立につながっていると見られる。管掌範囲と責任を明確化、専業部署にし、担当役員の兼任関係や指揮系統を整理することで思い切った事業推進が期待できる。
再編後の組織図を見ても狙いは明確で、非来館型のビジネスモデル確立を命題とするヘルスケア事業本部に、今回再編の本丸と見られるオンライン活用推進部とEC事業部がぶらさがる。
ヘルスケア事業本部は、同社がコロナ禍で直面した課題の根本解決を使命とする本部とも見ることができ、本部長には望月常務、オンラインレッスンなどを統括するオンライン活用推進部の部長には元業態開発/施設開発担当だった武藤執行役員、公式オンラインショップなどを統括するEC事業部の部長には元競技強化/特命担当だった澁谷執行役員が就任する。
特に澁谷執行役員が統括するEC事業部に関しては期待が寄せられるのではないだろうか。ルネサンス社は2020年3月期の商品売上高比率は2.2%(9.8億円)に留まっており成長の余地は大きい。直近は健康食宅配サービス「ナッシュ」の販売に乗り出すなど積極的な取り組みも見られる。( 参考記事:「スタッフ総出のダイエットコンテストも実施した」ナッシュ販売パートナー「ルネサンス」インタビュー )
業界内ではカーブスのように売上高の50%以上を会員向け物販で構成している事例もありコロナ禍においてもカーブスの物販売上は堅調に推移、同社の業績を下支えしている。
フィットネス業界全体がコロナ禍でビジネスモデルの見直しを迫られる中、業界大手の同社は自己変革できるのか。同社に限らずフィットネス業界全体の試金石となるだろう。
株式会社ルネサンス
https://www.s-renaissance.co.jp/