ヨガの本場インド発、AI活用したスマート・ヨガマット「YogiFi」が登場
スマートフォン、ウェアラブルデバイスによって、距離、スピード、心拍数、消費カロリーなどを測定/記録できるようになり、スマートな運動が可能になった。
このテクノロジーを活用する流れはヨガの世界でも起こり始めている。AIやセンサーを駆使したハイテクヨガが登場しているのだ。
ヨガの本場インドで最近注目されているのが、地元スタートアップWellnesys Technologiesが開発しているAIヨガシステム「YogiFi」だ。
米半導体大手クアルコムがインドで毎年実施しているスタートアップコンペ「Qualcomm Design in India Challenge(QDIC)」2020年版で選出されたり、世界最大の家電見本市CES2020でイノベーションアワードを受賞するなど、インドのヘルステックやメディア界隈で関心が高まる有望株となっている。
どのような点が特徴的なのか。
YogiFiが評価される理由の1つは、「holistic(全体的)」なアプローチを採用している点だろう。アップルウォッチなどのウェアラブルウォッチに加え、スマホ、ヨガマットが1つのシステムとして機能するのだ。
ウェアラブルウォッチは、振動機能によってヨガの呼吸パターンを指示。また、ヨガの特定ポーズにおける心拍数をトラックすることもできる。
ウェアラブルウォッチは、スマホ、ヨガマットと連携。スマホはモーションキャプチャ機能で、ヨガポーズの精度を測ることが可能だ。また専用アプリには、自分のレベルに合わせてパーソナライズし、世界中のヨガインストラクターのクラスにアクセスできる機能が備わっている。
そして、YogiFiを最も特徴づける要素が「AIヨガマット」だ。このAIヨガマットには圧力センサーが組み込まれており、ヨガポーズの精度を身体圧力から測定し、AIを活用したトラッキングシステムにより、正しいヨガポーズに導くための音声・映像ガイダンスを流すという仕組みになっている。近々、Spotifyとの連携やライブストリーミング機能が追加されるようだ。
AIヨガマットは世界中に配送可能。英語メディアInternational Business Times6月4日の記事によると、ロックダウンで世界各地でヨガスタジオが閉鎖されたことを受け、自宅ヨガ需要が急騰。その需要を反映するかのように、YogiFiアプリ・ウェブサイトへのアクセスは300%増加したという。
シリコンバレー発のスマート・ヨガウェア「PIVOT Yoga」
2019年12月に北米市場でローンチされたシリコンバレー発のPIVOT Yogaもハイテクヨガの1つだが、YogiFiとは異なったアプローチをとっている。
YogiFiはスマホのモーショントラックとAIヨガマットの圧力から利用者のヨガポーズを分析。一方、PIVOT Yogaはポーズ分析にスマートスーツを活用しているのだ。
2019年にEventbriteが米国で実施した調査によると、ヨガ実践者の67%が自宅でヨガを行っていると回答。パンデミックが始まる前からすでに、自宅ヨガが主流であったことを示している。自宅ヨガ実践者のほとんどが視聴しているのがYouTubeのヨガ動画だ。米国発の「Yoga With Adriene」は800万人以上のフォロワーを持つ人気ヨガチャンネルの1つ。累計視聴回数は6億8000万回。YouTubeのヨガ動画人気を示す数字といえるだろう。
自宅ヨガを余儀なくされる状況、YouTubeなどの動画がヨガ実践者のモチベーションアップに役立っているのは間違いないが、この方法では1つ大きな問題が発生する。ヨガポーズが正しいのかどうか、自分のヨガが向上しているのかどうかが分からないということだ。
こうした問題へのソリューションとして登場したPIVOT Yoga。スマートヨガスーツを着用し、専用アプリと接続することで、自分のヨガポーズをリアルタイム・アバターとしてディスプレイに映し出し、ヨガインストラクターのポーズとの比較で、精度を測ることができる。
トップとパンツ合わせて99ドル。クラス受講は月額19ドルのサブスクリプション制となっている。
PIVOT Yogaを開発するTuringSenseによると、PIVOT Yogaを開発するのにモーションキャプチャなど先端分野を専門とする博士号5人、修士号15人、計20人の研究者を要したとのこと。同社はヨガのほか、ズンバやエアロビクスなどもテクノロジーの応用領域として視野に入れているようだ。
インド発のARを活用したヨガアプリ「Prayoga」
YogiFiやPIVOT Yogaに加え、インド発でARテクノロジーを活用したヨガアプリ「Prayoga」という新アプリも存在する。
Prayogaでは、高度なトレーニングを受けたヨガインストラクターの3DアバターをiPhoneのAR機能を使い、自宅などユーザーがいる空間にARとして投影することができる。これにより、インストラクターとともに、ヨガを行っている感覚を得ることが可能となる。また、ARトラッキング機能を活用し、ユーザーのポーズをリアルタイムで分析することもできるという。
現状を見る限りでは「スマートヨガ」分野は萌芽期にある段階といえる。今後もAI、モーショントラック、ハプティックなど先端テクノロジーを駆使したハイテクヨガの登場が見込まれる。
Statistaの予測では、2016年に3600万人だった米国のヨガ実践者数は、2020年中には5500万人に増加する見込み。市場の拡大とともに、ヨガとテクノロジーの融合がどのように進むのか、この先の展開を楽しみにしたい。