「女性だけの30分健康体操教室 カーブス」を運営する株式会社カーブスホールディングスの2020年8月期決算が発表された。8月決算の同社は3月〜8月の下半期のほぼ全てで新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け厳しい1年となった。
2020年8月期決算は、売上高250億82百万円(前期比▲10.5%)、営業利益11億67百万円(▲78.5%)、経常利益11億65百万円(▲77.8%)、当期純利益7億64百万円(▲79.4%)と減収減益になったが、黒字決算を維持した。
カーブス 2020年8月期の決算要約
四半期推移を見るとコロナの影響を受けた第3・4四半期で赤字となったが、第4四半期は売上が若干回復、赤字幅も縮小している。店舗数は2019年10月に2,000店舗を超え、第4四半期は純増は1店舗に留まったが純増で着地している。
ただ会員へのインパクトは大きく、コロナ禍で急遽導入した「休会制度」の利用者は第3四半期で20万人を超えた。第4四半期で約10万人弱まで減少したが、休会から通常会員への復帰は約半数程度に留まっていると見られる。期初の82万人からすると、会費を毎月支払う会員を約22万人を失ったこととなり、月会費単価が6,000円とすると、月次で約13億円、年次で約150億円程度の減収プレッシャーとなる。
この減収プレッシャーは同社の決算に直接影響があるわけではなく、9割以上を占めるFC店舗の売上(チェーン売上高)へのプレッシャーとなる。その末端売上が減収になることで、FC本部である同社はFC店舗から受取るロイヤリティが減少する、そこで(物販を除き)同社の業績に直接的な影響が発生する。
FCを中心に店舗展開している同社にとって、FC店舗の売上が下がり運営を維持できなくなることが最大のリスクであるため、会員の回復の目処が一定まで立たない限り、FC本部としてFC店舗への様々な支援負担が必要となる。
しかし通期決算発表と同日に開示された業績予想との差異についての資料を見ると、第3四半期決算発表時(2020年5月)に開示した修正業績予想よりも今回の通期着地が上方修正になったことがわかる。
この上方修正の主な要因は、特別休会会員の復帰が想定よりも増加したことと、物販も回復が堅調に推移したことが大きな要因で、FC店舗への経営支援金も予想より早い回復を受けて想定を下回ったことで増益となった。つまり新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きかった5月時点の想定よりも早く回復していることが分かる。
来期決算も黒字予想だが、会員の戻り見込み厳しく店舗は2,000店舗を下回る計画
カーブスホールディングスは来期の見通しも合わせて発表している。2021年8月期の予想業績は、売上高235億円(昨対比▲6.3%)、営業利益10億円(▲14.3%)、経常利益9.4億円(▲19.3%)、当期純利益6.1億円(▲20.2%)と黒字決算維持としている。
しかしながら、第2四半期(2021年2月)までは赤字推移としており、売上111億円予想のため、2020年8月期の第3・4四半期とほぼ同水準での推移と予測していることが分かる。そのため同社としてはまだ半年程度は今と同じ状態が続くと考えているようだ。
出店については、来期1年間で新規出店は20店舗を予定しているが、コロナショックの影響が大きいFC店の閉店・統合を100店舗ほど予定しており、来期末は2,000店舗を下回る見込み。
会員数についても1年間で66万人程度までしか戻らない見込みを立てている。決算短信のコメントによると、新規入会の復調は下半期になると見込んでおり、着地の66万人から考えると現時点での休会制度を活用している約10万人の会員の復帰は限定的と捉えていると見られる。
2020年2月末にいた会員83万人が2020年8月末に実質60万人に減少したため、休会会員の復帰だけでなく、そもそも退会した23万人をどの程度の期間で取り戻せるかに業績回復のポイントが存在している。
来期の業績予想にはオンライントレーニング事業「おうちでカーブス」などの新規事業収益は織り込まれておらず、新事業の収益貢献はまだ時間がかかる見込みだ。同社は2022年末までの約2年間で新しいビジネスモデルの確立を目指すとしており、こちらの動向も気になるところだ。
フィットネス業界全体が厳しい環境で、上場各社は赤字決算の可能性もゼロではない状況ではあるが、黒字決算を維持し既存のビジネスモデルを見直す姿勢を崩していない同社の今後に注目したい。
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